プロローグ
「っはぁー……」
携帯を投げ出し、ベッドに倒れ込む。
「疲れたぁー……」
凝った肩を軽くほぐす。
冷蔵庫から冷えたビールを取り出すと、俺はプルタブを開けた。プシュ、と小気味の良い音がする。
「ったく、何だよあの客…………」
ビールを飲みながら愚痴るのが、数少ない俺の楽しみだった。
俺は仁科浩介、32歳。職業は、フリーターだ。
大学卒業後入社した会社は、ブラックだった。理不尽に耐えながら七年間ひたすら働いたが、同僚が過労で倒れたのをきっかけに退職。無職となった。
そのまま、コンビニや居酒屋のバイトをして生計を立てている。
「っぷはぁー」
ビールを飲み干し、二缶目を開ける。
プシュ、と小気味の良い音がした。
「ん……あ……?」
気がつけば、朝だった。
眠い目を擦り、顔を洗う。
素早く着替えると、俺はバイト先のコンビニへと歩き出した。
「お会計は五百六十円になりますー」
にこり、と営業スマイルで笑う。
「ありがとうございましたー」
客の背中を見送ると、俺は店内を見回した。
平日の午前十時。店内には、客はあまりいない。
と、客の来店を告げるベルが鳴る。
「いらっしゃいませー」
笑顔でその客を迎えた俺は、すぐにその笑顔を凍らせた。
パァン、と銃声が響く。
覆面を被った男は、銃を持ったまま叫んだ。
「金を出せ!!!」
『20○○年、五月十日。
織部町にて、コンビニ強盗が発生。
容疑者は、未だ逃亡中。
現金四百万円が盗まれたもよう。
被害者は、コンビニ店員の仁科浩介氏、三十一才。
同じくコンビニ店員の、××さん………………』
薄れゆく意識の中、俺をここに繋ぎ止めているのは腹部の痛みだけだった。
それすらも、麻痺してきている。
「かっ、は…………」
血に濡れた腹部を押さえ、俺は呻いた。
意識が、遠のいていく。
俺は、死んだ。
死因は、腹部の出血多量。
バイト先で強盗に遭遇し、銃で撃たれて死亡。
その……はず、だった。




