お屋敷からの旅立ち
まったりめ
目覚めてから数ヶ月
毎日が新しいことだらけだった。
朝起きてから食事マナーの勉強、世界の歴史や今の各国についての授業、魔法と体術の授業。
どれも初めてのことで楽しいし、トリーさんも優しい、旦那様は・・・面白い人って感じ?
ご飯を作る専用人がいてシェフって名前だったし、トリーさん以外にもメイドさんや執事さんがいた。
「ミナ様、魔法をご使用になられる時は危険ですのでわたくしめかトリーがいる時にお申し付けください。お一人ですと万が一がございますので・・・。」
「あ、ごめんなさい。セルバンさん」
セルバンさんは執事の中で一番偉い人で白いお髭と髪のおじさんとおじいさんの中間みたいな人だった。
最初に紹介された時は怖い人かと思ったけれどトリーさんをたまに叱ったりもしていたからひょっとするとトリーさんよりも偉いのかもしれない。
そう思いながら魔法陣を描くための準備に入る。
「ミナ様が魔法陣をお書きになるのを見ると旦那様が驚かれていたのも納得できますね。」
「全くです。このような素晴らしい魔法陣を見てるだけでもお嬢様が旦那様よりも優れているとわたくしは断言いたします。」
どこからかやってきていたトリーさんがセルバンさんと一緒に見学をしていた。
「で、でも旦那様が教えて下さったから魔法が使えるようになったわけだし・・・、その・・・」
「お嬢様は謙虚でいらっしゃいますね。」
僕は旦那様から教わる魔法の授業が一番楽しかった。
というのも僕は魔法の授業で褒められることが多かったし、もっと褒めてもらいたくて魔法の授業は一番がんばった。
教わった魔法の中で僕が一番上手に使える魔法は自分の血液を媒体として使う『血魔法』
これは吸血鬼でも滅多に使える人がいないらしく覚えた時にすっごく褒めてもらえた。
自分の血を使うから自分に傷をつけないといけないって思って最初は怖かったけれど
つけておくだけで自分の血を毎日少量ずつ自動で貯めてくれる指輪を旦那様が作って下さったから使い勝手がすごく良くなった。
右手の人差し指にはめてあるから魔法陣を描く時に血魔法で魔法陣を描くこともできる。(えっへん)
ただ、調子に乗った僕は魔法陣を使う練習をよくするようになった。
今日も魔法陣を使う魔法の練習ばかりした。
※※※※※※
「そろそろミナも魔法はかなりのものになったし屋敷の外に出す頃かな?」
「いいえ旦那様、お嬢様はまだ頭に殻がついたヒヨコのようなものかと、魔法のほうはよろしいかと思いますがまだ不安が残ります・・・」
「んー、でももうあまり時間はなさそうなんだよね・・・結界の事もあるしね」
「まだお時間があると思っていたのですが・・・ハァ・・・」
「おや、トリーはミナを手放したくないって気持ちが全開だねぇ」
「当然です。わたくしはお嬢様と旦那様でしたら迷わずお嬢様をとります。」
「それはそれで私が泣いちゃうよ・・・」
「ですが、お時間が無いようでしたら仕方ありません。今日の晩にお話をいたしましょう。」
「出発は明日か明後日ってところだろうねぇ」
その晩、食事が終わると旦那様とトリーが真面目な顔で話を切り出してきた。
「というわけでお嬢様には見聞を広める旅に出ていただきます。」
「え?」
「ミナも魔法は私並になったし、ちょうど良くこの屋敷の結界を外と繋げられる時期がきそうでね。」
「どういうことですか?」
旦那様からの話ではこのお屋敷は外からの襲撃を防ぐために異空間を作って森とつながっているらしい。
だから、外とつながる時期はまちまちで今回のタイミングを逃すと次は3年後なんだって。
「だから、ミナには外で楽しんでくるといいよ」
「え、でも・・・まだ僕弱いし・・・まだ怖いです。」
「大丈夫です、お嬢様。お嬢様お一人で行かせるわけにはまいりません。わたくしもお供いたします。」
「え、なにそれトリー私聞いてないんだk「ト:今決めました。」」
旦那様が慌ててる。トリーさんが僕についてくるのは嬉しいけれどいいのかな・・・
と、とにかく僕はトリーさんと一緒に旅に出ることになった。
だ、大丈夫だよね?怖いけど・・・
「お嬢様、旅の支度の方はわたくしが全ていたしておりますので明日の朝出発しましょう。」
「旦那様は一緒ではないのですか?」
「あー、行きたいところなんだけどまだここでやらないといけないことがあるからお土産を待ってるよ。」
「わかりました。旅先で良いものを探しておきますね。」
「では、明日に備えてお嬢様はお早めにお休みください。」
「はい。トリーさん。準備お願いしますね。」
次の日の為に早めに寝ようと思ったけれどドキドキしてうまく寝付けなかった。
※※※※※※
「では、しばらくお暇をいただきますね。」
「ミナのことをヨロシクね。くれぐれも変な虫が寄り付かないように気をつけt「ト:お任せください旦那様であろうと近づけさせません。」」
「そこまではしなくていいかなぁ・・・」
「旦那様いってきます。お土産楽しみにしていてください。」
旦那様セルバンさんがお屋敷のメイドさんと一緒に門までお見送りをしてくれた。
「ミナ様、どうかお体にお気をつけくださいませ。」
「うん、セルバンさんにもお土産買ってくるね。」
「はい、楽しみにいたします。」
セルバンさんにもお土産を用意する約束をして僕はお屋敷の結界からトリーさんと手をつないで出た。
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「はぁ、結局ミナには旦那様としか呼んでもらえなかったなぁ。」
「戻ってきた時のお楽しみというこで良いのではないですか?」
「帰ってくるのは何年後になるのかなぁ・・・」
「それまでにこちらの準備も終えないといけませんが早くて3年・・・と言ったところではないでしょうか。」
「終わるかなぁ・・・、いや終わらせないとね・・・」
そう言ってナビはセルバンと共に屋敷に戻っていく・・・
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結界から外に出るとそこは予想通りの森・・・だけど目の前には大きな熊が二本足で立っていた。
両腕は大きく広げていてその先にある爪には血が付いていた。その足元に仕留めたのであろうイノシシらしきものが倒れている。
「はぁ、いきなりですか。全く・・・」
「ト、トリーさんどどどうしよう。」
熊は今にも襲ってきそうで大きな口からはヨダレがダラリと垂れている。
こんなのにいきなり会うなんて外の世界にトラウマができそう・・・
しかもこんなに近いと魔法を使おうにも発動させる前に今にも襲ってきそうで不用意に動けない。
「お嬢様はお下がりください。追い払いますので・・・」
「ど、どうやって?」
なんだかトリーさんは余裕がありそう・・・この熊トリーさんの倍以上あるんだけどぉ・・・
僕が泣きそうな顔になっているとトリーさんは僕と熊の間に立って熊を見上げた。
な、なんだかトリーさんの周りが歪んで見える。熊よりもトリーさんのほうがこわくなってきたんだけど・・・
「『失せなさい!!』」
トリーさんが大きな声で熊にそう言うと、熊はビクンッとした後に踵を返して四つ足でドタドタと逃げ出していった。
なんだか他の動物も逃げ出しているのか、周りから鳥や鹿の警戒音と足音で森全体が賑やかだ。
「ト、トリーさん?」
僕が知ってるトリーさんだよね?違う人じゃないよね?
おっかなびっくりに声をかけるとこちらを振り向いたトリーさんは僕が知ってるとリーさんになっていた。
「森は恐ろしいですね。早く抜けて街まで行きましょう。」
「は、はい。」
「では、お嬢様少し失礼します。」
そういうとトリーさんは僕を抱き上げて荷物を拾うとすごい勢いで走り出した。
「っっっ!」
こわくて動けない、周りの景色がすごい速度が切り替わる。風が体にまとわりつく。
それなのに僕にはほとんど振動は無かった。コレどうやってるんだろう、飛んでるのだろうか。
でも魔法は使ってないみたいだけdって足がすごい勢いで動いてる!
え、じゃあコレ単純に早く走ってるだけなの!
喋ろうにも風がすごい勢いで僕をトリーさんに押し付けるからただ耐えるしかない。
あ、ダメだ意識が・・・
「お嬢さま、大丈夫ですか?・・・」
・・・・・・・・
ひとまず出発!