第一話「バイトとlive」
興味をもってくれてありがとう。
一話は異世界転生前のお話です。
歌とチートとお料理を書いていけたらなって
思っています。
今日はファンが私を待っている。
「はい、たまり醤油仕込み唐揚げ3人前
注文ありがとうございます」
お客様のオーダーを受け、
私はフライヤーに仕込んだ胸肉をそっとおろす。
初めのうちは揚げ具合のコツが掴めなかったけど、
こなすうちに常連さんから指名が入るようになった。
正直いうと誇らしい反面
歌のほうで褒められるようになりたい。
今日は入りがいい。
こういう日は想定より上の数が出る。
なんとかいいタイミングでシフトをずらしてくれたバイトメンバーの真に変わりたい。
次の日にお礼のお菓子と変わってほしい日があったら受けることを伝えよう。
終わったらすぐに家に帰る。
電車代はもったいないけどちゃんとお風呂で体を清めて
ステージに立ちたい。
それに揚げ物特有の匂いを消すには
マンガ喫茶のシャワー室だと難しい。
あとはできる限り余裕をもって、ライブハウスに走る。
グッズも昨日のうちに搬入を終えた。
チェキ、マッキーも用意した。
衣装に不備は見当たらなかった
お釣り専用の小銭もキャリーケースに入れた。
喉も整え、体も絞った。
今回のTシャツは配信でも反応がよかった。
猫系は描いて楽しいし、
評判もいい。
もっと早く気づくべきだった。
動物、特に猫系はいける。
いつも来てくれる下町のゴルバチョフさん、ブリ太郎君は三枚予約を入れてくれた。
うんちゃんさん、おもち大好きさん、田沼さん、
サクサクちゃんも新しいグッズは嬉しそうに買ってくれる。
他のアイドルを観に来たファンの人達も
手に取ってくれるようになる気配は高まっていると思う。
赤字はグッズで取り戻す。
幸太郎君が前のグッズも持ってきたらいいのにと
言ってくれるんだけど
できれば新しいやつを買ってほしい。
押し入れに閉まってあるグッズには申し訳ないけど
それは私の意地。
本音はどうにかしたいけど
live会場に持っていく時間と労力がない。
ちょっとずつとか思うけど、
どれを持っていけばいいのか悩みに悩んで、
気がついたら在庫数の確認をしていた。
あと少しでバイトが終わる。
そのまま全力疾走で家に帰って、
匂い抜いて、
肌に気合い入れて、
他の子たちに負けない傷跡
ガッチリ刻みつける。
歌は魂。
私の歌と物販の商人魂はだれにも止められない。
「奈々ちゃん・・・ちょっとこっちきて」
少しとがった雰囲気が嫌いで
顔はあまりみないようにしている店長が
作業部屋から私を呼んでいる。
「はい・・・なんですが」
大体こういうときは嫌なことしか言ってこない。
私は他のスタッフに代わりをお願いして、
事務所へ向かう。
作業場を抜け事務所に入ると
トカゲみたいな目の店長がだるそうに座っていた。
「今日、liveっぽいけど3時まで残ってくれない?
真くん、急に仕事入ったみたいでこれないって言ってるんだよ」
言っている意味が分からない。
「他の子も歌うんでしょ、君が少しくらい遅れても大丈夫だよ」
そういう問題じゃない。
遅れた時間だけ、他の子は聴いてもらえる。
「時間も決まってるので、それは…」
「いいから、ちょっとだけ残ってよ」
細い目でこっちをみながら店長が立ち上がって、
両手で私の肩をつかんできた。
「真くんは君と違ってS1優勝を狙える器だし、
何より芸人として華がある。
それにliveって言ってもいつものボロいとこでしょ」
何を言ってるんだろう。
何か言ってるのに聞き取れない。
「~ちゃんもいい大人なんだし、
そろそろ現実を見据えて、~した生き方考えても~」
気持ち悪い。
「…僕とつき合うとか…」
ようやく聞き取れた一瞬、
店長が抱きついてきた。
その瞬間、私はぷちっと糸の切れた音が聞えて、
体に力が抜けて目の前が黒くなって何か消えた。
多分死んだ。
せめてライブ中に死にたかったなぁ……
最後まで読んでくれて
ありがとう。
二話は女神さまのもとでお話をする感じになると思います。