キャンベル子爵家の秘密
とある放課後。
私とロアナとワトソンは学園内に芝生の上に座り、お菓子を食していた。
「第一回、世界征服会議。始めるよー」
「まだ諦めていなかったのね」
「カナデ先輩の助手になってから一か月ですからね。その話は流れたのかと思っていました」
「この私が諦める訳ないでしょう!」
「ですよねー」
呆れた目で見て来る二人を無視して、会議を進める。
「本日の議題は『実験場を確保するにはどうしたらいいのか』です」
「第一回なのに、色々な過程を飛ばしたわね」
「実験場の確保ということは、何を実験するのかは決めているんですか?」
「よくぞ聞いてくれた! 酪農関係の魔道具を作りたいから、協力者が欲しいんだよね」
「具体的な魔道具の種類は?」
ロアナが鋭い目で私を見る。さすがは私のマネージャー。儲け話には敏感だ。
「えっとね。乳搾りと厩舎の掃除とかが楽になる魔道具を予定しているよ。現場の声が大事だから、他にも増えるかもしれないけれど」
「資金はどうするんですか?」
「金ならある!」
あれから追加で作った商品が馬鹿みたいに高額で売れたからね。懐は温かい。ロアナ様、ありがとう!
「実費なんですか……? 三日月の会なら、個人研究資金給付されますよね」
「……えっとぉ」
思わず目が泳ぐ。
確かに貰ったけどね。貰ったけれど……。
「……お菓子を買うお金にでも充てたんですか?」
「そ、そんな馬鹿を見るような目で見なくてもいいじゃない! お菓子は重要だよ!? 人生の潤い!」
「高級品であるはずのお菓子が次から次へと出てくると思えば……学園に怒られますよ! 前から思っていましたけど、カナデ先輩はお菓子の食べ過ぎです。子ども何ですから、もっと野菜を食べて下さい!」
ワトソンは私を先輩として敬わずに、いつも叱りつけてくる。
お前は私のオカンか。
「ちゃ、ちゃんと実費にする理由はあるし! 個人研究資金を使って、三日月の会の生徒として魔道具開発しても、それは学園に権利を奪われちゃうんだよ!」
「でも、個人の利益は十分に還元されるようにされますよね……?」
「私の利益はお金や名誉じゃないもん。乳製品の市場と流通の拡大。そしてゆくゆくは、誰もが手軽にお菓子の材料を手に入れられること。だから他の魔道具職人でも作れて、民間に広がる物を作りたいの!」
「そう言えば、最初にそんな訳のわからないことを言っていましたね。実験場なら、家の領地をお貸ししますよ。荒れた土地なんで、カナデ先輩の試みも歓迎すると思います」
「本当! 実験場の問題は解決だね」
「流通というと……アイテムバックは製法を今後便宜を図ってもらいたい商会に売って、安く広く扱えるようにしたほうがいいわね。魔道具は自分のオリジナル魔法と変わりない。だから製作者は自分の製法を広めることは基本的にしないのだけど……カナデはいいの?」
「いいよ。後で設計の魔法式をロアナに渡すよ。……と言っても少しランクを落とした物にするけどね。その後は、ロアナの采配に丸投げするね」
「心得たわ。利益の内の何パーセントかは奪えるように交渉してくる」
こそこそと会議を進めていると、突然後ろから声をかけられる。私の後ろに音も立てず立つな!
「面白い話をしていますね。私も混ぜて下さいませんか、カナデ嬢」
後ろを振り向くと、穏やかな微笑みを携えたベルナさんと、しかめっ面の第五王子がいた。
「べ、ベルナさん……ロアナ、助けて!」
「俺もいるぞ!」
第五王子が何か言っているが、私は知らん。ベルナさんマジ怖い。
私は魔武会での一件からベルナさんが大の苦手だった。そそくさとロアナの後ろに隠れる。
「カナデが脅えています。用件があるなら手短にお願いしますわ」
「マティアス殿下はカナデ嬢に用があるようですが、私が用のあるのは貴女ですよ、ロアナ嬢」
「……そう。カナデ、少しこの人とお話してくるから……イイコで待っていてね?」
「い、イエッサー!」
笑顔の顔からにじみ出る殺気に、私は無意識に敬礼してしまった。ロアナが怒っている……?しかしベルナさんは、それに気づいた様子はない。親しい私だからこそ気づいたロアナの変化だと思う。
少し離れた茂みへと向かう二人を引きつった笑顔で送り出し、私は第五王子と向き直る。
「で、話って何?」
「カナデ……それが王族に対する態度か! 俺は――」
「『学園内で身分は行使しない』お忘れですか?」
魔武会で私が勝利した褒美である命令をチラつかせると、第五王子は悔しそうに唇を噛締める。
「ぐぅ……それは……」
「それで、ご用件は?」
「そ、ソイツはお前の何なんだ!」
「ぼぼぼ僕ですか!?」
第五王子たちの登場からずっと存在感を消そうとしていたワトソンが、うっかり目を付けられた。ここは先輩として守らねば!
「私の大事なワトソンに何かしたら許さないからね!」
「なっ……私の……大事な……?」
「そうだよ。これから人生を共に歩む、私の大切な人だよ!」
守るべき大切な助手なんだから!
「人生を……共に歩む、だと!?」
キッと第五王子がワトソンを睨みつける。ワトソンはライオンに目を付けられたウサギのようにブルブルと震えだす。
「ひぃうっ。あの……空の国の第五王子殿下……きっと、大きな誤解をしています。どうか……どうか、僕の話を――」
「ワトソンを虐めないで! 気に入らないのなら、私を倒してからにしなさい」
「カナデ先輩、余計なことしないでー!!」
ワトソンを後に庇い、第五王子の前に立ちふさがったら何故か怒られた。解せぬ。
「くっ……今日のところは許してやる」
「ふんっ。一昨日きやがれ!」
「終わった……僕の細々とした生活が……さらば、平穏……」
ワトソンは今にも泣きそうな顔だった。そんなに怖かったのか、可哀相に。
「ここに居たのか、カナデ」
微妙な雰囲気をぶち壊すかのように突如、表れたのは、肩ぐらいのオレンジ色の髪を一つに纏めた美少年だった。こんなキラキラした人に見覚えがないよ。
「あの……誰ですか?」
「何を言っているんだ、カナデ。いつも研究室で会っているだろう?」
「研究室……? もしかして、その髪の色……サルバ先輩!?」
「どう見てもそうだろう」
「「「ええー!?」」」
付き合いの浅いワトソンですら、驚きの表情で固まっている。そりゃいつもボサボサ髪に眼鏡だったけど……眼鏡外して髪を整えたら美少年ってさ。定番だよ?二次元ならね。でもさ、ここは現実。だからこそ――
「さ、サルバ先輩の裏切り者ーー!! 同じ平凡顔仲間だって信じてたのにぃぃぃいいいいい」
「顔に良いも悪いもあるのか?」
「ふざっけんな! あれか、美形の余裕かコンチクショー! どうせ私は平凡顔だよ!」
「カナデ先輩、ドウドウ……」
「馬顔って言いたいのか! どちらかって言うと丸いわ!」
「更に怒らせてしまった!」
「カナデ……そのお前は……かわ――」
「ロアナを見なかったか?」
第五王子が何か言おうとしたところへ、サルバ先輩が被せてきた。おい、コイツは一応王族だぞ?
「サルバ先輩、第五王子は一応王族なんだから、挨拶しなきゃだめだよ。いつも、ロアナに言われているでしょ。それと、ロアナはあっちの茂みにベルナさんと行ったよ」
「一応ってどういうこ――」
「そうか、ありがとう。 では失礼します、マティアス殿下」
またも平然と第五王子の言葉に被せてきたサルバ先輩は、迷わず茂みへと向かって行った。
「ロアナが怒りが心配だから行こう。死体が2つになるかもしれない」
「……物騒すぎるでしょう」
マイペースに茂みへと歩くサルバ先輩の後をついて行きながら、私はロアナとベルナさんのところへ向かった。
こそこそと茂みに隠れると、ロアナとベルナさんは静かに話し合いをしているようだった。
「何で、アンタまでいるのよ。第五王子」
「べ、別にいいだろう!」
「狭い」
「まあまあ、カナデ先輩」
「お前……随分とカナデに馴れ馴れしいな」
「誤解です!」
そうこうしている内にロアナとベルナさんのところにサルバ先輩が到着した。サルバ先輩の登場に訝しむ二人の表情が驚愕へと変わったことから、大方、私たちと同じような会話がされたのだろう。
しっかし、美形な高位貴族二人に囲まれる貧乏貴族令嬢(ただし守銭奴)か……。
「何だか、乙女ゲームみたい。ほら、そこの二人も参戦してきなよ。大丈夫。同じショタっ子でも属性が全然違うから、キャラ被りはしていないよ。さあ、行くんだ! 今すぐ行くんだ! 私に疑似乙女ゲースチルを見せておくれ!」
「また意味不明なことを……というか、僕はショタっ子じゃありませんよ!」
「俺はベルナにくれぐれも邪魔するなと言われているんだ。ここで飛び出したら、奴に怒られるだろう!」
くれぐれも邪魔をするな……?
ちょっと待って、ベルナさん何か良からぬことを考えているの?それにロアナが利用されるなんて事態は避けなきゃ。
ポケットから小石型の魔道具を取り出し、それをさりげなくロアナたちの場所へと投げる。
「カナデ先輩、石なんて投げてどうしたんですか?」
「あれは魔道具だよ、ワトソン君」
「どんな魔道具なんです?」
「小石型の盗聴器。やっぱりこういう基本的な魔道具は押さえておきたいと思って作った」
「はぁ!? 聞いたこともありませんし、小石型って怖すぎでしょう!」
そうかな? スパイ7つ道具みたいでカッコいいじゃん。
「カナデ。お前が巨万の富を得て国を造ろうとしていると噂されているのを知っているか?」
「国……? いや、そんな面倒で維持費のかかりそうなものいらないけど?」
変なことを言い出した第五王子を疑問に思いつつ、私はポケットから盗聴器の音を聞くための魔道具を取り出す。
『――サルバドール、ベルナール・オンズローとの話を先に済ませるから、待っていなさい。それで、いい加減貴族的な挨拶は止めて、本題にはいってくださる?』
『本題も何も、先程から言っているではないですか』
『わたしが美しいだとか素晴らしいだとか? 嘘も大概にしてくださいな』
『嘘ではありませんよ。結婚して下さいと遠回しに言っているのです。家を通じて結婚の打診をしているので、聡いロアナ嬢ならばお気づきかと思いましたが?』
盗聴器から聞こえてきた内容に驚き、思わず叫び声を上げそうになった。
「ぶぅぅううう。何言っているの、ベルナさん!? ロアナが……私の嫁が!」
「何、変なことを言っているんですか。まあ、ロアナ先輩は可愛いですし、人気ありますね」
ロアナは可愛いし、巨乳だし、料理が上手くて、面倒見がいい私の天使だからね。人気のあるのは当然だよ。
「ベルナも3男とはいえ、公爵子息だからな。女に苦労はしていないぞ」
「え!? 浮ついた奴には、家のロアナは渡せません!」
私の内心を知ってか知らずか、ロアナは心底嫌だという顔でベルナさんを睨みつける。
『……よくも私に直接そんなことが言えたわね。キャンベル家の領地を……周りの領地を治める貴族を使って苦境に陥れたくせに』
『何のことででしょう?』
ベルナさんは貴族特有の感情の見えない笑みを浮かべる。
『複数の領地がキャンベル領との取引を急に停止をしたわ。そして20年に1度の不作が起こり、キャンベル領は未曽有の危機に見舞われた。そこに、オンズロー公爵家からの婚姻を前提にした援助の申し入れ。都合が良過ぎるでしょう?』
『……』
『数少ない領民のこともあるし、家族の反対もあったけれど……わたしは身売りする覚悟だったわ』
『我がオンズロー公爵家に嫁ぐことが身売りなど、令嬢たちが聞いたら泣きますよ?』
『そんな趣味の悪い令嬢のことなど知らないわ。何にせよ、カナデのおかげでキャンベル家の負債も返せて、領民の生活も安定したから何も言うことはないわね』
『ご謙遜を……。カナデ嬢の作った魔道具を隣国やトップクラスの軍事力を持つ月の国の王族に売り、意図的に政治混乱を起こし、とんでもない額で同じ商品を自国の王族に売りつけた手腕は驚きましたよ。人間領一の魔法技術を誇る空の国では買わない訳にはいきませんからね。やはり、貴女は素晴らしい』
ちょっと待って、ロアナ。軽く政治の駆け引きしているとは思っていたけど、そこまでやっていたなんて知らないよ!? 国際問題の一歩手前じゃん!?
『とんでもない額だなんて、酷いわ。あれは適正価格よ』
言ったもん勝ちとばかりに、平然とロアナは適正価格だったと言い切る。いや、この間「馬鹿みたいな金額で売れた」とかゲスい顔で言っていたからね!
『私の意思は変わりませんよ、ロアナ嬢。私と結婚してください。我が家は公爵家です。貴族であるキャンベル子爵家に断られる要素はないと思いますが?』
跪いて求婚の言葉を言うベルナさん。だけどその言葉の裏には『公爵家に子爵家ごときが逆らうな』という意味が隠れているだろう。身分制が基本の国だからね。ロアナも断れないかもしれない。
そんな私の心配とは裏腹に、ロアナは挑発的な視線をベルナさんに送る。
『はっ、馬鹿にしないで下さる? 我がキャンベル家は過去に、我が儘な王族の姫の降嫁を断ったことがある一族ですわよ? その時に侯爵家から子爵家に落とされましたが……逆に言えば、王命に逆らって、その程度の罰で済んだのです。そんな家が、何の力も持たない訳がないでしょう。我がキャンベル家は、元は利益に目を移さずに王を補佐する立場だった貴族。それを邪魔に思った王にさえ潰せなかった、見えない繋がりを持つわ』
昔は凄かったとは聞いていたけれど、キャンベル家って昔は侯爵家だったんだ。しかも、特別な立ち位置の貴族だったぽいね。
『我がキャンベル家の家訓は『義を大切にせよ』ですわ。何代も前に婚姻し、未だに交流を続けている他国の王家や貴族がおります。そして同時に義を大切にしないものは、相手にしませんの。風見鶏のくせに、忠臣のフリをして愚かな継承争いに加担している一族になど、興味はありませんわ』
風見鶏のくせに、忠臣のフリをして愚かな継承争いに加担している一族ってどういうことだろう?貴族の事情は分からないや。
『……キャンベル子爵家はオンズロー公爵家に逆らうと?』
馬鹿にされたと思ったのか、怪訝な顔をするベルナさん。
いや、ロアナの怒りは当然だと思うよ。だって他の貴族を使って嫌がらせをして婚姻を迫るってさ……対等な立場じゃなくて、下の立場として婚姻を望んだわけでしょ? 酷いってレベルじゃないよね。貴族としては普通なのかもしれないけれど、好きな人の家にやることじゃないよ。
『わたしを通じて、大切な友人を愚かな王子に捧げようとしている者など知りませんわ。それに何よりわたしは、男として貴方が大嫌いですわ。婚姻を迫る時も策士面をしながら、狡猾に退路を塞ぐなんて男らしくないですわ。よほど自信がないのでしょうね。それに、無自覚に他人を見下すところも気に入らないですわ。それでいて下に見ている相手に無様に負けるのだからお笑いものよ。……何にせよ、わたしは報復することにしました。見えない繋がりを使い、オンズロー公爵家への取引の縮小を呼びかけ、尚且つオンズロー公爵家へ取引のある商人には、あの子の作った魔道具の販売も行いません。当然ですわよね、我がキャンベル家とあの子に喧嘩を売ったのですから。覚悟して下さいね、貴族としても男としてもダメダメなベルナール・オンズロー公爵子息』
ロアナさん、ハッキリザックリ抉り過ぎー!!まあ、ベルナさんに同情はしないけど。因果応報ってやつだよ。どんまい!
ちなみにベルナさんは土が付くことも躊躇わずに手を付け、絶望のポーズを取っている。
ベルナさんは顔も身分も頭もいいから、女の子に振られたことがなかったんじゃないかな。
『それで、話は終わったのか?』
今までの会話やベルナさんの惨状にも目をくれず、マイペースなサルバ先輩。この人のメンタルはやっぱりすごいわ。……見習いたくはないけど。
『ええ。それで、サルバドールわたしに話って何かしら』
対するロアナもベルナさんのことはもう視界に入れていないようだ。
『卒業パーティーのエスコート相手になって欲しい。今日、急にガラン伯爵家の者が来てな。エスコート相手がいないなら今すぐ探して来いと、身なりを整えられて放り出された』
え? サルバ先輩もロアナ狙いなの!? 私という助手がいるのに!?
……まあ、そういう状態になっても困るんだけどね。
卒業パーティーのエスコート相手と言ったら、婚約者や恋人が常だ。それを申し込んだということはつまり、そういうことである。……理解しているかな、サルバ先輩。
『それならば、わたし以外にもいるでしょう……』
『気難しい令嬢の世話をする時間があるなら、魔法陣の研究をする! だから、一番私を理解しているロアナに頼もうと思って探していた。カナデでは背丈の問題で、無理だからな。それに相手を見つけて来るまで、複数の魔法陣が組み込まれた眼鏡を返さないと言われた。だから、頼むロアナ』
サルバ先輩はやっぱりサルバ先輩だった!
誰かこの人にデリカシーを持てるようになる魔法陣を教えてあげて!
『はぁ……まあ、サルバドールが他人に迷惑をかけるのは忍びないわね。高級食材で手を打ちましょう』
ロアナも恋愛力皆無かよ!
少しは『この人……もしかして、わたしのことが好き?』とか顔赤らめようよ!
しかし思えば、ロアナが美形を見て顔を赤らめたところを見た事ないな……。本当に年頃の娘か?私が言える事じゃないかもしれないけどさ。
『よろしく頼む』
こうして、サルバ先輩の卒業パーティーのエスコート相手がロアナになった。しかも、振られたばかりのベルナさんの前で。いくら甘い雰囲気がないとはいえ、これはキツイ。鬼畜の所業である。だが、それがいい。
「いいぞ、もっとやれ!」と言っている私の隣で、第五王子は何故か脅えていた。
「告白とは……恐ろしいものなんだな……」
訳が分からないよ。
「あら、カナデどうしたの。今まで話を盗み聞きしていたのかしら?……悪い子ね」
上を向くとロアナがいた。先程の容赦のない鬼畜具合を思い出し、ゾクリと背筋が冷える。
ロアナの手を見ると、小石型魔道具が握られていた。……何故バレたし。
「ふぇ!? 盗み聞きなんてしていないよ。ねえ、ワトソン?」
「ひゃ、ひゃい!」
「本当に……?」
怖い、怖すぎだよ!
「じゃあ、私はワトソンの実家に行ってくるから。……後は頼んだよ、サルバ先輩!」
どうか、私たちのためにロアナのサンドバックになって!
亜空間から新作の魔道具『空飛ぶ絨毯』を取り出し、ワトソンを無理やり乗せて空へと飛び立つ。下から第五王子の叫びが聞こえるが、構っていられない。
ロアナ様の怒りが静まるまで、身を隠さないとね!
世界征服への道のりはまだまだ遠い。
ロアナの裏事情でした。
このブチギレロアナさんに精神的にボコボコにされたベルナを見て、マティアスは告白が中々出来ない男に成長します。
この時間軸では、絶賛、王太子位争いが行われています。
直接的にはカナデに関係はありませんが、ロアナを通じて狙われていました。失敗に終わりましたが。
次回は風の国にあるワトソンの実家へ行きます。
それでは次回をお待ちください。




