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女魔法使いは後宮に入りました 2

 ――僕の後宮に入ってくれるかな


 王太子の一言が脳内でリピートされる。

 そうして数秒でその意味を理解した私は、恥じらうように王太子に顔をそむけながら返事をした。



 「こ、光栄です…………なーんて言うと思いましたか?言葉が足りないですよ、王太子殿下。私が後宮に入れるわけないじゃないですか。あそこは身分・容姿・逞しい精神力がなくては入れない場所です。私のような普通の女には場違い過ぎます」



 前世での娯楽作品の知識だけど。主に大奥とか、大奥とかね!



 「あっははは。そうかい?君は面白いね、カナデ」


 「……悪趣味です、意地悪です」



 心の底から笑っている王太子を睨みつける。

 不敬罪?どんとこーい。これは王太子が100%悪いよね。



 「……必要な事だったんだよ、カナデ。さっきの問いかけからの反応で君が何を考えて、自分の事をどう思っているのかが判った。これは仕事を行う上で、とても重要な事だ」


 「そうは思えないのですが?」


 「怒らないでよ。まず僕が君の事を知らなくては良い上司と部下の関係が築けないし、君に適した仕事を割り振れず持て余す事になる。それは完全な無駄だ。だから手っ取り早く意地悪な質問をしたんだ……ごめんね?」



 悪いだなんて思っていないくせに……


 王太子は……効率主義?

 何でもかんでも仕事を押し付けてくる国王と第五王子とは大違いだ。

 これなら少しはまともな上下関係が作れそう……。



 「職務に必要な事であるのなら、態々謝って頂かなくて結構です」


 「そう?良かった。カナデだって僕がどの程度まで許容するか謀っていたよね。お互い様だ」



 …………バレとるがな!

 たっ確かに冗談を言ったり、少々キツイ事を言ったりしたけれども!

 だって今まで上司に恵まれた事がないんだもん。警戒したってしょうがないじゃない。


 前言撤回だ。まともな上下関係は築けなそう。



 「あっはは……何の事ですかね?私はさっぱり」


 「……エドガー様、遊ぶのは大概にして仕事の話に移って下さい」



 今まで沈黙を貫いていた宰相補佐様(仕事仲間になるんだし、役職で呼ぼう)が話に入って来た。相変わらず強面である。しかし何故だろう、内面が底知れない王太子を見た後に見ると何だか癒される――と一瞬思ったが、勘違いだった。だって強面怖い。



 「そう睨まないで、ユベール」


 「元々の顔ですが」


 「あっはは、何年経っても慣れないね……それじゃカナデ、今日の所は遅いし簡単に済ませようか。前の職場には僕が書いた書面を早馬で届けるから心配しないで。ついでに君の荷物も此方に届けさせよう」


 「転職手続に荷物まで……いいんですか?」


 「これぐらいは当然だよ。君は成人しているとは言え、結婚もしていない未婚の女性だからね。上司とは言え僕が世話を焼くのは当然だ」



 おっおぃぃぃいいい、マジか。

 もしかして此処は幻かと思っていたホワイトなのか!?

 偶然にも当たり引いちゃった!?まさに棚から牡丹餅!



 「ありがとうございます」


 「とは言っても、仮なんだけどね」


 「仮ですか!?」



 脳裏に浮かんだのは(仮)領主もとい第五王子だ。

 あんなのと一緒なのは御免だ!



 「面倒な事にね……色々あるんだよ。カナデ、君が僕の部下になった事は他言無用だ。これも職務に含まれる」


 「了解しました」



 王族の言う『色々』何て知りたくないからね、下手に聞くのは止めよう。



 「今日はもう泊まる所は用意しているのかい?」


 「友人の所に泊めてもらう予定です」


 「そう。明日からはこっちで宿泊場所を用意するから今日は友人の所に泊まってくれるかい?」


 「はい」


 「そうしたらユベール、例の物を」


 「了解しました、エドガー様」



 宰相補佐様から渡されたのは、数枚の紙だった。その内の1枚に目を通してみると、ずらりと名前が記されていた。全部で……20名ぐらい?全員女性の名前だ。その中で3人にだけ赤い印が付いている。


 何ぞ、これ。

 訝しげに見ているとニコニコと笑った顔の王太子が先程と同じ意地悪を言う。



 「僕の後宮に入ってくれるかな?」


 「それが職務と言うのならば喜んで」



 私の新しい職場での初仕事が始まった――――








 




 私は今、天井付近をカサカサ――ではなくフヨフヨと浮いている。私が発明した透明毛布を被っているので、誰も私の姿を見る事は叶わない。気分はくノ一だ。お色気の術は使えないけどな!


 ちなみに潜入場所は王宮の奥にある後宮だ。基本的に男子禁制の女の花園(魔窟)だ。あぁ、怖い怖い。男子禁制だが、一部男はいるらしい……ただしナニが何して無いらしいよ。痛そうだね。


 この後宮は、つい最近出来たらしい。中にいる側室は20人。主の寵愛を受けて、子どもを産むと側妃になれるらしい。その後、側妃の中で一番力のある人が正妃となり、主を支えて後宮を纏め上げる事になる。と言っても、今の国王には正妃はおろか側妃もいないからよく判らないのだけど。王太子に正妃争いで5人の側妃が死んだって聞いた時はビックリしたけどね……。


 さて、今日の私に与えられた仕事は、紙に赤い印が付けられた3名の側室を見て来ることだ。

 いわば後宮の主公認の覗き……そりゃ男には無理な仕事だね!




 「ええっと……ユリアにカミーユ、オリヴィアねぇ」



 名前だけで探すって大変だよ。せめて身体的特徴を教えて欲しかった。でも、ぐちぐち言ってもいられないか、とにかく探そう。


 それにしても……この人達は所謂悪役令嬢と言う者なのかね?もちろん、王太子にとってだけど。貴族令嬢か……ルナリアに居た人は魔法を学びために来ている生徒だったせいか、それほど酷い人はいなかったけど後宮だからなぁ。宮廷魔術師になりたての頃は、貴族令嬢に陰湿ないじめをよくされたっけ……いくらコネ就職だからってアレは酷かった。潔く辞職しようと思っていたら、いつの間にかなくなっていたけど。懐かしいなぁ……今でも恨みは忘れていないよ?



 「――申し訳りません、カミーユ様!!」



 突如廊下に響いた女性の声。

 カミーユって、この名簿に赤い印の付いている令嬢だよね……?


 声のする方へ行くと、侍女が床に這いつくばるかのように頭を下げていた。そして豪奢なドレスを着て如何にも気の強そうな赤髪ツインテールの令嬢が見下ろしている。そして後ろに控える御付の侍女は無表情美人で底知れない怖さがある。さっそく修羅場だぜ……。


 

 「貴女、何をしたのか判っているの?」


 「カミーユ様、申し訳ありません!」


 「誤って済む問題だとでも?」



 カミーユ嬢は思っていたよりも可愛らしい声だった……口調はキツイけど。


 ふとカミーユ嬢のドレスを見ると、ピンクの生地が茶色に染まっていた。床に散乱している陶器の欠片から察するに、侍女がカミーユ嬢にぶつかり茶をかけてしまったらしい。


 あわわわわ、カミーユ嬢の実家の爵位は知らないけど、加害者侍女さんの身分によっては処刑もありえるよ!どうしよう!!



 「本当に申し訳ありません! 弁償いたします!!」



 加害者侍女さん半泣きだよ。


 そして事の成り行きを見ていたカミーユ嬢御付の侍女が口を開いた。



 「お嬢様。他者に泣き顔を晒すような半人前の侍女にお嬢様のドレスを買えるとは思えません」


 「そう……このドレスは他国の貴重な生地が使われていて、一流のデザイナーと針子が仕立て上げた一品。貴女にそれを用意する事ができて?」


 「……無理です」


 「王太子の側室である、わたくしに紅茶をぶちまけ怪我をさせるところだった。それを謝罪程度で許されると思っているの?」


 「も、申し訳……ありま、せん」



 すすり泣き始める加害者侍女さん。

 カミーユ嬢は先程から変わらず、冷ややかにそれを見下す。



 「謝って済む問題ではないわ。王太子殿下の側室に怪我をさせかけた……暗殺をしようとしたと言われても仕方のない案件だもの」


 「申し訳ありません……申し訳ありません……」


 

 絶望した顔で謝り続ける加害者侍女さん。

 カミーユ嬢は、はぁ……と溜息を吐くと命令口調で言い放つ。



 「罰を与えます。散乱した茶器を片づけて、掃除をしなさい。もちろん誰の手も借りてはだめよ。それと今後こういう問題を起こす事は、わたくしが許しませんからね」



 口を半開きにして呆然とする加害者侍女さん。

 それを見たカミーユ嬢はぷいっと顔を逸らした。



 「罰を受けないのなら、貴女を処分しますからね!!」


 「――っは、喜んで罰を受けさせてもらいます!」


 「そう、貴女のような出来損ない侍女が罰を受けるのは当然よね」


 「はい!はい!ありがとうございます……本当にありがとうございます、カミーユ様……」



 処刑も実家取り潰しにもならずに済んだ加害者侍女さんは、今度は感極まったように泣き出した。



 「侍女なら感情を表に出す事を止めなさい。 だから半人前なのです」


 「カミーユ様に誇れるような侍女になれるように、精一杯努力します」


 「べ、別に貴女のためにした事なんてないんですからね! わたくしは惨めな罰を与えただけなんですから!同じ事をもう一度やったら酷い目に遭わせるんだから!」



 早足で加害者侍女さんの前から去るカミーユ嬢。

 彼女はあれだ……悪役令嬢じゃなくて、ツンデレ令嬢だよ。


 正直に言う。

 良いツンデレありがとうございます!!







 またフヨフヨと浮いていると、庭の方で人だかりがあるのを見つけた。どうやらお茶会をしているらしい。お菓子美味しそう、さすが後宮。でも毒が怖くて食べたいとは思えません!


 人だかりの中心には綺麗な男の人(イケメン)が居た……ここ後宮だよ、ね?


 近づくと侍女や令嬢たちの声がした。



 「あぁ、今日もオリヴィア様は素敵だわ……」


 「本物の殿方よりもカッコいい……」



 あのイケメンがオリヴィア嬢か。

 皆、うっとりとオリヴィア嬢を見つめている。

 オリヴィア嬢は、茶色の騎士服を着ていた……王宮では見かけないデザインだから、自領の服なのかな?


 それにしても……ツンデレ令嬢のカミーユ嬢に続き、男装令嬢のオリヴィア嬢ですか。王太子はどういう意図で私に側室を見て来いって言ったんだろう?



 「ごめんよ、レディたち。そろそろ失礼する」


 「もう行ってしまうですか、オリヴィア様!!」



 うるうるとした目で行かないでと懇願する令嬢。他の女性たちも侍女を含め、行かないでとオリヴィア嬢に訴えかけている。王太子よ、貴君の後宮は百合の園に成りかけておるぞ。



 「泣かないで、子猫ちゃん。明日もここで私に会ってくれるだろうか……?」

 

 

 泣きそうな令嬢の頬に手を当てて、艶やかな声で囁くオリヴィア嬢。当の令嬢は顔をゆでダコのように真っ赤にしている。



 「あぁ、眩しいっ。眩暈が……」


 「目を逸らしては勿体ないですわ。心のキャンバスに焼き付けるのです!!」



 オリヴィア嬢たちを見ている令嬢の反応は様々だった。食い入るように見る者もいれば、刺激が強すぎるのか俯く者もいる。気絶……した人もいるよ……何、鳥肌が立った私は異端なの!?


 目くるめくヅカ世界にしか見えないよ!!



 私が内心頭を抱えていると、オリヴィア嬢が席を立った。

 そのまま後を付けていると、与えられている自室に入ったようだ。


 中に入るか、入らざるべきか……。

 うーん、着替えとかだったら直ぐに退室すればいいか。


 おじゃましまーす。

 短距離転移を展開し、音もなく侵入する。




 オリヴィア嬢の部屋は質素だった。

 侍女が一人しかいないってことは、別の部屋にいるってことかな。


 部屋の中にある扉に近づき、また短距離転移を行う。

 いつも思うけど、私は大怪盗になる素質があると思うんだ……尤もそんな不安定な職には就かないけどね。



 部屋の中は薄暗く良く見えない。

 しかし眼が暗闇に順応していくと、衝撃的な光景が目に入った。



 まず部屋の中が、ピンク・フリル・リボンなのだ!!

 でっかいベッドはたっぷりのレースが使われた天蓋が付いていて、まさにプリンセスベッド。もちろんベッドカバーもピンク色でフリルがたくさん使われているプリンセス仕様。置かれている小物にいたるまで、前世で姫系と言われていたカテゴリに入るものばかり。


 何だこの落ち着けない部屋は!!



 驚愕に打ちひしがれていると、この恐ろしい部屋の奥で茶色の物体――でっかい熊のぬいぐるみがもぞもぞと動き出した。


 もしや……新種の魔物か!?


 恐る恐る様子を窺っていると、熊と同系色の茶色の物体がしがみ付いていた。

 そう、オリヴィア嬢だ……。



 「あぁ、可愛いっ。クマさん可愛いよぉ」



 先程の艶やかな声とは違い、甘ったるい声を出すオリヴィア嬢……もしや影武者?



 「同世代の女の子って判らないなぁ。兄さんの真似をして話しかけているけど、あれで合っているのだろうか……」



 たぶん合っていないよ!!

 どうやら本物のオリヴィア嬢らしい。

 と言うか、オリヴィア嬢の兄は素で子猫ちゃんとか言うんだね。ちょっと気持ち悪いね!



 「それにしても、皆可愛いドレスを着ていたな。私もあんなドレスが着たい……似合わないのは判っているが」



 しょぼんと落ち込むオリヴィア嬢。

 何だろう、胸がきゅーんとする。これは……ギャップ萌えか!!


 男装令嬢は本当は可愛い物が大好きで、熊のぬいぐるみにしか本心が話せない……何それ、滅茶苦茶萌えるんですけど!


 

 「……クマさん、今日は抱きしめて寝てもいいか?」



 いいっすよ、熊とは言わずに私を抱きしめて下さい!!



 これ以上此処にいると、危ない世界の扉を開きそうだったのでオリヴィア嬢の部屋を後にする。

 とんだ強敵だったぜ……。






 またフヨフヨと浮いているとキンキンとした女声が聞こえた。

 


 「わたくしを誰だと思っているの!!」


 

 そこでは二人の令嬢が相対していた。どうやら本物の修羅場らしい。

 憤怒の表情で怒鳴り声を上げる令嬢に対し、もう一人の金髪令嬢は穏やかな笑みを浮かべている。



 「判りませんわ。貴女と会ったのは初めてですから」


 「なっ……アラマン公爵令嬢のわたくしを知らないとは言わせないわ! 判ったのなら道を譲りなさい!!」


 「わたくしはユリアと申します」


 

 このおっとりしたお姉さんがユリア嬢か。

 


 「ユリア? そんな令嬢知らないわ!いいから退きなさい!!」

 

 「アラマン公爵令嬢は、此方が名乗ったのに名前を教えて下さらないのかしら?」



 ヒステリックなアラマン公爵令嬢に対して、ニコニコとした笑顔を崩さないユリア嬢。メンタル強ぇええ。



 「ジゼル・アラマンよ! この国には私に逆らえる令嬢なんていないのだから」



 勝ち誇ったようにユリア嬢を見るジゼル嬢。

 それを見てもユリア嬢は態度を崩さない。



 「あらあら。わたくしは家名がないので羨ましいですわ」


 「それって……」



 一瞬顔を強張らせたジゼル嬢。

 この世界で家名がないのは、平民と……王族だけだ。

 そして明らかに育ちの良い振る舞いをするユリア嬢は――――



 「姫様、お急ぎを」



 ユリア嬢――いや、ユリア姫の後に控えていた侍女が決定的な一言を言った。

 たとえ公爵令嬢だろうと、王族の姫よりは身分が下だ。

 ジゼル嬢は憎々しい目をユリア姫に向けると、道を譲った。



 「そうね。それでジゼル様は何所に向かわれる予定でしたの?」



 勝ち誇るでもなく、最初から今まで態度を崩さないユリア姫。

 なんか、ドキドキするね!



 「女官長の元へ行く予定でしたわ、ユリア様……」


 「まぁ、そうなの。女官長なら、あちらへ行くと言っていましたわ」


 「感謝いたします」


 「いいえ。それでは失礼しますね、ジゼル様」



 優雅な動作で歩き始めるユリア姫。

 そしてジゼル嬢はユリア姫を睨みつけたままだ。怖すぎる。


 私はそのままユリア姫の後をつける。



 「姫様、女官長が向かわれたのはあちらではなく、こっちです」



 侍女がユリア姫が先程ジゼル嬢に教えた方向とは別の方向を指差す。



 「そうだったかしら? ローラ」


 「はぁ……姫様はドジ過ぎます。まあ、あの高飛車令嬢が女官長を探して彷徨うと思うとざまぁですが」


 「あらあら、またわたくしは、ドジをやらかしてしまったのね」


 「姫様のドジは偶に素晴らしい結果を残しますからね」


 「わたくしは気を付けているつもりなのだけど……それでもやらかしてしまうからドジなのよね。もはやドジは日常過ぎて恥ずかしさも込みあげてこないわ」


 「恥じらいは持っていて下さい。それと緊張感も……ここは敵だらけなのですから」


 「あらあら。ローラは心配性ねぇ。後でジゼル様に謝っておかなければいけませんね」


 「逆効果だと思うのですが……」


 「だめよ、ローラ。間違えた事をしてしまったのなら、誠心誠意謝らなくてはいけないわ」


 「はぁ……そうでございますね、姫様」



 ちょいドジおっとり最強なお姉さんって……天然記念物だね。

 これはこれで萌えますな……特に男子諸君が好きそうなお姫様だね。 




 こうして、初仕事は終わった。

 結局、王太子が私に何をさせたかったのか、判らない。


 もしかして……嫁自慢か?


 王太子だけ爆発しろ!!

 どうせ私は御ひとり様の売れの残り候補だよ!!












 


 「それで、3人は君から見てどうだった?」


 「はいっ。カミーユ嬢は正統派なツンデレ優等生で、大変良かったです。オリヴィア嬢は皆の王子様と見せかけて可愛いもの好きで乙女な部分もあり、ギャップ萌えテンプレありがとうございますと鼻血を出しそうになりました。そしてユリア嬢は、おっとりお姉さんタイプでちょっとドジな所が最高でした。御三方には後宮小町を結成して欲しい……そうしたら特典商法どんと来いで貢ぎます」



 本当に最高だった……萌えをありがとう!!



 「つんでれ……ぎゃっぷもえ……てんぷれ……?」


 「エドガー様、長年の経験からですが今のカナデの発言はエドガー様が碌でもない事を言っている時に似ています。ですから気にしなくても良いかと」


 「そう?よく判らないけど、カナデから見て3人は好印象と言う事で間違いはないかい?」


 「はい。3人共優しい気質をお持ちで、一般的な貴族令嬢とは違うと個人的には思います」


 「カナデから見ても評価は変わらないか……上々だね。それとカナデ、これが一番重要な事なんだけど……3人の中で一番正妃に相応しいと思うのは誰だい?」


 「私が気軽に申して良い事なのですか?」


 「構わないよ。あくまで参考程度だからね」



 参考、ね。カミーユ嬢はいい人だけど、ツンデレ特有の誤解されやすい部分があるからなぁ。オリヴィア嬢は、メンタルが弱そうだし。そうなると……



 「……ユリア姫でしょうか。穏やかで他の令嬢の暴言も聞き流しつつ、反撃もしていましたから。正妃の資格がどういうものか存じ上げませんが、精神が強くなくてはやっていけないと思いますし、ある程度見た目から受ける印象も大事かと思いまして」


 「彼女だけは僕が望んで後宮にいれた姫だからね。水の国の女帝エリザベート殿に頼んだかいがあったよ」


 「かいちょ……水の国の女帝ですか?」


 「そうだよ。1か月前に僕の後宮が出来るって話になった時に1人だけ僕が望んだ女性を入れる事が許可されたんだ。水の国は魔王侵攻の被害をほとんど受けなかったから、小国とは言え国力がある。縁続きになれれば有益だと思ったんだ。それで水の国の女帝に『正妃になれる器の姫を後宮に招きたい』と頼んだら妹姫のユリア姫を送って来たんだよ」



 ユリア姫ってエリザベート先輩の妹!?ドリルじゃなかったけど!?



 「えっと、他の令嬢方は……?」


 「父上の独断や押しかけてきた貴族共がねじ込んで来た令嬢たちだよ。僕はそもそも後宮制度は無駄が多すぎると思っている。何人も妻はいらない。どうせ愛のない結婚しか出来ないのだから、それなら一人で十分だと思わないかい?」


 「いきなり後宮制度を廃止したら、貴族が煩そうですけど……」



 取りあえず話をずらした。だって愛のない結婚とか言われてどう反応すればいいの?大変ですねぇ……とか言ったらイラッとするでしょ?平民の小娘風情に何が判るとか思われそうだしっ。重すぎぃ。



 「うん、そうだね。いきなり廃止するわけにはいかないんだ」



 そう言いながら爽やかな笑みを向けてくる王太子。何がそんなに嬉しいのさ。


 

 「あの、それで王太子殿下。私の仕事はこれで終わりでしょうか?」


 「まさか、これからだよ。最近僕の周りを蝿共が飛び回っていて煩いんだ。父上は僕が王太子として相応しいか見極めるための課題として敵対派閥と中立派が入り乱れた後宮の管理を命令されるし……自分は後宮の争いを招いたのによくやるよ。正直に言ってもう疲れた。だからね、後宮を纏め上げるついでに邪魔な蝿――もとい私腹を肥やしている貴族共を粛清しようかと思ってね♪」


 「……もう一回言って貰えますか?」


 「 し ゅ く せ い 」


 

 そんなヤバイ話聞きたくなかったよ!





中途半端ですが長くなったので一旦切ります。

登場人物集を書いていたら、思っていたよりも大変だしつまらなかった……。

その内上げます……。


今回、やっとカナデが後宮に入りました(笑)

そして後宮小町(元ネタはあのアイドルたちです)を覗きました。

ユリア姫に関しては、巨人島編後日談の方にちらっと名前が出ております。


次回は「しゅくせい」に続く会話からです。

リアルの方が忙しいので、次回も少し更新が遅れると思います。

気長にお待ちください。

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― 新着の感想 ―
[一言] ラノベあるあるですが、一夫一妻制でなく広大な後宮がある上、妃たちや王子の序列も決まっておらず無差別バトルというこの国の王室は欧中日のどこよりも酷いですからね… まあオスマン朝の初期後宮が近い…
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