0、プロローグ
見切り発車感満載でお送りいたします。
俺、相良宗吾は高校生だった。
そう、高校生だった、過去形だ。
17歳と言う若さで俺の身体は癌に侵された。なんだか調子が悪いな、病院行こうかな、なんて軽く考えていたらあれよあれよという間に入院となっていた。その進行速度は凄まじく気が付けば俺の身体はベッドから起き上がれないほどに弱り切っていた。
そんな俺に対して両親は手を尽くしてくれた。しかし、何度手術をし身体にメスを入れてもその都度転移しまた手術。そんないたちごっこを繰り返していた。
限界だった。最後の方は痛い、苦しい、死にたい、いやだ死にたくない。朦朧とした意識の中でそんなことを延々と考えていたと思う。
自分の身体のことは自分が一番よくわかる。それは真実だとなんとなく思う。その時俺は次意識を手放せばもう帰ってこれないとハッキリとわかった。
俺が最後にみた光景は俺の手を握りながら大粒の涙をボロボロとこぼし俺の名前を呼ぶ母さんと何かを耐えるように唇を噛み締める父さんの姿だった。
最後の光景のはずだったんだけどなぁ。
「なんでやねん!」
川のせせらぎに写る自分の姿に思わず突っ込む。関西弁が出てしまうほどに動揺している自分がいる。
「えー……うそーん」
下から上に向かって突き出た二本の牙、派手に潰れた豚っ鼻、緑の肌につるんとした頭部。醜い、というかどこか愛嬌のある化け物の顔がそこに映っていた。
「オークって……マジかぁ」
俺はオークなっていた。