プロローグ
僕は、一ノ瀬悠里、26歳まだまだ人生これからというところで、死んでしまった。死因は多分過労だと思う、就職してからは、自分の全てを仕事に捧げてきたと言っても過言ではないほど、働いていた。恋も遊びも楽しみも仕事に捨ててきた、そんな僕が、覚えている最後の記憶は、明日の会議のための、資料を作成している時に、急に意識が飛んでいき、その瞬間までも「あぁ、ここで寝たら明日の仕事に、間に合わないな。」と思っていた。
そんな僕が、今いるのは、白い世界だった。
そして僕の向かいに居るのは、白い羽の生えた女の人だった。作り物のように完璧で見るものをすべて魅了するような顔だった。
多分この人は、僕を天国に連れていく天使なんだろうなとぼんやり思っていたら、
「一ノ瀬悠里さん、貴方は26歳という若さで死んでしまいました。それに死因は過労死とても大変な人生だったのでしょう。」
僕の前に居た天使らしき子は、多分僕のために悲しんでいるだと思うとこの子はどんなに優しい子なんだろうな。
「そんな貴方には、来世の決定権を差し上げます。貴方が望むのなら、絶世の美女としても、最強の力でも一国の王でも構いません、しかもこの世界でなくてもいいんですよ。どんな望みでも叶えて差し上げます!」
「本当にどんな事でもですか?」
「もちろんです! 私は天使ですよ、不可能なんてありません。」
なんでもいいと言われたら、僕が叶えたい望みはすぐに決まった。
「なら、鍛冶屋とかになれますか?」
それが僕の願いだった。
小さな時に、テレビで見た刀鍛冶職人を見た時から憧れていたのだ。
「はい、もちろんなれますけど、そんなのでいいんですか?」
「あと少しだけいいですか?」
「はい、まだまだ大丈夫です。」
「なら鉱山が近いところで、できるだけ静かな所でお願いします。基本的にのんびり暮らしたいので。」
「それも大丈夫です。忙しい生活をしてきたから来世ではゆっくりしたいですよね。最後に聞きますがもう何もないのですか?」
これ以上は特にないのだが、より良い生活のためにもゆっくりと考えているといい案が浮かんだ。
「ダメならいいですが、天使さん、僕と一緒にのんびり暮らしませんか?」
僕は、恋をしたことがなかったけど天使さんとならやっていけそうと思い聞いてみると。
「もちろん大丈夫です。これで最後ですね。なら異世界に飛ばしますね。…え、私と一緒に暮らすんですか?」
「やっぱりダメでしょうか?」
「…ダメなことはないんですが、男性の方にそんなことを言われたのは初めてで…。」
天使さんが、顔を下に向けて喋っていたので分かりにくかったけど顔を赤くして恥ずかしそうにしていた。
「分かりました。そういうことなら、歳はそのままで転生させますね。赤ちゃんで私と居ても面白くないでしょうし。」
「ありがとうございます。これからよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。では送りますね。」
僕の意識は、また薄れていった。