5、食事にしよう
ご飯、ゲットだぜ。
と、いう訳で猪を倒し今日のご飯を手に入れました。
しかしオークの身体ってスゲーな。軽自動車並みの大きさの猪を担いでも余裕とか自分で自分が信じられん。
「チャッピー、ただいまー」
「フゴフゴ」
ただでさえ自分の身体から洗ってない犬の臭いがするのにこれ以上獣くさくなられてもたまらないので寝床から少し離れたところに猪を降ろし後はやっておくと言うデニスの言葉を信じチャッピーの様子を見に戻る。
緑色でよくわからんが顔色は良くなってるような気がしないでもない。
「フゴ、フゴフゴ」
「あはは、何言ってるかぜんぜんわかんねー」
チャッピーと意思疎通がまったくできん。
まあ俺もオーク一日目だしおいおいどうにかなるだろう。
「ザックス、メシ、デキタ」
「お、サンキ…………ゥ」
生でした。
「フゴフゴフゴ」
「チャッピー、カンシャシテ、クウ」
「フゴフゴ」
ばらしただけの生肉やら内臓やらをもりもりと食べているデニスとチャッピー。え、俺も食べなきゃダメな流れこれ。
「ザックス、ドウシタ」
「フゴ」
「アッハイ」
俺としては非常に嬉しくないが気を使ってくれたのか一際デカい部位の肉がデニスにより俺に手渡される。
うわぁ、血が滴っててとっても新鮮。
これはあれだ。猪に立ち向かう時より覚悟がいるかもしれない。いやほら、俺も日本人だから馬刺しだとかユッケだとか肉を生で食べる文化があることは知っているんだ。
だけどこれはない。だって塊だもん!味付けとかないし!ワイルド過ぎるだろ!!
そっかー。オークには調理するどころか火を通すような文化もないのねーあははは。
思い返してみればオーク広場(今命名)で肉に噛り付いてた奴が持ってたのもな生肉だったもんなぁ。
オーケーわかった。俺も男だ。飯を食わなかったら腹だって普通に減る。この世界でオークとして生きていこうと決めたんだ。ここで食わねば何がオークか。
「うぅ……」
逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ。
「い、いただき……ます」
◇◇◇
「ザックス、ドウシタ?」
「フゴ」
「いいの、そっとしておいて」
大切なものを失った気がするがきっとそんなことはないのだろう。
でもね、一つだけ言わせて。
美味しくなかったの。
だってね、オークになったんだから味覚とかもそれに対応したものに変化してるかもとか思うじゃん。デニスもチャッピーももりもり食べてたんだから俺だって美味しくいただけるかもとか考えるじゃん。
血の味しかしねーんだよ!そして生臭いんだよ!
腹は膨れたけど毎回これはきつい。食事のたびに精神的に負うダメージがデカすぎて明日への希望が持てない。
そしてデニス、お前血抜きとか一切しないで本当にばらしただけかよ。
これは早急に食事事情は改善しなければならない。
「よし」
「ドコカイクノカ?」
「おう、ちょっとな」
「フゴフゴ」
俺は草と葉っぱのベッドから起き上がると残った肉を数枚のデカい葉に包む。
「モウスグヒガクレルゾ」
「すぐ戻ってくるから大丈夫」
「フゴ」
よし、川に行こう。
◇◇◇
「ぶえぇ、美味い」
血生臭くなった口を川の水でゆすぎさっぱりしたところでごくごくと飲む。
さて、この血まみれの肉を何とか食えるようにするためにまずは川で洗おう。これを続けて食うには俺にはレベルが高すぎる。
明日から狩りをするのはいいけどデニスに血抜きをしてもらうようにしないといけないな。方法はなんかの本で読んだ気がするんだけど確か首の頸動脈やらを切るんだったっけか。
そして火がいる。生はいや。せめて火を通して食いたい。
肉をざぶざぶと洗いながら暗くなってきた空を見上げる。あぁ、月がすげぇデカい。異世界なんだなあとしみじみと思う。
「考えることは多いな」
この世界は知らないことが多すぎる。
やってやろうじゃないか。目指せ文化的で快適なオーク生活。