ご趣味は
窓の外を見ると曇り空。
パッとしない天気だか暑くもなく、寒くもなく外出にはちょうどいい。
今日は同期に知人女性を紹介する、お見合いババの活動日である。
隊長にはメヒテルトがお節介を焼いて男女の仲をとりもっているように思われているが、そうではない。
あくまで誰かいい人いない?と聞かれて、紹介している。
ただ男側には女性とはなにかと懇切丁寧に解説し、取り扱いを学ばせ、自身を清潔にさせて、酒タバコ博打等難点をやめさせて会わせる。
女性側にも警備隊の仕事について説明しそれでもよければ紹介している。
メヒテルトは丁寧に紹介しているだけである。
最近はなぜか女性講義に既婚男性が参加し「これで離婚が回避できる。」「妻の怒っている理由がわかった。」と泣いて喜ぶことが増えた。
それはさておき。
同期のロビン・エイクに女の子を紹介してくれないかと言われたときメヒテルトは目を疑った。
「あれ片思いはいいの?」
ロビンは長いこと片思いしていると有名であった。
「そろそろふっ切れたかな。」
「その片思いしてた子もったいないね。ロビンいい男なのに。」
「ホントにな。」
ロビンはメヒテルトを見る。
ロビンはメヒテルトより背が高いのでメヒテルトはやや見上げる。
ロビンは穏やかな性格で仕事もできるし、ユーモアもある。
片想いを続けていなければさっさと結婚していただろう。
「好みはある?」
「あー小柄で、ふっくらしてさわり心地よくて、色白で、守ってあげたい感じ?」
「同感だね、私と正反対でかわいい女の子だね。」
メヒテルトは大柄で固くて日焼けして黒くて、強い。
「そう正反対がいいな。」
ロビンはそういうとメヒテルトから目を離した。
さて本日のお見合いはどうなるか。
お見合いの立ち会いにあたっていつも服装に悩む。
男装か女装か、それが問題だ。
目印と男避けと女性を喜ばせるのは男装、男を引き立て女性を安心させるのは女装。
紹介する二人を思いうかべ、ロビンの新しい恋と幸せを願って女装を選んだ。
紺のワンピースに肩掛け、低い位置に髪をまとめる。鏡を見ると地味な姿の立派ないきおくれお見合いババの出来上がり。
自嘲が悲しすぎる。
メヒテルトはため息をつくと鞄をもって自室を出た。
玄関にむかう途中で同居人に会った。
「女装か?珍しいな。」
はなはだ失礼である。
メヒテルトは一応性別女だ、一応。
「同期のロビンに知人を紹介するので出掛けます。」
日中はいません、と続けると同居人は渋い顔をした。
「お前一応いきおくれとはいえ若い女だろう。装飾品の一つもつけないのか。」
「首に識別証は下げていますが。」
「警備隊全員でおそろいか、ゾッとするな。これやるからつけとけ。」
同居人はポケットから取りだし、メヒテルトの胸元にブローチを着ける。
女性の横顔の意匠だ。
「ありがとうございます。」
「これで“私は女です”て少しは主張できるだろ。」
重ね重ね失礼である。
でもやっぱりヒカリモノをもらうと嬉しい。
メヒテルトは微笑んだ。
「では隊長いってきます。」
玄関から同居人、エリアに声をかけると、う、だかおだか気のない返事が届いた。
エリアは自宅では大分だらしない。
まあ家で職場並みに気を張っていたら大変だ。
「夕飯までは帰りますよ。」
だらけるエリアがおかしくてメヒテルトは笑って家を出た。
~利用者の声~
30代男性Gさん
メヒテルト先生には本当に感謝している。
私の不徳により我が家庭は危機的状況であった。
荒ぶる山の神に反抗的な神使。
私にはどうすることもできなかったが、山の神の怒りを鎮め、神使の従順にし、私にそれらと対峙するすべをあたえてくれた。
メヒテルト先生に足を向けられない。
(ノ-_-)ノ~┻━┻