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底辺歌手転生。~idol of legend~  作者: 水絵雪絵
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第二話「私のファンとこれから」

興味をもってくれてありがとうございます。


二話は女神様とこれまでとこれからのお話です。


よろしくお願いします。

目を覚ますと知らない女性が私をみてる。


「あっ目覚めた。よかったよかった」


横になっているみたいで目をそらすのが難しい。

しっかり手入れをしている髪。


肌もありえないくらいキメがすごい。


全体的に裕福な家の人だと分かる。


動きの一つ一つが高い。

絶対、閉店前の惣菜を買わない人だ……


目を合わせるのが辛くなったから

私は周りを見回す

目にみえるところ全部に知っている顔のポスターが貼ってある


「えっ・・・私?」


みればみるほど全部私だ。

学芸会で初めて歌ったやつ、町内会カラオケ大会、部屋で初めて配信して

お母さんがドア開けたのに気づかないで衣装着て歌った……


「いやあああああああああああああああああああああああっ!!!!」


叫びが止まらない。

恥ずかしすぎて死にたい!!


「落ち着きなさい」


悪夢がぶり返す。


エンドレスさんがこの配信でファンになったって

言ってたけど私には未だにトラウマとしてこびりついている。

殺して!今すぐ殺して!

頭からスッと血の気が引いてく。


発作がでる……


頬をむにゅと挟まれて彼女の顔が目の前に来た。


「落ち着いて!」


こんなにキレイな人が目の前にいる。

心臓の鼓動、今すぐとまれ。

このまま地獄へいかせて。


「live、全部聴いていたわ。

私、あなたの歌好きよ」


心臓の鼓動が死ぬレベルで速くなる。

BPM二百は超えるね。


「あ…あにゃがふう…ごじゅま…」


私は頬を抑えられているけど、

懸命にお礼を言う。


「あっごめんなさいね」


ずっと触っていてほしい手が離れてしまった。


(ちょっと寂しくなるくらいいい肌触りの手だったなぁ・・・)


離れたせいか、彼女から品のある大人の香りがふわりと鼻をくすぐる。



「あのね、言いづらいだけど水原奈々ちゃん。

私、ずっとね応援してたの」


liveでも彼女の姿はみたことがない。


ステージからファンの顔と動きを必死にみていたから覚えている。


彼女がいたらライブハウス中の客は私たちのことなど

みてくれなかったに違いない。

というより即メジャーデビューすると思う。


「花歩きは何回も聴いてるわ。

(愛に怯えて、夢に壊され、私は怯えるしかない)って

一節が好きなの」


お花見のゴミ拾いバイトで花見客達の捨てたビール缶が山になって、

周りの灯りと桜が反射したときに浮かんだ曲。


声質と合ってないって言われるけど

サクサクちゃんだけは好きだよって言ってくれた。


「ほとんど死にたい、暗号友達を歌ってたときは

緊張と拒絶がすっごく伝わってハラハラしたもの」


あれは地獄だった。


隆文さんは方向性変えたの?って

聞いてくるし、

ちょっと年齢層高めの人達がCD買ってくれるんだけど

私のファンは好みじゃなかったようで、

あまり話題にしてもらえなかった。


たまに下町のゴルバチョフさんとか

アレ歌わないのって聞いてくるけど、

歌うと曲が終わった後しーんってなるんだよね。


うんちゃんさんは震えてすぐに帰るから

封印してるのに知ってるなんて……


「それでね、お願いがあるんだけど

私の世界で歌ってもらうことってできるかしら?」


言ってる意味がよくわからない。


「ここ、3世紀ほどね。みんな歌ってくれなくなったの。

呪文とか詠唱とかそっちに行っちゃって、

楽しくない」


彼女の目が少し曇り始める。


「だからね、あなたが歌ってくれるとちょっとずつ

そういうブツブツなんか言ってる人が減ってくれるかなぁって」


「よくわかんないけど、そういう世界の呪文ってかっこいいやつじゃないの?」

私もできたら唱えてみたい……


「思いを込めて唱える分にはいいのよ」


「魔法を使うための言葉として聴かされる身にもなってよ、嫌になるわ」


もしかしてこの人は神様?

女神様って言ったほうがいいのかな。


「精霊に任せる神もいるんだけど、大事な子供達だし

きちんと面倒みてあげたいのよ。良いことも悪いこともね」


「昔はみんな、歌ってすごかったのよ、

あなたみたいにかわいい子達が七色龍の頭に乗って

第十曲魔法を合唱したりして敵も味方も盛り上がったんだから」


女神様の顔がちょっと曇る。


「しばらくしたらね、歌詞を言うだけでも

それなりに魔法を出せる子が出てきたりして、

そういうのもしょうがないかって認めてたの」


「気がついたら歌う人が減って、

小声で唱えるだけになっちゃってね。

失敗したかなって……」


涙がスッと落ちる。

私はポケットに入れてるハンカチを渡そうとポケットを探すけど

手に触れない。

体をみてみると知らない服を着ているみたいだ。


「ごめんなさいね、あちらの世界だと死に装束っていうのかしら?

こちらに連れてくるとき、林檎六蛇を退けるために服は置いてきたのよ。

それは私デザインの新しい装束、いいでしょ」


少し民族衣装っぽい部分がそういう雰囲気を作り出している。

青も上品な色でバランスもいい。

多分、高い生地だ。

ユザイヤでも手の届かない値段だと思う。

そういう肌触りと光沢。


「そうなの。ちょっと奮発してフルフラットシルクに不可侵魔法属性を付与して

色々頑張ったの、自信作よ」


(よかった、表情が明るくなってくれた)


「気を使わせたようでごめんなさいね、

それにあなたがああいう形で亡くなるなんて

気づかなくて大急ぎで地球に行って必死だったのよ」


「私、死んだんですか」


女神様は真剣な顔で私をみている。


「ええ、あの男に抱きつかれた瞬間、脳卒中で亡くなったわ。

あれだけのストレスを味わったらそうなるわね」



最悪すぎる。

あんな男に抱かれて死んだなんて……


「でも安心して。痕跡はすべて消してあるし

こちらの世界なら輪廻で巡り合うこともない」


良くないけど良かった。


正直、二度と会いたくないし

あの姿も何もかも感じたくない。


「……liveはどうなったんですか」


女神様は目を伏せる。


「あなたがいなくて、ファンの子たちは心配してたみたい。

亡くなったってあなたのお姉さんがSNSで連絡して

お墓に毎年集まってくれるみたいよ」


もう、体もないんだ……


「でもね、下町のゴルバチョフさんだったかしら?

彼、サクサクちゃんと結婚したの。

あなたのおかげで決心がついたんですって」


ちょっと待って……

サクサクちゃん、未成年だったはず。


「下町のゴルバチョフさんもそれが心配でお付き合いは避けてたみたい。

三回忌が終わって、サクサクちゃんが大学進学が決まったことを

告げてから少しずつ進展したみたいね」



「来年、生まれる子に奈々って名前を付けるんですって」


嬉しいけど恥ずかしい。

死んだのは嫌だけどちょっといいことをした気分。


「お母さんとお姉ちゃんはどうなりました」


七回忌までは二人も辛かったみたいだけど

どうにか立ち直れたみたいよ」


「向こうに帰りたい?」


帰りたい。

それに七回忌まで済ませたのならもう無理だと思う。

帰っても不審がられるだけだし、

戸籍もない。


女性は真剣な顔で頷く。


「あのままだとあの男と縁が繋がったままで

次の世に生まれてしまう定めだったのよ。


私達、神はそういうことも含めて世界を導いていくものなんだけど、

嫌でしょ?


それに、どうしてもあなたの歌が私たちに必要なの」


この感情にどんな名前をつけていいのかわからない。


ただ、ありがとうございますとしか言えない。

神様に必要とされる歌手なんて聞いたことがない。


「よろしくお願いします」


こんなキレイな神様のもとで歌うことだけを考えて生きていける人生。

最高だよ。


「ええ、できる限りのサポートはするからよろしくね」



こうして私は女神さまの言う世界で歌手として生きる決意を固めた。


読んでいただけてありがとうございます


女神様のお肌や入念に磨き上げられたお姿について

書きたかったのですが、

本編より長くなりそうだったので減らしました。


女神様のお肌は

白が強めの赤ちゃん肌に動脈が浮いていない感じです。



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