4、狩りをしよう
集落がある広場から少し離れた場所に丁度良いスペースを見つけた俺は草や葉っぱを集めると簡易的なベッドを作りチャッピーをそこに寝かせる。
その横では俺のやり方を見ていたデニスが俺と自分の分のベッドを作ってくれていた。
「……腹減ったな」
恥ずかしながら俺の腹が強烈な音を発した。まあ周りにはオークしかいないしデニスもチャッピーも気にしてないみたいだし別にいいか。腹が減ってるのはよかないけど。
「なあデニス、飯ってどうしてるんだ?」
「ソウカ、ザックスハ、ウマレタバカリナノカ」
「生まれたばかりにしてはゴツイ気もするけど・・・」
そう、俺は今日この世界で生まれたばかりだと思うのだが俺の身体は周りのオークとそう変りないくらいにゴツイ。子供のオークって感じはしない。
その前に子供のオークなんて居るのか?
「メシ、トリニイク。ツイテコイ」
「おう。チャッピー、ちょっと待っててな」
「フゴ」
なんか軽く食べれる果物でもあればいいな。なんて考えていた時期が俺にもありました。
◇◇◇
「なあにこれぇ」
『ブルルルル』
今、俺の目の前に軽自動車くらいの大きさの猪さんがいらっしゃいます。牙が立派だなと思いました。
「オレ、チカラヨワイ。タノンダ」
「まさかの丸投げ!?ちょっまっ!」
猛スピードで突進してきた猪をほぼ反射だけで身を捻ってかわす!ぎゃあ!怖いい!
「ガンバレ」
「おまっ」
親指を立てるデニスマジ鬼畜。
畜生やってやる、野郎ぶっ殺してやあああるぁああ!
「どすこいい!!」
『ブギィ!?』
反転してさらに突進してきた猪を牙を掴むかたちで真正面から受け止める。オーク舐めんな。
あ、ごめんなさいやっぱ無理。ものすごい後ろに押される踏ん張り効かない。
「あばばばばばばば」
地面に轍を作りながらずりずりと後ろにずれていく。ぐぎぎ重たい、すごいプレッシャーだ。
「で、デニスおまっ、手伝えこるあぁ!」
思わず巻き舌が出てしまったがそれよりもデニスの野郎木の陰に隠れてこっち見てやがる。あいつ後で殴る。
しかしここで泣き言を言ってはいられない。三人分の飯をゲットするんじゃあー!
「こなくそぉ!」
『プギィ!』
腰を落とし牙を掴んだ両腕を時計回りに捻る。まさかできるとは思わなかったがそこはオーク筋力。見事に猪を転倒させることに成功した。オークってすごい。
「ちえりやああぁぁあぁあ!!」
そのまま、渾身の力で猪の頭に握りしめた右のこぶしを振り下ろす!食らえ必殺オークパンチ!!
ズドンッ!と重たい音を響かせこぶしに何かを砕く感触が伝わる。うわぁ、気色悪ぅい。
『ブ……ギィ』
頭を潰された猪の身体から力が抜ける。勝った。
色々とビジュアル的にグロいことになっているのは見ないようにしよう。ぎゃあ目玉出てる。
猪の血に塗れた自分のこぶしを見る。改めて俺は人間じゃなくなったんだなと実感した。
こんなくっそデカい猪をパンチ一発で倒すなんてどう考えても普通じゃない。俺の知ってる現実じゃありえない光景が今自分の目の前に横たわっている。
まあいいか。オークだろうがなんだろうがせっかく人間の頃より強い身体をゲットして二度目の生を生きる機会を得たんだ。それならオークとして生きていく覚悟をするしかあるまい。
「ふはははは!よし、デニスこい!一発殴ってやる!」
猪を倒して色々吹っ切れた俺は木の陰から出てきたデニスを引っ掴むと笑顔でこぶしを見せつける。わはは、怯えろ、竦めえ。
「ヤ、ヤメロ。オマエニ、ナグラレタラ、シヌ」
「ふざけろお前俺に全部やらせやがって死ぬかと思ったわ!」
「オマエオレヨリツヨイ。オレガヤルヨリゴウリテキ」
「お前本当にオークか?」
俺はこの世界で生きいこう。オークだっていいじゃない。