魔法少女は魔法武芸大会に出場しました 5
散々揉めたチーム名は結局、黒組になった。私たちが決めたんじゃない、先生たちが決めたんだ。なんでも、自分たちでチーム名を決めると誰の名前を付けるか、順番はどうするかとかで諍いが起きるらしく、登録順で自動的に決まるらしい。前世で言う、企業合併の後の名前とかね。長ったらしい某銀行名とかさ。派閥の中でも争いがあるらしいよ、面倒な世界だね。
まあ、途中からエターナルクリスタハイパースプレッドとかロアナと愉快な仲間たちとか変な方向に行っていた私たちには、この勝手に名付け制度はある意味良かったのかもしれないね!中二病全開のチーム名とかにして、一時のノリのせいで学園中に恥をさらさなくて本当に良かった!
そんな訳でチーム申請も終わり、とりあえず活動は明日からと言うことになった。今、私とサーリヤ&サーニャ先輩は三日月の会に参加している。
今日もお菓子がウマいっ!!
「そう言えばカナデ、魔武会の団体戦に参加するようね?」
焼き菓子に舌鼓を打っていると、エリザベート会長に問いかけられた。今日、参加申請したばかりなんだけど……伝わるの早くない?あっちなみに魔武会は魔法武芸大会の略称だよ。
「……耳が早いですね、会長」
「特別な情報網があるのですわ、オホホ」
ふと横目でエリザベート会長の隣に座るガブリエラ先輩を見ると、口元を扇子で隠しながら笑っている。アンタが教えたんかい!!特別な情報網近すぎるだろ!!
「それが何か会長に関係あるんですか?」
「関係大有りですわ! わたくしたちも出るのですから!!」
「わたくし……たち?」
むむむ、なにかビンビンに嫌な予感がするぞ。
「わたしも出ます。よろしくね、カナデ」
柔らかく微笑むガブリエラ先輩……マジ怖いです。
「私も出ますよ」
「うへぇっ!? バルミロ先輩も出るんですか」
給仕に徹していたバルミロ先輩も話に入って来た。
何やら不穏な予感……。
「ちなみにわたくしたち3人は同じチームで、マティアス殿下のチームですわ」
「何ですかそれ!?」
「「敵だー!!」」
私の叫びの後に、さっきまで此方に関心を持っていなかったサーリヤ先輩たちが続いた。
「今年は派閥から団体戦に出場するチームがありませんから、遠慮せずに他派閥とも組めます。故にマティアス殿下の要請に答える事にしました」
「ガブリエラ先輩……マティアス殿下の要請って……」
「貴女に勝ちたいから、同じチームになってくれと頼まれましたわ。空の国の王族に頼まれて断る訳にもいきませんし、了承しました」
「わたくしの国も空の国とは一応は友好関係にありますし、断る理由がありませんわ。何より、カナデたちと戦える絶好の機会を無駄にはできませんわ!!」
「私はエリザのお目付け役です」
メラメラと派手に闘志を燃やすエリザベート会長にバルミロ先輩が補足した。と言うか、何しちゃってんの第五王子!!なんだ、ぼくの最強チームを作ろうか!!見るからに強そうな3人組(上級生)が敵とかうわぁーうわぁー。
「差支えなければ、先輩たちの実力を知りたいなーなんて……」
「会長は3年魔法騎士科トップで、リエラ先輩は魔法師学科3年のトップだよー」
「バロ先輩は魔法薬学科4年生のトップだよ」
「ありがとうございます、サーリヤ先輩サーニャ先輩!!」
「「どういたしまして~」」
そんなの知りたくなかったよ!マジで最強チームじゃん、ドリームチームじゃん。何してくれてんの、第五王子!!いや……違うな、ベルナさんがブレーンか。あの腹黒鬼畜が。手加減しろよぉ。
一方は平均年齢12歳の下級生チーム、もう一方は各学科のトップの上級生で家柄もトップなハイスペックチーム。もうハブとマングース!!あっ間違えた月とスッポンだよ!!
「わたくしたちはライバルよ!!」
ビシッと決めポーズを決めて宣言するエリザベート先輩。
今日も縦ロールと眉毛が凛々しいっす。
「うぇぇえええん、会長たちなんか知らないっ!! 大会終わるまで口も聞いてあげないんだからぁぁあああ」
「それは残念ね、情報収集が出来なくて」
笑顔で切り返すガブリエラ先輩。
ここに居たら情報を全部持っていかれそうだよ。まだ黒組は全然活動していないけどね!
「おぼえてろぉぉおおおお」
「「おぼえてろ~♪」」
温室から私とサーリヤ先輩たちは逃げ出した。
せ、戦略的撤退だしっ。
♢
「と言うことがありました」
「「ありました」」
翌日、第一回黒組活動日にロアナとサルバ先輩に報告した。
「まずいな」
「まずいですね。学園でトップの実力を持つ人達を取り込むだなんて……絶対にあのいけ好かない男の策略ね」
「私もベルナさんの仕業だと思う」
「それだけじゃないわ……マティアス殿下は類まれなる剣の才をお持ちなの。1年生で魔法の技術は拙いとしても、剣術においては群を抜いているでしょうね。普段はアレだけど」
「普段はアレなのに!? 顔だけ王子じゃなかったのか……」
「バルミロ先輩も魔法薬学においては教師レベルで、いくつか学会で賞を貰っているな」
「やばいよぉ、チート集団だよぉ」
魔法薬学は魔力の大きさなんかは関係ない学問だ。素材の質に合わせて調合量を微調節したりと、とにかく細かい。細かすぎる。という訳で、初級段階を1年生で習うけど私は赤点ギリギリだ。ちなみにロアナは割と得意で『料理に似てるわね』なんて授業の時に言って来た。これが女子力の差か!
「強そうだね、サーニャ」
「そうだね、サーリヤ。でも……」
「「戦ったら楽しそうじゃない?」」
この双子はお気楽なんだから。でも……どうせなら楽しんだ勝ちだよね。たとえ負けたら第五王子に服従になったとしてもさ。年下の女子に無体は強いないはず……前科はあるけど。精々、『カナデ焼きそばパン買ってこいよぉ、ニヤニヤ』レベルだよ、だぶんね!
「えーおっほん。相手チームにはベルナさんとガブリエラ先輩という2大腹黒策士がいます。精々、ダークヒーローもののような展開で私たちはけちょんけちょんにされるでしょう」
「言っている意味が少し判らないわね……」
「「ボクらは全然判らないよ!」
「今の私たちでは、空の国の王子率いるチームに良いように転がされてしまうのがオチだとカナデは言いたいのだろう」
「「「なるほど」」」
「私はこう思うのです。邪道には王道をぶつけるしかないと! 友情・努力・勝利この偉大な三原則に則りたいと思います!」
「つまりどういう事かしら、カナデ」
ロアナの問いに私は大仰に頷き、女帝のポーズ(昨日会長がしていたやつ)を取った。
なんだこれ、滅茶苦茶恥ずかしいぞ!
「てめぇーら、合宿の始まりじゃぁぁあああああああああ」
明日も更新できそうです。
お待ちくださいませ!