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あとは若いお二人で

楽しそうに出かけるメヒテルトを見送り、エリアはため息をついた。


どうしてこうなった。


メヒテルトと同居を始めてからずっと自問自答をくり返している。


警備隊は職務の都合上独身は寮に入ることになっている。

当たり前だが男ばかり。

女とわかったメヒテルトをいれるわけにはいかなかった。


そこで当時の三番隊隊長御歳50歳が「うちにおいで~」と言って同居が決まった。

そして引退と同時にエリアが隊と家を引き継いだらメヒテルトもついてきた。

さすがに未婚の若い娘と同居はできないといったが、前隊長が「いい子だし悪さはしないよ~」とそのままにしていった。


野良猫みたいな扱いのメヒテルトである。


同居を始めたのはエリア29歳、メヒテルト20歳のとき。

使用人の老夫婦とメヒテルトと暮らしはじめたが思いがけず快適で驚いた。


メヒテルトは警備隊の仕事を知っているので守秘義務をあまり気にせず話せるし、近すぎない距離感が猫のようだ。


使用人の老夫婦も丁寧な仕事をし、あまりこちらに干渉しない。


実家より落ち着く家だった。


しかしそんな快適さはエリアから結婚を遠ざけた。


「あらあら旦那様、奥様と結婚すればよいじゃないですか。」


使用人夫婦はエリアの前でエリアを旦那様、メヒテルトを奥様と呼ぶ。


「歳もそんなに離れてないですし。」


「今日は旦那様のお母様からいただいたブローチを奥様に贈ったではないですか。」


結婚相手に贈りなさいって言われたのでしょう素敵ですね、と続ける。


エリアはもうどうして良いかわからなくなっていた。


警備隊でメヒテルトが女だと始めて知ったのは教官をしていたエリアである。

「うちのメーちゃんは女の子ですが。」発言を聞いた教官がエリアであった。

その場で固まった。

メヒテルトの父親が帰ったあとメヒテルトを呼び出し胸を触った。

性的意味はなかった。

そのときは本当に混乱していた。

胸を触ったのに性別の判断がつかないでいたら、メヒテルトがエリアの手を取りあろうことか股に持っていった。

エリアはそのときメヒテルトが言った言葉が忘れられない。


「ついてないっすよ。」


お前はほんとに女か、慎みをもて!と叫んだエリアは悪くない、やらかしてるけど悪くないはずだ。


そんなはじめにやらかしたので、部下で女で年下のメヒテルトに負い目が強い。

口を開けば嫌みにようなことばかり言うようになってしまった。

隊長と副隊長という立場になってますますそれが強くなった。


ブローチも寝巻き姿で、そのまま渡すつもりはなかった。

どう渡すか悩んでいるうちに、出かけるメヒテルトをみて慌ててああなった。


使用人夫婦はうずくまるエリアみてただ微笑んだ。

視線には哀れみがふくまれていた。




夕方メヒテルトが上機嫌で帰ってきた。

ロビンの見合いがうまくいったらしい。

メヒテルトは夕食の席で本日の見合いについて話す。


「同期のロビンはいい男なんですがずっと片想いしてて、大丈夫か心配だったんですよ。」


警備隊でロビンの片想いは有名だった。

長いし、なにせ相手がメヒテルトだ。


ロビンも直接言わないものの食事に誘ったり、出かけたり努力をしていた。


食事にいけば給仕の女性と話がはずむ、メヒテルトが。

出かければ女性に囲まれる、メヒテルトが。

その現場を目撃した隊員は言う、人気俳優と付人のようだったと。


「今日紹介したのはパン屋の看板娘で色白で小柄でふんわり焼きたてのパンみたいなこ子なんです。」


メヒテルトは兵糧パンだな固くて黒くて、


「私とは正反対ですよ。」


でも味があって嫌いじゃない、エリアは思った。


「その子もロビンがどんぴしゃだったみたいで。いわく好きな女に告白もできず、気を引きたくて恋人作ったようにしても全く相手にされないへたれっぷりかわいいじゃない、だそうですよ。」


ロビンよ相手の女性にすべて見透かされてるぞ。

エリアはロビンの行く末が平和であるようにを祈った。


この調子なら、50件目の結婚になりそうですとメヒテルトは嬉しそうだ。

そしてメヒテルトはエリアに爆弾を落とした。


「そうだ隊長にも誰か紹介しますよ。好み教えてください。」


エリアは食事の手を止めた。

自分の女性の好みは、目の前のメヒテルトを見る。


「気配りができて、優しい。」


女性だからなのか、メヒテルトだからなのか、メヒテルトの周りに不和が少ない。

職場でも、家でも落ち着く。


「細身だな。」


鍛練で引き締まった体、胸はなかった。


「白くなくていい。」


警らに出るので健康的に焼けた肌。


「背も高い、俺よりも。」


メヒテルトが訝しげにエリアを見る。


「仕事に理解がある。」


隊の副隊長やるくらいに。


「一緒に住んで楽しい。」


今の生活がよくて、他に結婚を考えられないくらいに。


「変わった趣味ですね。」


メヒテルトの声は小さかった。


「心当たりはあるか?」


うつむいたメヒテルトの耳は赤かった。


「ひ、一人ほど?」


さらに声はちいさくなる。


「歳は23歳のいきおくれ?」


エリアはつい笑ってしまう。


「そうか趣味とかあるのか?」


こんなメヒテルトをかわいいと思う自分は何か拗らせたんだろう。


「お、お見合いばばなどをすこし。」


二人は笑った。



~利用者の声~

10代未満女性Aさん

うちの両親が利用して私たち兄弟が産まれたんだけど・・・

両親を紹介するとだいたい変な顔をされるの。

お父さんの顔を見て、お母さんの顔を見て、もう一回お父さんの顔をみて、やっぱりお母さんの顔ももう一回みて「お母様ですか?」っておそるおそる聞くのよ。

もー自慢のお父さんとお母さんなのに!

失礼しちゃう(*`Д´)ノ!!!

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