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ジブンガタリ。  作者: M'y
5/7

1-4

「バウ!」


 大型犬の背中は思ったよりも、乗り心地の良いものだった。


『よく見たら、こいつも角があるんだな。』


 小型犬はチワワ程の大きさで、頭を撫でて分かったが、角なんて無かった。

 しかし、土佐犬よりも大きいこいつは頭を撫でると、毛深い中に申し訳程度な角を発見した。


「バウバウ!」


「ん、着いたか。」


 目の前に流れるのは、底まで透き通った川。

 都会の濁った河川しか知らない俺にとって、なんとも興味深い。


「これって、飲めるのか?」


「バウ!」


 大型は川に頭を近付け、ペロペロと水を舐める。

 害は無いって事かな。


 両手をお椀状にして、ゴクリと飲む。


「悪くねぇな。」


 喉に引っかかる感じも無く、気付いたらもう一杯喉を通していた。

 昨日から果汁しか水分が無かったから、余計に美味く感じた。


「これなら、喉の渇きは大丈夫そうだな。」


 途中で見つけた柏の葉を大きく、硬くしたような葉。

 それの両端を蔦で結び、ラグビーボールの半円にして水を汲む。


「果実も採れてるし、帰るか。」


「バウ!」


 零さないように跨がり、大型を走らせる。

 赤い果実しか無いので、栄養は気になるが仕方ない。


 本当ならば、肉が欲しかった。

 しかし、俺が倒すとどうやら肉が残らない事が分かった。


『勿体ないよなぁ。』


 川への道中、一匹の小鬼に出会った。

 大型に周囲を嗅がせたが、はぐれ者らしい。


「俺がこちらからゆっくり近付き、鞭で仕留める。 お前は奥へと回り、注意を寄せてくれ。」


 小声の作戦タイムに、「バウ。」と静かに相槌を打つ大型。


 草むらの中を音も立てず駆ける大型に感心しながら、俺も抜き足差し足忍び足。


『こっちはおっけーだ。』


 挟み撃ちの陣形。

 大型に目で合図を送り、「ヴゥ、ガゥガゥ!」という威嚇が届く。


「キキッ!?」


 木の棒で地面に穴を掘っていた小鬼が跳び上がる。

 バッと声の元を見て、「キキッ!」と棒を持ち直す。


 背中から落ち着いてみると、両足が震えてるのが丸分かり。

 奴らにも心があるのだと、ふと横道に逸れるが、首を振って、俺はベルトを振り下ろした。


「やっぱり、光になって消えるか……。」


「バウバウ……。」


 結果はあっという間の勝利。

 しかし、こちらとしては肉が欲しかったので残念。


 ジェスチャーを交えながら聞いた限りだと、犬達の主食は小鬼で、この森で負ける事は無いらしい。

 生食は気持ち的に無理だったが、火を起こせばまだ我慢できるかなと思っていた。

 しかし、それ以前の問題だったようだ。


「朝からありがとな。」


「バウ!」


 森を疾走する大型犬。

 その柔らかで、温かい背中に乗りながら、風を感じる。


 とりあえず、水と朝食代わりの赤い果実をゲット。

 5匹の小型犬と女性が待つ家に帰るのだった。

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