プロローグ
2019年最後の投稿です。お読み頂ければと思います。
時は2019年。
厳しく長い冬を迎えようとしているロシアの片田舎にその美しい兄弟は暮らしていた。
ミハイル・チェレンコフと弟のキリルだ。
彼らの父はかつて旧ソビエト連邦で軍人として活躍していた、ヴァレリー・チェレンコフ。
ヴァレリーはある秘密を握っていた。
その秘密はミハイルとキリルの二人にとって大変重要であり、悲しくも痛ましい事実だった。
あの事故が起こるまでは、全てが平穏そのものだった。
そう。
チェルノブイリ原子力発電所事故が起こるまでは。
1986年4月26日、今から33年前の出来事だった。
33年の月日が流れても尚、放射能は消えず、その影響で苦しむ者は現在も後を絶たない。
ヴァレリーもその一人だった。
そして彼の愛する二人の息子も例外ではなかった。
何故あのような事故がおきてしまったのか。
避ける事は出来なかったのか。
いや。避ける事は出来たのだ。
人類が知るよしもない事実を先に知る、“ある者”の忠告さえ無視しなければ…。
やがて迎える新しい時代を前に、二人の美しい兄弟に差し迫る驚愕の事実と運命。
二人はそれらに果たして向き合う事が出来るのか。
人類に向けての新たな物語が今始まる。