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おまけのロビン前編

ロビンは鍛冶屋の息子で幼いころから、自分は鍛冶屋になるもんだと思っていた。


物心つくころから仕事を仕込まれ、本格的に父親の弟子になったのは15の年。

それから頑張ったと思うが親父に「お前才能ないなあ」 とポツリと言われた。

ロビン18歳、鍛冶場を出て一人泣く。


根が真面目なロビンはグレもせず仕事を探すため幼馴染みに相談した。

鍛冶仕事しかしたことないが何か仕事はないか?

幼馴染みはロビンに一枚のチラシを見せる。警備隊の新隊員募集のチラシで要件は

・健康

・15〜18歳

・犯罪歴なし

と単純。


「これならロビンでもいけんじゃない?」


幼馴染みはそう言った。




警備隊の入隊試験に行くとロビンを見てざわめきがおこった。

長身で筋肉隆々の男が辺りを睨んでいる。

試験者はロビンを遠巻きに見た。


一見他の試験者を威圧する猛者のようなロビンだったが、実状は剣術はからきしだし、特に賢い訳でもなく不安なため強張っているだけであった。

書類を提出し、筆記試験後体力検査と剣術の模擬戦となる。

試験が進むにつれてロビンは他の受験者に声をかけられるようになった。


筆記は簡単な計算と一般常識で、できたものから退出できるが、一番最後までうんうん唸りながら問題に取り組むロビン。

終わったら試験監督者に「そんなに難しかったか?」と心配された。

心配で何度も見直し、答えがわかったものさえ、ひっかけではないかと考えすぎていただけだったが。


体力検査では重量挙げでは見かけ通りの怪力を見せたが、それ以外は平均以下。

終わったら「お前力すごいな!」と他の受験者に声をかけられた。


剣術の模擬戦にいたってはへっぴり腰の構えで、細身の優男にあっさり剣を叩き落とされた。

みんなから「あいつは剣術道場行ってるから負けるのはしょうがない。」と優しく慰められた。

ちなみに優男はメヒテルトである。

そんなこんなでさんざんだった試験だが無事合格。

ロビンは結果を幼馴染みに報告すると「頑張れよ。」と激励をもらい、父親に報告すると「よかったな。」と言われた。


こうして鍛治屋から警備隊へと転職を果たしたロビンであった。


入寮してからの訓練期間は辛かった。


朝まず5キロ走る。

ただ走るならなんとかなったかも知れない。

整列し掛け声かけて走るのはただ走るより何倍もきつい。

A「けーいーびーたーいー!」

B「ハイ!」

A「治安!」

B「守る!」

A「悪党!」

B「シネ!」

A「いくぞーぉ!」

B「ハイ!」

A「1234

B「ゴーーー!」


地味に辛い。

ロビンは道に倒れた。

警備隊名物死の行軍。

昔は倒れている新隊員をだらしないと思ったが。

ついていけるやつらが化け物である。


しかもこれで準備運動である。

終われば剣術素振りに体さばき、体術受け身に型。


約1時間行う。


朝食をばくばく食えるやつは一握りだ。

その一握りにロビンと同室のメヒテルトがいた。

今もロビンの目の前でうまそうに食べている。


「よく食えるな。」

「いつもの鍛練より軽めだし、うまいよ。」


メヒテルトは事も無げく言う。

そして手をロビンに差し出す。

剣ダコだらけの手のひらだ。


「食べないならちょうだい。」


ロビンはメヒテルトに朝食を譲った。

午前は主に座学で法律や実務手続きを学ぶ。


朝の疲れから居眠りする者が多い。

しかし寝たら教官の愛の鞭がとぶ。

容赦なくとぶ。

地獄の座学である。


ロビンは眠気を必死にこらえるあまり目が血走り、手が血だらけになると逆に教官に「もういい、医務室行け。」と止められた。

昼飯もほとんどメヒテルトに譲った。


午後は本格的に剣術体術等を行う。


ロビンは昼をほとんど食べられなかったので、終了の鐘がなるまえに力尽きた。


一週間体をいじめぬく生活にロビンは精魂つき、もうやめたかった。

事実数日で除隊した者も数人いた。


おれもやめようかな。

ロビンの頭にそんな考えが浮かんだ。


思い詰めたロビンが寮室で除隊届を書いているとメヒテルトがのぞきこんできた。


「あれロビンやめちゃうの?」


メヒテルトの意外そうな声に腹がたった。

お前に何がわかる。

家は大商店で金があって。

剣術も体術もずば抜けていて。

学があって頭がよくて。

訓練も難なくついていけて。

教官に覚えがよくて。

おまけに顔もいいって。


「お前みたいにできないからやめる。」


思うことはたくさんあったが、口から出たのは一言だった。


「そんないい体してもったいない。これぞ警備隊って感じだし。」


もったいない。

メヒテルトに惜しまれた。

驚いているロビンをよそにメヒテルトは続ける。


「そのガタイで隊服着て見なよ。いかにも警備隊ですって風になるでしょ。説得力が違うね。」

「そんなもんか?」

「商人の子を信用しなさい。問題ですここに美味しいけど見た目がいまいち悪い野菜とそこまで美味しくないけど美味しそうに見える野菜が並んでいたらどっちが売れると思う?ハイ答え見た目が美味しそうな野菜でーす。」


捲し立てられてロビンはただうなずく。


「ではいざというとき、なよなよしている警備隊員と真面目で強そうな警備隊員どっち頼りたい?そんなもんだよ。」


言うだけ言ったらメヒテルトはベッドに入って寝た。

メヒテルトは寝付きが恐ろしくいい。

なぐさめられたのか悩むところだがロビンから除隊届を書く気を奪ったのは確かだった。

月日がたち訓練生活にも慣れ、新隊員達で馬鹿騒ぎしたり連帯感がうまれた頃、事件が起こった。


メヒテルト女だった事件である。


メヒテルトの親が来て差し入れをしてくれた。

食堂に集まりさすが大商人と新隊員たちが喜んでいるとメヒテルトが教官室に呼ばれた。

そして教官の怒号が響いた。


「お前ほんとうに女か、慎みを持て!」


誰も言葉の意味を理解できなかった。

みなメヒテルトと同室のロビンを見る。

ロビンは椅子から転げ落ち固まっていた。

同期は同室のロビンは全く気がついていなかったと理解した。



ロビンの実家

『銅の林檎』

腕利きの父がつくる包丁は食品は切るけどまな板は切らない優れもの。

料理人憧れの逸品。

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