女魔法使いは後宮に入りました 5
お邪魔しまーす。
内心で呟きながら、私は使用人部屋に入った。寝起きドッキリみたいでドキドキするね。
ちなみにユリア姫とローラさんは快く送り出してくれた。もちろんユリア姫の部屋には結界が張ってあるから、安全。ちゃんと仕事はするよ!
ローラさんが言うには、お菓子を届けに来た使用人は、元気な普通の侍女だったらしい。相当な演技派だったら恐ろしいが、大方知らない内に捨て駒にされたんだろうと予想した。
朝食の毒は『侍女たちの勘違いかもしれない』とユリア姫が一先ず矛をおさめた……私が解毒魔法で毒消しちゃったから、完全な証拠にはならなかったしね。ただ強烈に不味い朝食ってだけだし……これはこれで酷いな。
でも今回は違う。ちゃんと現物が残っている。お詫びのお菓子に毒が盛られていた。しかも誰からのお詫びかは判らない。侍女が届けたと言う点から、後宮侍女長からの物と考えるのが妥当だけど……そんな単純かね?捨て駒にされたとも考えられる……まぁ、誰が犯人でも容赦はしないけどね。
使用人部屋では、8人の侍女たちがぐっすりと寝ていた。
王宮の侍女は、王族に仕える上級侍女、貴族の接待など王宮の目立つ所で働く中級侍女、そして掃除や洗濯などの雑用を行う下級侍女がいる。上級は全員が貴族令嬢、中級は貴族と平民、下級は全員が平民となっている。
後宮の侍女制度がどうなっているか判らないけれど、此処にいる8人の侍女は恐らく平民だ。個室を与えられていないし、多分そう。
ええっと、ローラさんが言うには青髪の女の子だったけ。
「ずびぃぃいいい、ずびぃぃいいい」
豪快にイビキをかいて腹を出して寝ている女の子が青髪だった。
こういう子……私嫌いじゃない。むしろアリです!
他の子はこんなイビキを聞いて目を覚まさないかなと思ったけど、歯ぎしりしている子やシャドーボクシングしている子もいるし、イビキ程度は大した問題じゃないのかもしれない。
青髪の子の額に手を当てて、私は……記憶を読み取る魔法を使った。
お菓子をジゼル嬢付きの侍女に渡されて届けるように命令された訳ね。この子は平民出身のようだし、断れなかったか。毒を盛った事が発覚したとしても、トカゲのしっぽ切りのようにすべてをこの侍女に押し付ける気……もしくは明日の朝にでも殺して証拠隠滅するつもりだったのかな?
まったく……不愉快なことこの上ないね。
そしてこの子の記憶を覗いた事で色々な事が判った。
家政婦ならぬ、侍女は見た……ってヤツかな。何所に目があるかなんて判ったもんじゃないね。やっぱり仕事は真面目にやるに限るよ。
「ありがとう……お礼はちゃんとするからね」
♢
「あらあら、こんな早朝にそんな物騒な物を持って……どうしたんですかぁ?」
ユリア姫の口調を真似つつ、絶妙なウザさをプラスし、平民の使用人部屋の扉の前でジゼル嬢付きの侍女に言った。
ジゼル嬢付き侍女は手にナイフを持っていた。
果物ナイフだったらまだ可愛げがあったんだけど……刃の形状からして完全に殺すための武器だね。
「貴女こそ、何故ここに……ユリア王女付きの侍女エマ」
「何故でしょう? それよりもそのナイフ……家畜解体用ですかぁ?」
私は挑発した。相手から見れば丸腰、正気の沙汰ではない。
まぁ、魔法使いなんですけどねー。
「では、教えてあげましょう――」
迷いない銀の閃光が私の喉元へと向かったが、それが届くことは無かった。
既に侍女の身体には紫の鎖が絡みついている。
――闇魔法による拘束だ。
「そんな……他に仲間が……まさか無詠唱……?」
「魔法使いですから。とりあえず面倒事にならないように眠っていて下さいな」
鎖を通して侍女に眠りを促す魔法をかける。
「貴女……何、を考え、てる、の?」
意識を失いかけているのか、侍女の声は途切れ途切れだ。
「私にとってお菓子はとても大事なものです。でもそれ以上に……私が大切なのは私自身。もう死ぬのなんて御免なんですよ……」
笑顔で言ったその言葉が侍女の元に届いたのかは判らなかった。
♢
「ちょっと、まだクレアは戻って来ませんの!!」
「も、もうすぐ戻られると思います……」
「先程も同じことを言っていたわ!!」
――ガッシャーン
早朝、決戦の為に訪れたジゼル嬢の部屋の扉の前で、私とユリア姫とローラさんは立ちすくんでいた。さっきからジゼル嬢がご乱心だ。原因は……私だね。
「……姫様、エマ。ジゼル・アラマン公爵令嬢は御取込み中だと思います」
「朝早くに訪ねるなんて迷惑だったかしら……?」
「入りましょうよ。後宮の調度品は国民の血税で賄われています。側室の鬱憤を晴らすために割かれる予算など存在しませんから」
「尤もな事を言っていますけど……目が笑っていませんわよ、エマ」
「お菓子の恨みは末代まで祟るんですよ……許さない許さない許さない」
「あらあら、エマも辛そうだし入りましょうか……たのもー」
ノックも無しにユリア姫がジゼル嬢の部屋の扉を開けた。
「姫様……」
「道場破りでもするつもりですか、ユリア姫」
「血気盛んな人達がいる場所に赴く際は、こうするのが礼儀だと婆やが言っていたわ」
「また婆や、お前か……」
「ちょっと、勝手に部屋に入ってきて挨拶すらないってどういう事よ!!」
ジゼル嬢がヒステリックに叫ぶ。カルシウム足りていないんじゃないかな。
「お邪魔していますわ、ジゼル様」
相変わらずマイペースなユリア姫。
それにしても……陶器の破片やら、クッションの中の羽やらが散乱していて汚い部屋だな。
「ジゼル嬢、突然の来客もあるのですから、部屋はもう少し綺麗にした方が良いかと」
侍女歴3日の私なりにアドバイスしてみた……嘘です、嫌味です。
「この無礼者たちを追い出して!!」
侍女に向けて叫ぶジゼル嬢。
いや、一介の侍女に一国の姫を追い出させるのは荷が重いと思うよ?
「あらあら、わたくしたちは無礼者なのねぇ。それなら毒入りの菓子を送りつけてきた者は何と呼ぶのかしら?」
「無法者、愚か者、罪人……色々ありますね、姫様」
「クズ、ゴミ、カスも含まれますね。まあ、反逆者が一番妥当だと思います。側室は王太子殿下のもの……それを害そうとしたんですから」
「か、勝手な事を言わないでもらえるかしら? 証拠もないのに……」
「ありますよ?」
私は備え付けの棚の横に立ち、力を込めて棚を押す。すると棚がスライドし、隠し収納スペースが現れた。収納スペースの中には小瓶が置いてあった……中身は毒物だ。
「これは一体何でしょう?」
ワザとらしい芝居をしつつ、小瓶をローラさんに渡した。
ローラさんは小瓶の蓋を開け、軽く手で仰ぎ匂いを嗅ぐ。
「これは……毒物ですね。しかも昨日姫様の朝食に入っていた物と同類です」
「あらあら、物騒ね。他の小瓶はどうなっているのかしら……?」
「毒なんてあるわけないでしょう!! この部屋の主はわたくし。早く出て行って!! どうしてクレアはまだ戻ってこないの!!」
「貴女の侍女なら戻って来ませんよ。だって毒がこの場所にあることを教えてくれたのは、貴女の侍女ですし」
記憶を覗きましたーとかは言わないで置く。この魔法が使えるのは、あんまり知られたくないし。
「そんな……クレアが裏切る訳が……」
「そうですか? 色々教えてくれましたよ」
「貴女が悪いのよ、貴女さえいなければ……エドガー殿下の隣に立ち、正妃になるのはわたくしなのよ!」
キッとユリア姫を睨みつけるジゼル嬢。
ユリア姫は、やっぱり微笑んでいる。
いや、側室全員御渡りすらないのに自分が正妃っておかしくない?どこにそんな自分過信する根拠があるんだか。
「あらあら、だからわたくしにあんな事をしたのかしら?」
「そうよ、貴女なんて毒入りの菓子を食べて死ねばよかったのよ!!」
「はい、言質いただきました~」
しっかり聞きましたよ?
腹心の侍女が裏切ったと思って自棄になったのかな。
「なっ」
顔を青ざめるジゼル嬢。
ずっと興奮状態で頭に血が上っていて言っちゃたみたいだね……今更正気の戻っても遅いよ。
「何事ですか!!」
騒ぎを聞きつけてきたのか、侍女長が現れた。
私たちの姿を見ると、一瞬怪訝な顔をした。
「侍女長、ユリア様がわたくし言いがかりを……」
「ジゼル様がわたくしに毒入り菓子を送りつけてきたのですわ。勿論証拠もございますし、先程ご本人もお認めになりました」
「それは……」
「水の国から空の国に輿入れした王女として、わたくしは自分の発言に責任を持っています」
意訳すると『王族の言葉を疑うのか、ああん?』だね。
「侍女長、わたくしの言葉が嘘だとでも!?」
「ジゼル様……その……」
そりゃハッキリ言えないよね。だって……
「侍女長はアラマン公爵家から援助を受けていますもんねー」
私はニッコリと笑いながら爆弾を投下した。
「言いがかりは止しなさい」
「それと後宮から側室に与える予算……特定の側室に多く分け与え、一部は着服していますよね? それに侍女も平民出身の侍女を酷使させ、貴族階級出身の侍女とは差別して働かせていますよね? あとは歴代正妃が残してきた宝飾品の一部を贋作とすり替えたり、後宮の情報を他の貴族の間者に教えたりでしょうか。ああ、でも今回は『後宮に毒入りの食事何て有り得ない』と言い切っていたのに、毒入りお菓子がユリア姫に届けられた事が問題ですよね」
「証拠は……」
「勿論ありますよ。動機よりも証拠が重要なのは、刑事ドラマの常識ですから」
私は亜空間から取り出した書類を見せる。書類の中身は、侍女長直筆の貴族との密書や公式の予算書と改ざんした予算書などがある。青髪侍女さんの記憶を覗いたら、侍女長が夜中にこっそりと中庭の倉庫に隠している映像が見えたのだ。平民出身侍女を酷使して、夜遅くまで働かせていたのが仇になったみたい。そして何よりいい情報だったのが、侍女たちの噂話だった。
情報を提供してくれた彼女たちのためにも、労働環境は改善するよ!他人事じゃないし。
「返しなさいっ」
突進してくる侍女長を結界を張り弾く。
見えない壁に侍女長は困惑の表情を浮かべた。
「朝から騒がしいね」
悠然と現れたのは、この後宮の主でありながら一度も訪れていなかった王太子だ。その後ろには宰相補佐様が控えている。
もしものための緊急連絡網を使って私が呼んだんだけどね。
「エドガー殿下!!」
ジゼル嬢は、まるで王子様が現れたかのように目をキラキラとさせている……王太子だから間違いじゃないんだけどね。
「エドガー王太子殿下、お初にお目にかかります。水の国が第二王女ユリアです。エドガー王太子殿下は朝早くからお仕事をなさっているのですね」
そしてユリア姫はやっぱりマイペース!!
「初めまして、ユリア姫。僕が空の国の王太子エドガーです。今まで挨拶に行けず、申し訳なかった」
「あらあら、いいんですよ。大体の事情は把握していますから」
「貴女が聡明な姫で良かった」
「ありがとうございます。とても嬉しいですわ」
別に甘い雰囲気じゃないんだけどね、ジゼル嬢には二人の世界に見えたようだ。
「エドガー殿下、ユリア様がわたくしに……」
「大体の事情は聞いている。まず侍女長」
「は、はいっ」
「先程、宝物庫から一部贋作品が見つかった。後ほど詳しく話を聞かせてもらうよ」
王太子が私に目配せをする……証拠書類を渡せって事だね。はいはい、渡しますよー。
「此方が件の書類になります」
「…………これはどういう事かな、侍女長。僕にはまだ側妃すらいないと言うのに、後宮内であからさまな贔屓が行われている。身分順というわけではないようだ……一体どういう基準なんだろうね?」
「それは……」
「そして今回の毒殺未遂。ユリア姫、本当に申し訳ない。空の国を代表して謝罪する」
ユリア姫に王太子は深々と頭を下げた。
それを見てジゼル嬢と侍女長は目を丸くしている。
この国のNO.2に頭を下げさせたって理解しているのかね、この二人は。
「あらあら、頭を上げてくださいまし。エドガー王太子殿下がこういった暗殺を警戒して、策を講じてくださった事は存じております。祖国には報告いたしますが、大きな問題にはしないと約束いたしましょう」
「感謝する、ユリア姫」
「ふふふ、貸しですよ。いつか返して下さいね?」
「必ず返すよ」
笑い合う王太子とユリア姫。
王太子相手に優位に立つなんて……やっぱりユリア姫、最強?
「どうしてですか! エドガー殿下はわたくしを……愛していると」
「お父様が言っていた?」
私はジゼル嬢に対して嘲笑うように言い放つ。
睨まれているけど気にしないよ。
「侍女風情が……」
「反逆者に何を言われようが関係ないよ。どうして貴女のお父様――アラマン公爵が、敵対派閥の王太子殿下が貴女の事を愛していると言ったのだと思う? アラマン公爵は、貴女が王太子殿下との子を授かる事を望んだ。だから王太子殿下が貴方だけの王子様かのように洗脳したんだよ。最終的には、国王と王太子を殺して子どもの後見人になる予定だったみたいだよ。壮大な馬鹿みたいな夢だよね」
これはジゼル嬢付き侍女の記憶から得た情報だ。
ちなみにあの侍女は毒物だけじゃなくて、強力な媚薬の類も棚に隠していたよ。マジ怖いわ。
ジゼル嬢は確かに美人だけど、あの王太子が籠絡されるのは想像できない。
まったく、自分の甥っ子の第二王子が王位争いで負けた時点で諦めろって感じだよ。一度権力を手に入れたら上を求めてしまうものなのかな。権力って不確かで目に見えないものだし、不安になるのかも。平民で良かったよ。
「そんな……お父様が……」
「ジゼル嬢、君の侍女は既に取調室にいる。そしてアラマン公爵家にも反逆罪の疑いで騎士団が向かっている。そして今回の毒殺……裁くのは僕ではなく陛下だが、処刑と公爵家取り潰しは免れないと思え」
「わたくし……知らなかったの……」
「それから侍女長、元々僕が任命した訳じゃないけど……君を解任する。先程僕の侍女が言った通り、君にはいくつもの疑いがかけられている。君も処刑は免れないだろう」
「殿下……」
「申し開きは陛下にせよ」
王太子は冷たい眼差しでピシャリと言い放った。
美形が怒ると怖いね。ドMだったら喜ぶのかな?雪の国の第二王女とか風の国の公爵令息とかね……。
「そうそう」
王太子が笑顔で此方をに振り向いた。
「今回の事は良くやったね。ユリア姫を毒殺から守った事もだけど、侍女長の汚職とアラマン公爵家の内情と罪状を引っ張ってくるなんて。君を部下にして良かったよ」
王太子がそう言い切ると、ジゼル嬢と侍女長が此方を睨んできた。漸く自分たちを窮地に追い込んだ相手が判ったようだ。もう遅いけどね。
「お前がぁぁああああ」
ジゼル嬢が般若の形相で私に襲いかかって来たが、闇魔法で拘束したためそれは未遂で終わった。
じたばたと暴れて拘束から逃れようとジゼル嬢は奮闘するが無駄な事だ。
侍女長は相変らず私を睨んでいるが、ジゼル嬢ほどのガッツは残っていないみたい。一回結界で弾いているしね。
「やっと判った?貴女たちの罪を王太子殿下に告発したのは私。でもね、貴女たちが悪いんだよ……私の逆鱗に触れたりするから」
ゆっくりとジゼル嬢に近づく。
「私の大好きなお菓子に毒なんか混ぜるなんてね。しかも自分がした事がどういう事なのか理解していない……本当に許せないよ。だから……社会的に抹殺しようと思ったの」
歯をカタカタと鳴らすジゼル嬢の頬に手を当てる。
そして記憶を魔法で読み取った。
「ああ、そういう事……」
なんて胸糞悪い。
「割れ物があると危ないよね」
私は指をパチリと鳴らすと、神属性魔法を展開し、散乱した陶器や羽の時間を撒き戻した。
その結果、高級そうな大きな花瓶とフカフカのクッションが現れた。
私は花瓶を持ち上げ、テーブルの上に置いた。
クッションもソファーに放り投げる。
掃除するのはどうせ侍女の仕事だろうし、余計な手間かけさせたくないよね。
「これは……」
「神属性だね……久しぶりに見たよ」
王太子たちが何かブツブツ言っているけど……まっいいか。
「ねぇ、ジゼル嬢。今まで自分の思い通りにならなかった事なんて無かったのに、どうしてこんな浅はかな事をしちゃったんだと思う?」
「……そ、そんな、わか、ら……わた、く、し」
『うんうん。判らないまま死ねた方が幸せかもね』とジゼル嬢の耳元で囁く。
するとジゼル嬢は糸が切れたかのように動かなくなった……気絶したみたい。
「罪人を運んで下さい」
宰相補佐様が、廊下に待機していたらしい騎士たちに指示を出した。
そしてジゼル嬢と侍女長は連行されて行った。
一先ず、私の報復は終わりかな。
「ユリア姫、後任の後宮侍女長は僕が任命する。明日には後宮に向かわせよう」
「判りましたわ」
「それとこれからユリア姫の部屋に行ってもいいかい?今後の事を話したいんだ」
「……判りましたわ。ですが毒殺騒ぎがあった今、食事はお出しできませんが良いですか?」
「構わないよ。カナデ、お茶菓子をよろしく」
「王太子殿下が好きそうなお菓子が幾つかあるのでお出ししますね」
今日も仕事を真面目に頑張らなくちゃね。
♢
この日、エドガー王太子は側室であるユリア姫とカミーユ侯爵令嬢、それにオリヴィア伯爵令嬢の部屋を訪れた。昼間の短時間だけの滞在だったが、これはエドガー王太子の後宮が出来てから初めての御渡りとなり、後宮侍女長とジゼル嬢との件と一緒に王宮内に情報が駆け巡った。
数日後、アラマン公爵家からは国王暗殺の計画書が見つかった。アラマン公爵家は取り潰しになり、反逆罪で一族郎党処刑される事になった。後宮侍女長も同じく、処刑される事になった。
そして、アラマン公爵家の令嬢を母に持つ幽閉された第二王子も3カ月後に毒を飲ませ、密やかに暗殺される事が上層部で決定された。この件は公にせず、第二王子は病死扱いになる予定だ。
宮廷政治がアラマン公爵家取り潰しの話題で持ちきりの中、ひっそりとエドガー王太子から側室たちの実家へ、とある招待状が送られた。
――ユリア姫、カミーユ侯爵令嬢、オリヴィア伯爵令嬢の協同で夏の茶会が後宮で開催される。
エドガー王太子に近しいごく一部の者たちは悟った。
アラマン公爵家と後宮侍女長は前座に過ぎない。粛清はこれからだと――――
今回は割とダークなお話でした。
カナデの逆鱗はお菓子に毒を入れた事ではなくて、大好きなお菓子に毒を入れて自分を殺そうとした事です。魔王編でさらりと触れていますが、前世でカナデは銀行強盗に殺されているので、死に対して並々ならぬ思いがあります。そして彼女なりの戦いに関する価値観があります。カナデの抱える闇の部分ですね。
後宮編、まだ続きます。もう少しお付き合いください。
次回は後宮小町とのお茶会から。たぶんほんわかムードから始まるよ!
5/29追記
新しく投稿したSS集へ一話移動する作業を行ったため、ブックマークしている方には、ご迷惑をおかけしたかと思います。申し訳ありませんでした。
SS集の方も目次の『女魔法使いカナデ』シリーズから飛べますので、よろしくお願いします。




