プロローグ
普段通う高校でも、屋上から見る景色は何かが違うようだった。
今、現在進行形で、俺と同じ生徒が授業を受けていると考えると、優越感さえ湧いてきた。
「空は青ぇなぁ。」
両手を目一杯に広げ、雲一つ無い青空を仰ぐ。
曇った俺の心さえ、晴々とさせる良い天気だ。
「あー、ほんと場違いな程に良い天気だよ……。」
屋上には、転落防止の金網があり、そこだけは景観を壊していた。
それも無くなればいいのに、そんな風に歩いてゆく。
「さてと、」
お天気占いの如く、上靴代わりのサンダルを蹴飛ばす。
片方は晴れで、片方は雨。
曇りかな、全くおあつらえ向きの予報だな。
ガチャンガチャンと、金網の輪っかに足を掛け、上に登る。
途中で、体重に耐えきれず折れるかなと思ったが、案外頑丈だった。
「……ふぅ。」
金網と屋上の端との間に、着地。
股がヒュンとなる景色を眺める。
「おぅ、1年かなアレは。」
第2グラウンドでは、サッカーの試合が行われていた。
直向きにボールへ走る奴も居れば、俺みたく参加せずにコート端で立ってる奴も居る。
「おいおい、頑張んねぇーとこうなっちまうぞ?」
制服の胸元から、1通の封筒を取り出し、金網に挟む。
そして、両足を揃え、1つ深呼吸。
スーハー。
「じゃあな、いじめっ子ども。」
好きだったプールの授業。
飛び込みで、着水するのを意識して、前に身を投げ出した。