表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/120

その美しさは幻想

※下ネタ注意


もう一度言います。下ネタ注意です!!


そして主人公視点に戻ります。









 御爺ちゃんが死んだ。



 ちょうど1週間前のことだ。突然、御爺ちゃんが「明日、儂は死ぬから今日はパーティーじゃ!」と言い出した。それは冗談でも何でもなく、タナカさんとティッタお姉ちゃんとアイルは夜通し飲み明かし(私はジュースを飲んだ)、次の日の朝には、御爺ちゃんは冷たくなっていた。


 それから3日間、私は泣きまくった。


 だけど、元々2年以上前から御爺ちゃんは、もうすぐ死ぬと言っていた。だから、泣くのは3日で済んだ。別れを覚悟する時間は十分あったのだ。





 御爺ちゃんは、この国――いや、この世界で知らぬ者がいないほどの有名人。御爺ちゃんの訃報を聞いたら、墓参りに来る人達が大勢いるだろう。そういった人達が来たら、お茶を出したりと、おもてなしをしなくてはならない。本当に、本当に面倒だけど、そういう事をちゃんとしないと馬鹿にされるのは御爺ちゃんだ。孫として、御爺ちゃんの顔に泥は塗れない。



 という訳で、身内とも言えるタナカさんたちと葬儀を行った後、家に溢れかえる御爺ちゃんの遺品を片づけていた。


 もちろん、タナカさんたちは人化している。アイルなんてデカすぎて家に入れないからね!当たり前の処置である。




 「何このカッコいいポーズ集って……」



 御爺ちゃんの書斎で見つけた、黒皮の背表紙がついた本。難しそうな本だなーと思って開けたら、某あり得ないけど何かカッコいい立ち姿のようなポーズ絵がたくさん書いてあった。



 「あら、懐かしいわ。昔のポルネリウスは情熱的で、ここにあるポーズを取って、わたくしに愛を囁いてきたのよ。……バカで可愛いくて、うっかりときめいたわねー」



 えっ何それ!? ポーズ決めながら愛を囁くって馬鹿じゃない?アホじゃない? 完全に黒歴史でしょ、コレ。



 ……というか、聞き捨てならない言葉を聞いた気がするんですけど!



 「ねえ、ティッタお姉ちゃん。愛を囁くって……御爺ちゃんとティッタお姉ちゃんって、その……」


 「愛し合っていたわ。結ばれることは無かったけれど」



 そう言って遠くを見つめるティッタお姉ちゃんは、外見年齢10代前半でありながら、女の顔をしていた。


 御爺ちゃんとティッタお姉ちゃんが、そういうアダルトな関係だったなんて知らなかったよ!!



 「全然気づかなかったよ」


 「まぁ! アイルでも気づいたのに、カナデちゃんは鈍感ね。そんな事では、いい男は捕まえられないわ」


 「に、鈍くないもん! それに将来は、普通な人と普通な家庭を築く……予定だしっ!」



 身の程を弁えて、高望みはしない。一般人と結婚することこそ、私の夢だ!!


 前世では、彼氏すらいなかったし……今世こそは……必ずや、リア充になってみせる!!



 「無理だろ、普通に考えて」


 「カナデに結婚は、早すぎますよ」



 私の言葉を否定したのは、アイルとタナカさんだった。


 タナカさんは良いとして、アイル、テメェはダメだ!



 「頭空っぽで気遣いのできない、非モテ竜のくせに……」


 「よく分からねーが、今、俺のことバカにしただろう!?」



 まるで、小学生男子のようなオツムの水竜(数百歳)を睨みつける。



 「馬鹿にしましたけどぉー?」


 「いい加減、カナデとはどちらが上かハッキリさせるべきだな……!」


 「これだから馬鹿は嫌だよ。アンタが破壊した物を元に戻すのは私なんだよ? 水やりしかできない、ニート竜を卒業しない限り、アイルの地位はこの家の底辺。そこのところ、良く考えてよね!」


 「ぐぬぬ……」



 ふっふ、口では女子には叶わないのさ!


 悔しそうに顔を歪めるアイルを見て自身の勝利を確信した私は、片づけに戻る。


 御爺ちゃん、少しは片づけてから逝って欲しかったよ。

 生前整理、終活、これ大事!!



 「ん? またポーズ集?」



 今度は、茶皮の高そうな本を見つけた。辞書なみに分厚い。

 私は、嬉々とした表情で本を開く。



 他人の黒歴史は、蜜の味~♪



 「ポエム集だったりし――うわぁっ」



 本を開くと、そこには女性の……その、何だ。裸体が書かれた本だった。つまりは、えっちぃ本である。言わせんな、恥ずかしいっ!



 異世界のえっちぃ本に好奇心は抑えられず、私はページを捲る。



 「み、見事に巨乳でお色気ムンムンの女の人ばかり……」



 世間に対して声を大にして言いたい。女の価値は胸じゃないと思うんだ!!



 「ふーん。ポルネリウス、こんなの隠し持っていたんだ……。へえ……」



 いつの間にか、本を覗き込んでいたティッタお姉ちゃんの背後にブリザードが吹き荒れる幻が見えた。



 「ティッタお姉ちゃん、これは絵だから絵!! きっと御爺ちゃんは胸じゃなくて、尻派だったんだよ。大丈夫、ティッタお姉ちゃんは華奢で素敵だよ!!」



  胸が揉めないなら、尻を揉めばいいじゃない!!とばかりに、私はティッタお姉ちゃんを褒めちぎった。


 ちなみに私も他人事ではない。前世では貧に――ではなく、小ぶりで可愛らしい胸の持ち主だった。


 でも、きっと今世は、大きくなってみせる!!まだ私は6歳。希望はある。ありまくりだよ!!



 今ほど、前世の記憶持ちであることを感謝したことはない。

 前世で蓄えたバストアップ知識が火を噴くよ!!これぞまさに転生チート!!



 「あら、ありがとうカナデちゃん。それにしてもこの絵……こんなに胸が大きいのに、ウエストが細すぎない? あり得ないわ」


 「あっ、私も思った。胸かウエスト、どっちかを犠牲にしなきゃいけないのにね。夢見過ぎだよねー」


 「絶対に作者は男だわ。それも、夢見がちな!」


 「こんな女の人は存在しないよね! 幻想だよ、げ・ん・そ・う」



 えっちぃ本でガールズトークをする私たちの元に、アイルがやって来た。



 「何、サボってんだよ。ナッサンに怒られても知らねーぞ」


 「丁度よかったわ、アイル。これを見てどう思う」



 ティッタお姉ちゃんは、一応は若い雄であるアイルにえっちぃ本を見せた。

 何と言うか、チャレンジャーだよね。ティッタお姉ちゃん。



 アイルは、じっとえっちぃ本を見て酷くどうでも良さそうな顔をした。

 もしやお主、貧乳派か!!



 「興味ないな」


 「え? もしかしてアイルってその歳でE――じゃなくて、女の子に興味ないの?」



 危うく幼女として言ってはならない単語を言いそうになった。危なかったぜ……。



 「そもそも、人族の女は趣味じゃない。それよりもカナデ、片づけが終わったら戦おうぜ!!」


 「バトル脳かよ!!」



 ダメだ、コイツの中身は小学生男子だった……。


 私が呆れていると、肩をトントンと叩かれた。

 振り返ると、笑顔の――だけど怒っているタナカさんがいた。



 「カナデ、手に持っているそれは何です?」


 「これはえっと……ティッタお姉ち――」



 ティッタお姉ちゃん助けてと言おうとしたが、ティッタお姉ちゃんは既にこの場から消えていた。ついでにアイルも……。


 に、逃げ足速すぎぃぃいいいいい。



 「カナデ、お説教です」


 「……はい」









 「――ですから、慎みを持つことは大切な事です。ティッタにも言えることですが……」



 もう、かれこれ1時間はタナカさんのお説教は続いている。


 えっちぃ本を見てお説教される幼女(精神年齢○歳)とか、どんなだよ。存在が恥ずかしすぎる。もう解放して……。



 「た、タナカさん。私、すごーく反省したよ。やっぱり人間、慎みが大事だよね! うん。タナカさんの言う通り!!」


 「はぁ……。今日のところは、ここまでにしましょう。私も叱りすぎました」



 お腹すいたでしょうと、タナカさんが私に飴をくれた。



 「わーい。ありがとー!!」



 私ってチョロすぎぃ。でもお菓子には逆らえない!!


 口の中に広がる甘さに自然と頬が緩んだ。



 「カナデは本当にお菓子が好きですね」


 「うん。大好き」



 ふと、タナカさんが悲しそうな表情を見せた。

 不思議に思い、首を傾げると、タナカさんは私の頭を優しく撫でた。



 「カナデは……ポルネリウスが死んで悲しくありませんか?」


 「……悲しいよ。だけど、たくさん楽しいことも御爺ちゃんは教えてくれたから大丈夫」


 「そうですか」



 タナカさんは、御爺ちゃんと本当に親しかった。


 それならばと、私が疑問に思っていることを聞いてみた。



 「ねえ、タナカさん。自分で死を選ぶってどんな気持ちなのかな。御爺ちゃんから聞いていない?」



 私にとって死は恐怖でしかない。冷たくて痛くて悲しい、二度と経験したくないことだ。それなのに御爺ちゃんは、自ら死を選んだ。


 御爺ちゃんの死に顔は、まるでこの世に後悔がないかのような穏やかな表情をしていた。

 こんな死も存在するのかと、私は困惑したのだ。



 タナカさんは困った顔をしながら、私の質問に答えてくれた。



 「聞いていませんし、私にも分かりません。ですが、ポルネリウスのように死を自ら選んだ者たちを、私は幾人も知っています。死に安らぎを感じる者もいるんですよ」



 そう言って、タナカさんは私を抱きしめた。


 きっとタナカさんは、たくさんの死を見て来たんだ。

 そしてその事に慣れていない。


 私は腕に力を入れて、タナカさんをぎゅっと抱きしめる。



 「私は死なないよ。だって、絶対に死にたくないもん。生きるためなら何でもやっちゃう覚悟もできてるぐらいだし。だから、もしかしたら……タナカさんよりも長生きするかもね」



 私も御爺ちゃんのように、自ら死にたいと思う時が来るのだろうか。

 ……たぶん、それは私が私である限りないな。



 「ふふ。では、私が死ぬ時はカナデが看取って下さいね?」


 「うん。でも、御爺ちゃんみたいに自分から死を選ばないでね。残されるのは、やっぱり寂しい」


 「ティッタとアイルと私たち、皆で長生きしましょう」


 「約束だからね!」


 「ええ、約束です」



 私の肩に顔を埋めるタナカさんは、泣いていた。





 ああ、やっぱり……死は冷たくて痛くて悲しい。




 美しくなんてない。 






これにて、孫編は終了となります。

今回はR15タグが活躍しました。

そしてサブタイが某病みのカードゲームアニメのようになってしまった…。


さて、次回からは新章に入ります。

久しぶりに時間軸が先に進み、真勇者編の先のお話になります。

細かいプロットの方が出来ていないので、お待たせするかもしれません。


では、次回を気長にお待ちくださいませ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ