表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TraumTourist-夢を渡るもの-   作者: 舘 伝斗
第1章剣と魔法の世界-ザースト-
14/17

1-11 再会と邂逅

そろそろ一章終わる・・・かも。

 ドゴゴゴン


 セダンの町を視界に収めた僕たち三人の耳に何かを破壊する音が迫ってくる。


「なんだ?」


 音に気づいた僕たちは足を止め僅かに砂煙が上がり始めたセダンの町を凝視する。


 ドゴンッ、ガッガッ、ズザザザァ


「人じゃっ!」


 民家の壁を突き破り町の外へ投げ出され地面を滑って向かってきたものの正体をロットが見分ける。


「人!?あの飛び方、結構やばくないか?」


 僕のその言葉で僕たちは飛んできた人影へ駆け出す。


「大丈夫かっ!女!?おい、生きてるか!」


 傷だらけの女の子はどこか懐かしさと安心感を僕の心に与える。


「お嬢様、回復できますか?」


「うむ、やってみよう。」


 容態を一通り確認したカトラはロットに女の子の回復を頼む。


 この世界(ザースト)の魔法は全て火、水、風、土から成るが、夢を渡るもの(ツーリスト)は別の世界の魔法を使用することができる。それは属性が火、水、風、土以外の物もだ。

 けれどこれにはいくつか制約があり、まず第一にその世界にあった魔法の発動プロセスを踏まなければ発動しない。

 簡単に言うと同じ魔法でも世界によって魔法の詠唱句が異なる。

 この世界(ザースト)では、

 我願うは◯◯。で属性を、

 ◯◯は△△。で魔法の特性を、

 その後に一節、あるいは二節で魔法の威力や形を決めなければならない。


「我願うは光

 光は彼の者を救う癒しとなり

 生命を脅かす傷を癒せ

 "活性光の宴(リヴァイブ)"」


 今のロットの詠唱では一節目で属性を光に、二節目で特性を癒しに、三節目で効果の発現順位を重篤度の高いものを優先としている。


 第二に魔法の使用者は己の発動する魔法の細かい構造まで思い描かなければならない。

 具体的には、この世界(ザースト)の魔法は詠唱すればその時に別のことを考えていても詠唱通りの事象が発現するが、別の世界の魔法の場合、この世界(ザースト)に本来無い詠唱句を用いるため詠唱中もその魔法の発動後の光景を細かく想像しなければならない。


 ロットから放たれた淡い光は女の子の体を包み込み損傷した細胞を内から順に活性化させながら体全体の損傷の修復を行っていく。

 ロットの想像では光=活性化なのだろう。

 もし僕が回復魔法を使うとしたら属性は恐らく水になる。

 これは僕が回復=回復薬=水、というイメージを強く持っているからだ。

 カトラはまた別の属性になる可能性がある。


「はぁっ、がはっ、ごほっ!」


 体を包む光が弱まった頃合いに女の子は一つ大きく息を吸い込みむせる。


「病み上がりのところ申し訳ないのですが貴女のような可憐な方があのような傷を負うなど、何があったかお伺いしても?」


 女の子がストライクゾーンに入ったのだろうカトラは聞いたことの無いレベルで丁寧に語りかける。


「えっ?こほっ、あなたたち、は?っ!」


 女の子が自分の体が回復していることに気づき、漸く周りを見渡す余裕が出てきたのかカトラ、ロットの順に顔を見ていき僕の顔を見た瞬間、その顔が驚愕に染まりあがる。


「どうかしました?」


 女の子には既にカトラの声、いや、周りの音は聞こえていないのであろう感じで僕の顔を凝視している。


「あの、」


 流石に居心地が悪くなってきた僕が口を開くとほぼ同時に女の子も口を開く。


「わたる?」


「えっ?」


 その女の子をよく見ると先程のすごい衝撃で髪はボサボサではあるがその肩に掛かる長さの黒髪、少し垂れ目がちな、それでいてどこか意思の強さを感じさせる瞳、そして何より女の子の纏う雰囲気が僕にとある少女を思い出させる。


「なんだ?この女の子は(わたる)の知り合いか?」


「いや、そんなはず無いじゃろう。(わたる)この世界(ザースト)が始めての夢の世界(トーラム)なのじゃから。」


「いえ、お嬢様は知らないと思いますが(わたる)この世界(ザースト)に来る前も夢の世界(トーラム)へ行った経験があります。」


「そんな馬鹿な!グレンが(わたる)夢の世界(トーラム)初心者じゃと。」


「えぇ、そこは(わたる)のユニークスキル、密航の効果、でしょうね。」


 女の子の言葉に僕がフリーズしている耳にはカトラとロットの声だけが響いた。


「あれ?えっ?人違い?でもでも、そっちの二人は(わたる)って・・・」


「いや、そんなバカな。彼女のはずがない。」


 目の前の女の子のおろおろした姿や表情が僕の知ってる女の子と被るが僕はそんなはず無いと否定する。


(わたる)?」


 そんな僕の様子に不信感を抱いたロットが顔を覗き込んでくる。


「しっかりしろ!」


 ゴヅンッ


「いだっ!」


 カトラの容赦ない拳が僕の脳天を激しく刺激する。


(わたる)。女性を待たせるんじゃない。それに、こんなに可憐な女性を忘れるとは何事だ!」


 カトラのおかしな怒りに僕の心は漸く現実を受け止める決心がつく。


「・・・ゆいか。なのか?」


 僕の言葉に女の子は感極まったような表情になる。


「うんっ、うん!そうだよっ。(わたる)、会いたかった!」


「うぇっ!?」


「ほほぉ!」


「むっ!」


 結華(ゆいか)の突然の抱擁に僕はテンパり、ロットは興味深げに、カトラは少し眉を潜める。


「ゆ、結華(ゆいか)、さん!?」


(わたる)、よかった。地球(・・)から突然いなくなっちゃうから。」


 結華(ゆいか)の言葉に僕はようやくあることに気がつく。


「えっ!?ちょっとまって。地球(・・)って、もしかして結華(ゆいか)夢を渡るもの(ツーリスト)だったの!?」


「うん。というか、(わたる)夢を渡るもの(ツーリスト)になったのも私のせいかも。」


「えっ?それはどういう・・・」


(わたる)、ちょっといいか?」


 僕と結華(ゆいか)の会話に何かに気づいたカトラが遮り、僕の耳元で囁く。


「どうした?」


「いや、彼女は夢を渡るもの(ツーリスト)だ。」


「それは聞いてたよ。」


「その彼女がさっきまでどんな状態だった?」


「さっき?・・・ボロボロだったな。」


「そうだ。しかも、ついさっき吹っ飛んできたということは、彼女の敵がこの町にいる、ということだ。」


 カトラの発言に僕はようやく気づく。


「まさか夢の誘い(アインレイダン)が?」


「いや、俺の考えは逆だ。」


 そこでカトラの言葉の切れが悪くなる。


「カトラ、お前もしかして、結華(ゆいか)を疑ってんのか?」


 カトラの考えに気づき僕は僅かに殺気を出してしまう。


(わたる)!?」


「どうしたのっ?」


 突然の殺気にガールズトークをしていたロットと結華(ゆいか)が反応する。

 ・・・そうか。戦闘力が300近くなると僅かな殺気でも周りへの影響が大きいのか。失敗したな。


「なんでもない。少し勘違いしただけだ。カトラ少し離れよう。・・・カトラ?」


 僕はこれ以上二人に不信感を抱かれないよう、少し離れて続きを話そうとカトラを促すが、カトラは町の方を見て動こうとしない。


「カト、」


(わたる)っ!お嬢様っ!構えろっ!」


 その尋常じゃない態度に僕とロットだけでなく、結華(ゆいか)も立ち上がり町の方向を睨む。


「まさかさっき(・・・)殺気(・・)に!?」


「「「・・・。」」」


 結華(ゆいか)の言葉に張り詰めた空気が僅かに弛緩する。

 その空気を察した結華(ゆいか)は近づく敵意を余所にあたふたと慌てる。


「い、今のはそんなあれじゃないわよっ!」


「・・・くるぞ。」


 カトラはそんな結華(ゆいか)の様子を意識の外に追い出し腰の剣を抜く。

 僕もそれにならって石化の影響で機能しなくなった鍛冶屋から頂いた愛剣を構え、ロットは杖を、結華(ゆいか)は珍しい二丁の拳銃を構える。


「あれ?それこの世界にあったっけ?」


「TPで買ったに決まってるでしょ?」


「無駄話はそこまでだ。そろそろ向さんも限界のようだ。」


 結華(ゆいか)が武器を用意するのを待っていたかのように、町から金髪を逆立てたつり目の若い男と、ソフトモヒカンで筋肉質の壮年の男性が歩いてくる。


「よりにもよって相手は憤怒のウォートと傲慢のアロガンか。」


「知ってるのか?」


「あいつらは夢の誘い(アインレイダン)の第四位と第五位よ。私のさっきの怪我は金髪の方にやられたものよ。」


 カトラの言葉を受けた僕の疑問に答えたのは結華(ゆいか)だった。


(わたる)。あいつらは二人供俺や(わたる)と同じくらいの戦闘力の持ち主だ。いいか、()お前(・・)は絶対に負けられないと思え。」


 カトラの忠告に僕は頷き結華(ゆいか)を見る。


「カトラ、金髪の方は僕と結華(ゆいか)で何とかするから隣の筋肉は任せた。」


「いいだろう。ならやり易いように分断してやるから・・・死ぬなよ(・・・・)。」


 最後に頷き合うとカトラは詠唱を始める。


「我願うは空

 この世に漂う空を割き」


 カトラの詠唱に気づいた金髪の男、アロガンが少しの溜め(・・)の後、予想外の速度でカトラに襲いかかる。


 フォッ、ギャリッ


「っ!中々良い反応してるじゃねぇか。これは仲間か?結華(ゆいか)ちゃぁん?」


 アロガンも僕が間に割って入ることが予想外だったのか、目を見開き結華(ゆいか)に話しかける。


「我意に沿いて型を成せ」


「悪いけど、ここからは2対1でいかせてもらう。」


「はっ、ウォートが手を出さないとでも思ってんのか?」


「"分断異界(ジ・アナザー)"」


 アロガンの言葉と同時にカトラの魔法が発動する。


 キィィィン


 黒板を引っ掻いたような甲高い音が僅かに響き、次の瞬間には、さっきまで見えていたセダンの町やカトラ、ロット、ソフトモヒカンで筋肉質の壮年、ウォートまでもが消え、広い荒野に僕と結華(ゆいか)とアロガンの三人だけとなっていた。


「あぁ?なんだこりゃ?空間魔法だと?あの朱服の野郎の仕業か。」


「その通り。悪いけど貴方にはここでこの世界(ザースト)からリタイアしてもらう。」


「はっ、上等だ。雑魚は何匹群れても雑魚なんだってことを教えてやるよ!」


 カトラの魔法により、夢の誘い(アインレイダン)第五位、傲慢のアロガンVS(わたる)結華(ゆいか)

 夢の誘い(アインレイダン)第四位、憤怒のウォートVSカトラ、ロットのフィールドが整う。











 戌亥(いぬい)(わたる) 18歳  

 称号:密航者・借金を背負う者・夢を渡る者・死を見た者・チャラ男の玩具・脱兎・耐える者・獣に認められし者・サバイバー・野生児・復讐を胸に刻む者・到達者

 Rank1 0RP 3,205円 38,860TP

「ザースト:セダン」

 戦闘力  279

 生活力  32

 学習能力 7

 魔力   86

 夢力   1


 固有:密航


 技:首狩り・投擲・乱切り・一閃・属性剣・天地断


 技能:頑丈・逃げ足・自然回復(超)・簡易道具作成・隠形・気配感知・威圧・流水・危機感知・身体制御・精神制御


 魔法:2級水魔法・2級土魔法・3級召喚魔法(獣)・4級魔法同時使用(2)




 ザースト滞在時間1037日目


作品の感想・誤字脱字等の報告お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ