第4話「復讐と神託」
ここまでお付き合い下さり、
ありがとうございます。
予定していたエピソードと描きたい事がズレてきたので
1~3話を少し修正しました。
14話から転生後の話になりますが、
そこから歌・チート・お料理を主軸に書いていきたいと思います。
スレイは自身の墓に手を合わせると
旅立ちの準備を進めた。
(さてと…)
以前の自分なら復讐を終えてから
逃げるように旅立っていた。
今回ばかりはそういうわけにもいかない。
ただ、それ相応の報いは受けてもらう必要がある。
神から受け取った本を手に飛び上がり、
教会の屋根に降り立つ。
あの男が教会に来る時間までに目的の呪文を祭壇に捧げておかなくてはならない。
スレイと呼ばれた男は口元を歪ませ、
これから起こるであろう惨劇に祈りを捧げた。
イヴォークは神に導かれる道を歩む夢をみた。
顔こそみえなかったがあの方はアスレイ様だろう。
隣で眠る少女の裸体に目を止めることもなく、
ベルを鳴らす。
恭しく扉を開けた従者達がカーテンを開き、
朝食の場所を問う。
「今日はここだ」
メイド達が予め用意していた朝食を室内へ運び、
シェフは調理を始める。
「ガフ、こいつはくれてやる」
執事はその言葉に舌を舐めずり、
従者達達に命じる
少女は従者達によってベッドから下ろされ、
従者達へと下賜された。
いつもならもう少し楽しんでからくれてやるつもりだったが、
まあ、いいだろう。
忌々しいスレイの葬儀を終えてすぐ、
テン枢機卿から連絡があった。
内容から察するにスレイが隠し持っていた書類を
手に入れたのだろう。
これでテン枢機卿を中心とした派閥の結束はより高まる。
あとは良いタイミングで法皇を地獄へと旅立たせればいい。
イヴォークは紅茶をすすり、
これからの展望に思いを馳せた。
テン枢機卿は震えを抑え切れなかった。
いつものように
目の前にいる法皇が笑っている。
横に控えるユリ枢機卿は
何かを伝えようとしてくれているが真意が掴めない。
「まあ、君が不正を行っていたのはね知っていたよ、
スレイ君を嫌っていたこともね」
法皇の動き一つ一つに苛立ちを覚えるが、
それでどころではない。
「こういう書類がさ、祈りの最中に降ってきたんだよ。
まあ、信頼性云々は置いておくとしてもさ
確認はするよね?」
テン枢機卿は喉を鳴らし、対応策を恭しく紡ぐ。
「法皇様、私は神に誓って…」
その言葉を遮るように
法皇は跪いているテン枢機卿を蹴り、
「君の意見は求めていないよ」
指を鳴らす。
後に控えていた従者達は用意していた杯をテン枢機卿に掲げる。
「テン・サルサリウス枢機卿
貴殿に神託裁判を執行する」
テンは微かに勝機を感じていた。
神託裁判は形だけのものだ。
杯に注がれた聖水を飲み干せば
罪に問われることはない。
「かしこまりました、法皇様」
テンは杯を受け取るとゆっくりと
口をつけた。
瞬間。
口内に聖水は入ることなく、
頬を伝わってこぼれ落ちていく。
杯は空になり、
聖水はテンの衣服に染みこんでいく。
「あ…あああ…」
法皇はため息をつく。
ユリ枢機卿はテンの前に立つと
「テン・サルサリウス枢機卿、
貴殿は神託裁判によって、
神の庇護から離れた非人と証明された。
本日をもって
財産並びに家族と友人のすべてを神に返し、
この地より去れ」
と冷徹な目でテンをみる。
染み込んだ聖水はテンの肌を焼くように
高熱を発する。
その痛みに耐えかねるようにテンは衣服を脱ごうとするも
触れた手のひらは皮膚を焼かれ、
現れた肉は黒く染まる。
従者達は離れ、入れ替わるように華美に彫金された鎧に身を包む騎士達が
部屋へと入ってきた。
ユリ枢機卿は騎士の一人と目を合わせ、頷く。
「アスレイ聖騎士団団長、イオン・ダルク。
並びに副団長シャルフ・ダルクの二名が非人刑を執行する」
イオンの部下達は命じられた通り、
テンを動けぬように運んできた台座に固定する。
「用意が整いました」
ユリ枢機卿は用意しておいた執行書を読み上げる。
「神は人に腕を与えたもうた」
イオンとシャルフはテンの両腕に剣を突き刺す。
神経を切断したのを確認後、
二人はは剣を腕から抜いた。
痛みは限界を超え、
テンの喉は壊れんばかりに叫ぶが固定されているせいで
体を動かすことができない。
「神は人に足を与えたもうた」
騎士は転がるテンを押さえつけると腱を切る。
「神は人に声を与えた」
騎士はテンの喉を掴むとそのまま潰した。
「そして人ならざるそれは荒野にて救いを求めん」
意識を失ったのを確認すると
イオンとシャルフは剣についた血を拭い、
部下に台座からテンを下すよう
命じた。
下ろされたテンは用意した布袋に押し込こまれ、
法皇への礼を行ったあと、
布袋を荒野へ捨て去るために部屋から出た。
法皇は残り香に鼻をつまむ。
「僕は疲れたから、ユリ枢機卿。
後のことは頼むよ」
ユリ枢機卿は部屋から去る法皇に頭を下げると
これから待つ喜びに微笑みを隠しきれなかった。
最後までお読みいただいて
ありがとうございます。
題名と内容の差に違和感を覚えると思いますが、
14話から題名通りになります。