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TraumTourist-夢を渡るもの-   作者: 舘 伝斗
第1章剣と魔法の世界-ザースト-
12/17

1-9 3年

「なぁ、そろそろ変わっただろ?」


 とある小さな町の酒場で気だるそうな雰囲気の男が声をあげる。

 男は金髪を周りを威嚇するように逆立て、椅子に座りつつ机に足をあげるなど態度の大きさが出ていた。


「・・・いや、まだだな。まだ文化、技術の二段階以上の進歩だ。」


 気だるそうな男の声に、壁際に立ち腕を組んで目を閉じていた筋肉質のソフトモヒカンの男が顔に掛けた不似合いな眼鏡を操作し、首を振る。


「かぁー、一体いつまでこんな何もない寂れた世界で時間を潰さないといけねぇんだよ。こういうのは新入りのインドレンズや時間に鈍いデプレッションにやらせりゃいいんだよ。」


「そう言うな。これもジャフレイキット様のご指示だ。それに何も仕事がないわけではあるまい?」


「はいはい、わかってますよーっと。よいしょっと。」


 気だるそうな男は椅子から跳ね起き酒場の外へと向かっていく。


「おい、アロガン。何処に行く?」


 筋肉質の男は急に外へ向かって歩き出した男に呼び掛ける。


「あー?便所だよ。なんなら一緒に行くか?」


「いや、遠慮しよう。・・・あまり暴れるなよ(・・・・・・・・)?」


 筋肉質の男の声にアロガンは答えずポケットに手を入れて歩いていく。


 ズガァンッ、ゴガッ、ズズッ


 フッ


「ウォート様、ご報告が。」


 アロガンが酒場から出て、外が騒がしくなった辺りで筋肉質の男の横にどこからともなく一人の男とも女とも判断できない声の人影が現れる。


「フリーグか。なんだ?」


 ウォートはいきなり現れた人影にも驚くことなく、一瞥もくれることなく話を促す。


「はい、ウィダーツェンの街に集まっていた者達が再び動きを見せ始めました。如何いたしますか?」


「そうだな。規模は10人前後、だったか?」


「いえ、ここ数日で数人増えています。それと、何人か手練れが混じっているようで私の0部隊では歯が立たないかと。」


「そうか。では、」


「俺が行こう。」


 そこで二人の話に第三の声が入り込む。



「っ!?」


 その声、アロガンの声にウォートは驚かなかったがフリーグは動揺を隠せない。


(いくら何でもおかしい。目の前の男(ウォート)の索敵能力が高いことはまだいいがこの男(アロガン)の隠形が私以上だと!?夢の誘い(アインレイダン)の幹部は化け物揃いだなっ。)


 その動揺を感じ取ったのだろうアロガンはフリーグを一瞥し、ウォートに視線だけでなく意識も向ける。


(私を前にしても意識を向ける必要もないというのか。くそっ。)


「アロガン。お前というやつは・・・まぁいい。なら、制圧はまかせる。暴れてこい。」


 その一幕を見ていたウォートはアロガンの性格を思い出して何を言っても効果が無いことを悟る。


「ウィダーツェンだったよな?ここから徒歩で8日ってところか。なら1週間で戻ってくるから世界の要求(オーダー)が変化しても手を出すなよ?」


 アロガンの言葉に再びフリーグが動揺する。

 アロガンが言った通りこの町からウィダーツェンの街までは馬車を牽く馬まで石化している今では片道(・・)8日程がかかる。

 それをこの男は7日で往復し、尚且つ自分より手練れの混じった敵を一掃すると言ったのだ。

 その言葉に0番隊のリーダーとしてではなく、心に秘めた計画があるフリーグとしては納得できないものがあった。


「じゃあ速攻終わらせてくるぜ。」


 そういうとアロガンは地面に屈み、クラウチングスタートの姿勢をとる。


 ミキッ


 アロガンが力を込めると足の筋肉が倍以上に膨れ上がる。


「おい、それは外で、」


 バコォッ

 ボッ、ゴゴゴッ


 ウォートの言葉が終わる前にアロガンは足に溜めた力を解放する。


 バキバキッ、ズゥゥン


 力の余波は酒場の半分を吹き飛ばし、尚も周囲を巻き込みながら地割れとなりアロガンの向かった先とは真逆へと進んでいく。


「まったく、だから外でやれと言ったのに。」


 アロガンの力の反動を受け半分が消滅した酒場の壁に寄りかかりながらウォートはため息をつく。


 フリーグは目の前で起きたことが理解できずに硬直する。

 まだ力の反動で酒場が吹き飛んだことは理解できた。

 何しろ夢の誘い(アインレイダン)の幹部は皆この程度片手間で出来るほどの実力を秘めている。


 だが酒場から一直線に延びる地割れ(・・・)を見て理解が遅れる。


「5kmってところか。アロガンの奴、相当抑圧されていたとみえる。」


(5kmだと!?この地割れは5kmも続いていると言うのかっ!あいつのポテンシャルで夢の誘い(アインレイダン)の幹部8人の内5番目だと?)


 フリーグの方を見ることなくウォートは酒場を出ていこうとする。


「っ、ウォート様、どちらへ?」


「どちらっていうか、既にここは屋外になってしまったから向かいの元村長邸に向かうだけだ。報告ご苦労だった。」


 そういうとウォートは道を挟んで向かいにあるこの町では最大の家へと向かっていく。


夢の誘い(アインレイダン)第4位憤怒のウォートか。全くダインさんは本当にあんな化け物複数を相手に一人で対等にやりあったと言うのか。」


 その場に一人残されたフリーグは誰もいなくなった酒場の跡地で一人呟く。

 そして目的のため、0番隊ではない(・・・・)仲間との合流地点へと向かっていく。




 全ては夢の誘い(アインレイダン)を潰すために。











「はっ、ふっ!」


 僕は汗だくになりながら目の前の男に愛剣で斬りかかる。


「あまいっ!まだまだ隙が多いぞ。ほらっそこだ!」


 だが男はスルリと避ける。

 避けられた事で体勢が崩れた。

 体勢の崩れた所に男の剣が迫る。


「っ!?っんのっ!」


 僕は"身体制御(マリオネット)"を使い強制的に体勢を整えカウンターの一撃を放つ。


「っくっ。」


 その一撃は男の無防備な腹に吸い込まれるように打ち据えられる。


「そこまでじゃ!」


 その一撃で勝負がつき、少女の声により僕も男も緊張を解く。


「はぁ、はぁ、大丈夫か?カトラ。」


 僕の声に膝をついている男、カトラは顔を上げる。


「はっ、剣の腹で殴られただけだ。何ともないね。それにしても(わたる)の"身体制御(ボディコントロール)"は反則だな。ユニークスキルでもないのに。」


「まぁユニークスキルで無いといっても習得難易度は最難度と言っても良いがの。」


「はぁ、それにしても遂に(わたる)との戦績が拮抗し始めたな。俺も成長してるはずなのに自信無くすぜ。」


 ここ1年の毎朝の日課であるカトラとの試合は始めの内は僕の全敗だったが、"身体制御(ボディコントロール)"を得てからは勝ったり負けたりを繰り返していた。


「そりゃあ僕だってずっと負けっぱなしじゃ負け癖が付くかもしれないしな。勝つためには努力するよ。」


「全く、その心意気と努力には恐れ入るの。」


 僕の言葉にロットはヤレヤレと肩をすくめてみせる。


「そういえばそろそろ次の街なんだっけ?」


「あぁ、地図によるとあと10日もしない内にウィダーツェンっていう街だ。」


「うへぇ、後10日も掛かるのか。」


 カトラの情報に僕は未だに慣れない野宿を思い浮かべる。


「安心しろ。小さな町はここから1日ほどの場所にあるらしい。上手くいけば今日は宿だ。」


「おっ!待ってました。まぁ飯は自前だけどな。ベットに眠れるのはありがたい。ダメージ無いんだろ?すぐ出よう。」




 ザースト出身の全生物に対して何者かの力が効果を及ぼしてから約3年(わたる)たちは漸くこの異変の元凶と遭遇することになる。











 戌亥(いぬい)(わたる) 18歳  

 称号:密航者・借金を背負う者・夢を渡る者・死を見たも者・チャラ男の玩具・脱兎・耐える者・獣に認められし者・サバイバー・野生児・復讐を胸に刻む者・到達者

 Rank1 0RP 3,205円 38,860TP

「ザースト:街道」

 戦闘力  77(+202)

 生活力  14(+18)

 学習能力 5(+2)

 魔力   25(+61)

 夢力   1


 固有:密航


 技:首狩り・投擲・乱切り・一閃・属性剣・天地断


 技能:頑丈・逃げ足・自然回復(超)・簡易道具作成・隠形・気配感知・威圧・流水・危機感知・身体制御・精神制御


 魔法:2級水魔法・2級土魔法・3級召喚魔法(獣)・4級魔法同時使用(2)




 ザースト滞在時間1037日目

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