6、火をつけよう
知らない天井どころか天井そのものがねえ。
おはようございます相良宗吾改めオークのザックス0歳です。
異世界生活最初の朝がむさいオークとの雑魚寝しかも野外って色々とくるものがあるね。
そんなことはどうだっていい。重要な事じゃぁない。
せっかく昨日川に行ったついでに身体も洗ってすっきりさわやかな気分なんだ。勢い大事。
今日やることは火の確保だ。昨日川で洗った肉は木に吊るして干してあるからこれを調理するための火を焚かねば。
俺の唯一の武器である前世の知識を振り絞り火をおこす方法を考える。いまだぐーすか寝てるデニスとチャッピーは戦力にならん。フゴフゴとしか言えないチャッピーは問題外として喋れるデニスに聞いてみても知らないらしい。つかえねえ。
木の棒を高速で回して木の板にこすり付ける原始人スタイルで頑張れば摩擦熱で火がでそうな気がするけどそれだけじゃダメだったような。
そうだ、着火剤的なものがいたはずだ。そうと決まればさっそく行動だ。
◇◇◇
森の中をぶらついて乾いている木の枝を回収しながら火が付きやすそうなものを探す。なんかねえかな。
「お、これは」
キノコ発見。食えんのかこれ。
いけるいける。野生の生肉食っても腹壊さないくらい胃腸は頑丈くさいし多少毒があっても大丈夫だろう。肉以外も食わないと栄養のバランス悪いし。
木の枝ついでにキノコも探していると白いふわふわした物体を見つけた。
なにこれ綿?
「やったぜ」
普段の日頃の行いがいいからか苦も無く見つけてしまった。神様は見てくれてるんだね。いや、神様見てるんだったらもうちょっとこう、俺の今の境遇に対して色々優遇してくれてもいいんやで?
居るか居ないかもわからん神に文句を言っても仕方がないし居てもきっとドSだろうからさっさとやることやろう。
寝床までの往復で結構な量の木の枝も回収できたしこれで火もつくはず。
デニスとチャッピーはまだ寝てやがる。二人とも今まで地面に直寝しかしたことがなかったらしく草と葉っぱで作ったベッドをいたく気にってたし放っておこう。俺ってば優しい。
「よし」
半径一メートル程の範囲の地面を綺麗に露出させるとその中心部に円形に石を配置して拾ってきた枝を積む。うむ、たき火っぽい。
太めの木の皮を歯でむしって足で両サイドを固定するとまっすぐな木の棒を手に1人気合いを入れる。
やったるで。
「ふおおおおおおおおおおお!!」
綿っぽい何かをセットし木の棒を両手で挟み高速で回転させる。オークパワー全・開!
「むきー!」
これでもかこれでもか。
あ、乳酸たまってきた。頭の血管も切れそう。
「おろろろろろろろ!」
きた!煙きた!これで勝る!
俺の奇声に気が付いたデニスとチャッピーの冷たい視線を無視し大急ぎで火が付いた綿を組んだ木の中に放り入れる。
「ぶー、ぶー」
フーフーかわいらしく息を吹きかけ火種を育てる。うわあぁ消えそう!頑張れよ!諦めんなよ!もっと熱くなれよ!!
「ぶーぶーぶー!」
「フゴ・・・」
「チャッピー、ザックスイイヤツダッタ。フタリデツヨクイキテイコウ」
「フゴ」
おい聞こえてんぞ。居なかったことにしようとすんじゃねえ。こちとら必死なんだよ!
「ぶー……よっしゃ!ついた!やったぞこの野郎!!」
酸欠で死にかけた頃ついに火が大きくなった。おぉ、文明の明かりだ。
「ザックス、オマエ、マホウツカエルノカ?」
「フゴフゴ!」
「魔法?やっぱこの世界魔法とかあるんだ。すげえ。」
とにかくこれで肉に火が入れられるぞ。