天才作家の孫
俺の名前はダザイ。
爺ちゃんは歴史の教科書に載るくらいすげえ人だ。
だから俺はすげえ期待をみんなから受けて育ったわけだが……
その俺はと言うと、その爺ちゃんの血がほんとに流れてんのかってくらい、ショボイ。
爺ちゃんは文豪で、「人間やめろ」がベストセラーになった。
そんで、俺も一応作家を目指しているわけだが、最近は親に、「お前なんか、人間やめちまえ!」と言われる始末だ。
最近ネット上で書いた小説、「生まれ変わったらチート能力を授かってました。俺って最強?」が、全くの鳴かず飛ばず。
挙句、感想欄に、「これって、パクリですよね?」と言われる始末だ。
だが、俺の爺ちゃんは間違いなく文豪で、俺には「作家界のチート遺伝子」が組み込まれているハズなのだ。
それさえ開花すれば……
俺は今日も仲間と共に、合コンに来ていた。
3対3で、新宿のとあるイタリアンの洒落た店だ。
「ダザイ君って、結構お金持ちなの?」
真ん中のちょっとかわいい女の子が俺に話しかけてきた。
自己紹介で、ダザイ○○の孫です、とふんだんにネームバリューを使わせてもらった。
毎回その効力は絶大なのだが……
「そんなことよりさ、俺の小説読んでよ」
そう言ってスマホでサイトにログインし、渡す。
「えー、活字苦手なんだけどなぁ」
と苦笑してそれを受け取る。
そして2分後、
「あはは、まあいいや」
と返される。
「なんだよ……」
俺の酔いは一瞬で覚めた。
2次会はとっとと帰って来た。
一体自分の小説の何がいけないのか。
冒頭部分だけでも読んでほしい。
ネット上の評価は低いが、生チーは自信作だ。
内容には自信がある。
すると、メールが入った。
俺は読んでみる。
「もう小説家なんてあきらめろよ」
友達からだ。
「なんでだよ」
と返事をする。
「お前の作品、読んだよ。生まれたらってやつ。はっきり言って、才能ねえって」
俺はショックを受けた。
小説家を目指して3年目、作った作品の数は50を超える。
そして、自分の最高の作品をけなされたのだ。
俺はアパートのベランダで煙草をふかしていた。
頬を涙が伝った。
「俺、もう嫌になっちゃったなあ……」
涙はとめどなく流れ、口の中に入る。
「しょっぺえなあ……」
終わり
なんかワロタ