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魔法少女は魔法武芸大会に出場しました 1

 ルナリア魔法学園の授業は多岐に亘る。特に基礎科目が多い1年生は、魔法と関係ない事まで学ぶのだ。数学にマナー、乗馬、そして……武芸。これを必修にした奴マジハゲろ。魔法使いが武芸って……そりゃ魔法騎士科があるのは知っているよ?でもさ、それならその人達だけがやればいいじゃん。武芸のぶの字も知らない幼女には絶対に無理だから!私は朝から憂鬱だった。


 今日は初めての武芸授業だ。周りを見ると、私と同じように悲壮な表情を浮かべている人がチラホラいる。貴族の嗜みとやらで男子は強制的に武芸訓練を受けているようだが、女子はやはりその限りではないようだ。まあ、令嬢が怪我したら大変だからね……ここは残念ながら治癒魔法を使える人がわんさかいるけど。



 「ロアナ、私武芸とか習ったことがないんだけど……」


 「わたしは斧と弓矢なら得意よ」


 「斧術!?なんかカッコいいね」


 「薪割りと狩りよ。貧乏貴族に優雅に剣を舞う時間があると思う?」


 「サーセン」



 私たちが何とも言えない表情で話していると、授業担当の先生が来た。私は思わず恨みがましい目で見てしまう。何で必修なんだよ、単位取らないと卒業できないだなんて……



 「授業を始めるぞ。皆知っている通りこの授業は必修だ。武術を嗜んだことのない者も多いと思うが、一応単位を取得するための救済措置はある。だがこれは真面目に授業を受けた者にのみ機会が与えられるからな。それと怪我については心配するな、手伝いで治癒魔法の得意な先輩や魔法薬学科専攻の先輩がいる。怪我したら見て貰え」


 「「「はーい」」」



 どう足掻いても真面目に受けないといけないのか。

 だったらやってやるよ、カナデ聖剣伝説の始まりだよ!



 「それでは各自気にいった木刀を選んで、とりあえず素振りしてみろ」



 ぼ、木刀だけどな!!


 木刀の山を漁ると色々出てくる。大剣を模したものや、私の身長ぐらいある長い剣、はたまた短剣までバリエーション豊富だな~。私はどれにしよう?


 これ何だろう?普通サイズの剣なのに、やたら私の心を引き付ける。手に取ってみると刀身に斜めの切りこみがいくつも入っている。試しに引っ張ってみると、ワイヤーのような糸と一緒に外れた。


 これはまさしく蛇腹剣!!


 男子の憧れの武器ベスト3に確実にランクインするであろう、ロマン武器!!近距離・中距離と広範囲で戦える鞭と剣の良い特性を合わせた武器と見せかけておいて、実は欠点だらけの武器……だが、それらが気にならないほどカッコいい!!木刀だけど本物に出会えるだなんて、感激。


 私は迷わず蛇腹剣を手に取り頬擦りをする。この子は私の運命よ!


 早速私は素振りしてみることにした。蛇腹剣の場合はただ振るんじゃなくて、回すようにした方がいいのかな?とりあえずやってみるか。


 

 「ていやぁっ」



 手首のスナップを効かせ、舞うように素振りをする。すると蛇腹剣の刀身が弧を描くように分裂し、そして……私に巻きついた。



 「ぐぅぇえええ」


 「ちょ、なに遊んでるのカナデ!」


 「ご、ごれがあぞんでいるように見えるがぁぁああ」


 

 アニメのサービスシーンで悶えるヒロインのような余裕は私には微塵も無かった。腹が、足が、顔が締まるぅぅううう。お助けぇええええ。



 「はっ、お前は剣も満足に振るうこともできないのか?」


 

 第五王子、いきなり現れたかと思ったら……笑っている暇があったら助けろや!!



 「ろ、ロアナ……」


 「ほらカナデ、じっとしていなさい」



 ロアナが絡みついた蛇腹剣を解いてくれた。木刀じゃなきゃ死んでたぜ。



 「そんな戦場で役に立たない欠陥武器を選ぶなんてな、お前見る目ないんじゃないか?」


 「ああん? 私の事を馬鹿にするのは百歩譲って許そう。だけど蛇腹剣を馬鹿にするのは許せないんだよ、このアホボンがぁぁあああ」



 私は完全に頭に血が上っていた。



 「なっ、俺は王子だぞ!!」


 「知るかボケナス! いざとなれば国外逃亡するからお前なんて怖くないんだよ!!」


 「言わせておけばっ、俺と勝負しろ平民!」


 「はぁ?何でそんな面倒な事しなきゃならないんですかー?」


 「所詮は欠陥武器を選ぶような女か」


 「上等だコラー!! 勝負でも何でもやってやるよ、後で吠え面かいても知らないんだからね!!」


 「こっちのセリフだ!」


 「はい、やめなさい。二人とも」


 

 ポンッと頭を軽く叩かれた。振り向くとそこには――見知らぬ眼鏡がいた。誰やねん。



 「どちら様ですか?」


 「このたび此方の馬――じゃなくて、第五王子マティアス殿下の側近を務めることになってしまったベルナール・オンズローです。どうぞベルナとお呼び下さい」



 この人、第五王子に馬鹿って言いかけたよ。



 「はぁ、カナデです。ベルナさん?」


 「ロアナ・キャンベルですわ」


 「おい、ベルナお前主人が侮辱されて――」


 「何が主人ですか。貴方の側近の2人が消えたから、悠々自適に魔法漬けの学生生活を送ろうとしていた僕にお鉢が回って来たんじゃないですか。まったく、勉強の時間が減るので問題行動は慎んでください」


 「ぐぅうう……」



 消えたって……そう言えば、あのデコボココンビの取り巻き最近見なかったな。うーん……深く考えるのは止めよう。ああ、上流階級って怖いね。



 「カナデ嬢」


 「ひゃいいい!!」


 「僕は以前からカナデ嬢とお話がしたかったんです。殿下のことは脇に置いておいて、僕とは仲良くして下さい。ぜひ、魔法談義をしましょう!きっと有意義なものになります」


 「うぇぇえええ」


 「交渉しだいですわ」



 何言っちゃってるの、ロアナさん!



 「その時はお手柔らかにロアナ嬢」


 「まぁ……」



 何故か火花が散っているように見えるんですけど!?



 「俺を置き去りにするな!」



 止めときなよ、第五王子!

 その二人には関わらないほうがいいって、絶対に敵わないって!!



 「はぁ……。カナデ、顔と手足が切れて血が出てる。それに服も汚れているわ」


 「あっ本当だ」



 私は洗浄の魔法と治癒魔法をかける。カッコよさの重要性を示すために青と白の2つの魔法陣エフェクトを出した。もちろん、魔法自体には関係ない。


 

 「ロアナ、どう?」


 「大丈夫よ。傷も塞がっているし、汚れも取れているわ」


 「ふんっ、大したことないな」


 「黙って下さい、馬鹿王子。大したことありますよ、どういう仕組みなんですか!?」


 「ふぎゃぁぁあああ」



 私は危険を察知し、即座にロアナの後に回り込んで威嚇する。何故かロアナが最強の盾に感じるよ。ベルナさん怖い。そんな警戒モードの私に後から遠慮がちに声がかけられた。



 「怪我したようだから来たんだが……」


 「自分で治しちゃいました」



 ボサボサ髪に眼鏡の先輩が私に話しかけてきた。先生の言っていた手伝いの先輩かな?



 「そうか。だが心配だから一応一緒に医務室に来てもらうけどいいか?先生の許可は取ってある」



 つまり合法的にサボれると!行きます、ついて行きまーす。



 「判りました♪」


 「早めに戻ってくるのよ。この2人はわたしがどうにかしておくから」


 「ありがとう、ロアナ」



 私はボサボサ髪の先輩の後に着いて行った。


 訓練場近くの建物に入ると、急に先輩が立ち止まった。どうしたんだろう?



 「あの……どうかしたんですか? まさか、道に迷って――はぐぅうう」



 いきなり先輩に白い布を口元に押し付けられたかと思ったら、急に視界がぐらりと歪んだ。


 はれ? にゃにこれ?



 私の意識が途切れる寸前、『解析だ、解析~♪』と愉快そうな声が聞こえたような気がした。 





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