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魔法少女はお茶会に招待されました

小説タイトル変えました。

女魔法使いは異世界で働く → ワーキングコンチェルト!



 「クラブ活動?」


 「そうそう。カナデは何所にも所属していないのよね?」



 そう言えば入学したての頃に説明を受けたような……気がしないでもない。前世での熾烈な勧誘合戦みたいなものもなかったし。すっかり忘れていたよ。



 「そう言うロアナは何所かに所属しているの?」


 「黄金友の会に入っているわ」


 「うえっ、何そのつまんなそうなクラブ」


 「失礼ね。いかな手段でお金を稼ぐか、もっと効率よく帳簿を書くにはどうしたらいいのか、最も美しい金貨はどれかを討論する、とても有意義な会よ」


 「どちらかと言うと気持ち悪いね」



 どうやらクラブ活動とは同志の集まりらしい。

 たぶん形態的には前世の部活やサークルみたいなものかな……興味ないけど。



 「カナデみたいなお子ちゃまには、まだ判らないわよね」


 「お子ちゃま関係ないから。一生理解できない領域だから」


 「それよりもクラブ活動よ。どこからもお誘いはないの?」


 「ないよ。そもそもどんなクラブがあるのかも知らないし」


 「色々あるわよ。魔法研究会は属性ごとにあるし、神話クラブに魔法陣研究会、演劇クラブ、剣闘師団、決闘クラブ、愛と服飾の会、毒女の会、薬物研究クラブ、爆破クラブ……」


 「ちょっと待って、一部不穏なクラブがあるよ?」



 決闘とか薬物とか爆破とか。と言うか毒女の会って何やるの!?思わずピンクな想像しちまったわ!!



 「ああ、キワモノクラブって言われてるわよ」


 「たぶんロアナの所も言われているよ……」


 「もう、そんな訳ないじゃない!カナデったら冗談言い過ぎよ」



 目が笑ってないよ、ロアナさん!



 「あ、ははは……ゴメンナサイデス。有名だったり一番力があるのは何所のクラブなの?」


 「うーん……三日月の会かしら?」


 「お月見でもするの?」


 「違うわよ。少数精鋭のクラブで、様々な実績を持っているんですって。所属するには会員全員の賛同が必要で、認められなければ王族でも弾かれるらしいわ。ちょっと変な噂も聞くけどね」


 「何その猛者集団……」


 「どちらかと言えば頭脳派集団だと思うけど? 色々な方面で賞を取ったりしているらしいわ。今の会長は3年生で女帝と呼ばれている先輩よ」



 どこの漫画世界だよ!でも女帝って響き怖いな……関わり合いになりませんように!!まあ、学年違うし関係ないか。



 「私は帰宅クラブでいいよ……」


 「何それ?」


 「素晴らしい寄り道を極めるクラブだよ! 今日もお菓子を買いに行くんだ~」


 「ついでに牛乳と小麦粉買って来なさいよ」



 私は奥さんの尻に敷かれている中間管理職のサラリーマンかよ!!その内『牛乳・小麦粉』とか単語しか言われなくなるんじゃないの?ロアナの言う事なんて聞かないんだから、つーん。



 「……オムドリア」


 「了解しやした、ロアナ様!」



 ロアナの料理の為だったら尻だって何だって敷かれてやるよ!!











 「……手紙?」



 一限目の講義で使う教科書を開くと、何やら手紙が挟まっていた。ピンク色の……綺麗な便箋。差出人は便箋には書いていない。もももももしや、前世では絶滅寸前だったラブレターというヤツなんじゃ!!べ、別に私がモテないからラブレター貰わなかった訳じゃないんだからね!携帯という文明の利器のせいなんだから!!


 私は手紙を誰にも見つからないように懐に忍ばせると、ダッシュで女子トイレに向かった。少々注目を浴びたが、問題ない。例え漏らしそうで走っていると思われたとしても、私は幼女。全然不自然じゃないのさ!あっははは……お願いだから勘違いしないでぇ!!



 ――――バンッ



 トイレの個室に入ると私は安全確認をした。

 上下左右よしっ、盗撮魔法の気配なしっ、結界魔法展開!!


 手紙を開くと女性らしい美しい字が綴られていた。




 小さな黒の姫君 カナデさんへ


 使者も出さずにこのような形で手紙を渡す事、ご容赦ください。

 わたくしは三日月の会で会長をしておりますエリザベートと申します。

 此の度、貴女を我が三日月の会の茶会に招待したく、手紙を送った次第です。

 本日の授業が終了した後、迎えの者を寄越します。

 ぜひ参加して下さいませ。


 三日月の会会長 3年 エリザベート




 ……じょ、女帝からの呼び出しーーー!!!私何か悪いことした!?日々慎ましやかに生きているのに調子に乗っているように見えた!?茶会って何の隠語よ!!


 思えば、7歳の幼女にラブレターを書く人何ていないよね……変態以外。


 しかし、これからどうするか……


 手紙が教科書に挟まっていたという事は、私が手紙に気づかない可能性も相手は考えているはず。それなら手紙に気づかないフリをしつつ、授業が終わったら即転移魔法で逃げる……完璧な作戦だ!!後で何か言われたら『手紙って何のことでしょう?』とすっとぼければOK。上流階級は礼儀とかマナーをやたら気にするから、逃げまくっていれば回避できるはず。よしっ。


 

 私は優雅な足取りでトイレを出て教室へ向かった。

 すれ違う人が時折慈愛の目で見てくるのは気のせいだ……トイレ間に合って良かったねとか思っていないはず。そうだよね!? 











 「今日の授業はこれで終わりです。課題を忘れないでください」



 先生が授業終了を宣言した瞬間、私は転移魔法を展開し始める。



 「ちょっと、カナデ……」


 「ごめんロアナ、牛乳と小麦粉を買いに行くのはむ――」



 無理と言おうとした瞬間、私の身体がフワリと宙に浮いた。何故に!?

 驚いた拍子に転移魔法を解除してしまった。



 「リエラ先輩の予想した通り、この子逃げる気だったね。サーニャ」


 「ホントホント、会長の誘いを受けないなんて面白い子だよね、サーリヤ」


 「「それじゃ、行こうか! カナちゃん」」


 「うへぇっ!?」



 右を見たらオレンジ髪の可愛い女の子、左を見れば同じオレンジ髪と顔の男の子がそれぞれ私の腕を抱えている。何この状況!?分身の術!?いや、たぶん双子だよって頭こんがらがるわ!!


 私は助けを求めるようにロアナを見た。

 するとロアナは笑顔で手を振りつつ、手には高純度であろう魔石を握っていた。

 懐柔されていやがるーー!! 


 私は両脇を抱えられて身体をぷらんぷらんと揺らしながら連行されて行った。











 珍しい花や美しい花が咲き、甘い香りのする温室に私はいた。人工の小川のせせらぎは訪れた人の心を癒すであろう。だがしかし、私の心は穏やかではない。オレンジ髪の双子に連行された私は、とんでもないラスボスと対峙していた。と言っても、茶席に座らされているのだけど。


 強固なドリ――縦ロールをなびかせるピンク髪で気の強そうな令嬢。女帝だ、絶対にこの人が女帝だよ!そして女帝の眉は意外にも太かった。海苔系ではない、たくあん――いや、カマボコ系だろうか?ピンクだし。


 ちなみにこの世界ではアニメのような髪色が珍しくはない。ロアナも紫色だし。むしろ私にとっては一番地味な黒髪が目立つのが理解できない。この価値観には中々慣れないよ。



 この温室は完全に女帝の支配下にあった。

 女帝の後には執事さんが控え、女帝の横には青髪の知的なお姉さんが座っている。双子は私の後で監視するかのように此方を見て来る。か、帰りたいっ切実に!!



 「強引に招いてしまって……申し訳ありませんわ。どうしても貴女にお会いしたかったのです、オホホホホ」


 「紅茶です、どうぞ」



 高笑いする女帝。紅茶を微笑みながら差し出す執事。そして扇子で口元を隠しながら此方を窺うお姉さん。何か知らないけど、こわっ!!


 後ろで暇だとかお腹すいたとか言っているマイペースな双子に癒される。



 「あの……私に何か用でしょうか?」


 「ええ、大事な用があります。でも最初に自己紹介をいたしましょう。わたくしの名はエリザベート、3年生で三日月の会の会長ですわ」


 「同じく3年、副会長のガブリエラです」


 「私は4年生のバルミロです」


 「執事さんは学生なのですか!?」


 「ええ、これでも貴族です」



 何故貴族が執事を!?

 あっでも彼が最高学年なのに会長じゃないのは判るよ、だって女帝が強烈だもん!!



 「ボクはサーリヤ、2年生だよ!」


 「アタシはサーニャ。サーリヤの妹だよ!」


 「か、カナデです……1年生です」

 


 目的は何?私みたいな平民を呼び出して、イジメ……はないかな状況的に。紅茶が毒入りとかはなさそうだ。



 「貴女の事は調べさせてもらったわ。そして、貴女がこの三日月の会に相応しい人物かもしれないと思いましたの」


 「それは……何かの間違いです。私ごときが、この伝統ある三日月の会に相応しいだなんて……」



 三日月の会の歴史なんてさっぱり判らないが、とりあえず恐れ多いですと遠回しに拒否してみる。何の気まぐれかは知らないけれど、こんな目立ちそうなクラブに入るのは嫌だよ!!

 


 「とりあえず、こちらのデザートを食べていただけます?」



 人の話を聞けよ!!


 目の前に置かれたのはプリンだ。チョコやカボチャではなく、シンプルなプリン。蒸して固めたタイプだね。カラメルソースはとろみがあってすごく美味しそう。


 食べたい……だけど食べた瞬間に、食べたわね?これで貴女も共犯よ!とかお決まりのセリフ言われたらどうしよう?でも目の前に美味しそうなプリンがある。



 出されたプリンを食べない何て女が廃るわ!(言い訳)



 私は恐る恐るプリンをスプーンで掬い、口に運んだ。



 「……美味しい」


 「どのように美味しいのです?嘘偽りなく、わたしに教えて下さい」



 私に微笑みかけるガブリエラ先輩。

 


 「……固さ、滑らかさ、香り、どれも素晴らしいです。手間暇かけて作られているのでしょうね。卵と牛乳の味も濃厚でとても美味しいです……卵黄多めで作られているのでしょうか?ただ、しいて言うならば、この甘さのプリンならカラメルはもう少しほろ苦い方が……まあ、私の好みですけれど」


 「そうなのです!研究に研究を重ねた末にたどり着いた黄金比率です!原材料の産地にもこだわり、卵は新鮮濃厚なものを、牛乳は爽やかな香りの物を選びに選び抜いたのです!蒸す時間も理想の舌触りを表現できるように熟考を重ねました。甘さの方は小さい子は甘い方がお好きかと思って調節したのですが、大人向けの味の方が好きなのですね。エリザベート、やはりこの子は逸材です!わたしの目に狂いはありませんでした!」


 

 アンタが作ったのかい!見るからにお嬢様なのに。


 そしていきなり興奮し始めるガブリエラ先輩……もしかしてヤバイ人?

 落ち着け私、落ち着くんだ!

 カタカタと震える手でティーカップを掴み、慎重に紅茶を飲み干す。



 「……美味しい。だけど、知らない味?」


 「そうですわ!!この紅茶はわたくしが今日の為に特別に用意したオリジナルブレンド。5種の茶葉を合わせ、それぞれの風味を損なわずに高められるようにしたのですわ。ガブリエラの作ったプリンに最も合う紅茶だと断言できましょう」


 「紅茶を入れたのは私です。蒸し時間や温度にもこだわりました。カナデお嬢様にお喜びいただけたようで執事冥利に尽きます」



 女帝と執事先輩も壊れ始めた……女帝は存在自体が壊れているかもしれないけど。

 あれだ、とりあえず話をそらすんだ……!!



 「こ、この食器や飾られているお花も素敵ですね……」


 「「ボク(アタシ)たちが選んだんだよ!!」」



 ……全員が興奮状態。何このカオス。



 「わたくしはここに、彼女を三日月の会の新たなメンバーに推薦いたします!」


 「わたしは大賛成です」


 「条件はクリアしていますからよいのでは?」


 「「面白そうだから、異議なーし」」


 「異議ありです!私には恐れ多いです」



 皆で盛り上がっているところ悪いけどね、拒否させてもらうから!

 空気何て読みません、吸うものですぅ。



 「会長、説明不足なのではないでしょうか」


 「そうね……カナデ、貴女は三日月の会についてどこまで知っていて?」


 「えっと、少数精鋭の頭脳派集団で学園内で一番力のあるクラブということだけです」



 全部ロアナの受け売りだけど。



 「表向きしか知らないのね。いいでしょう、教えてあげますわ!」



 右手をパーの状態で突出し、女帝が決めポーズを取る。あのドヤ顔はまるで悪役令嬢のよう。様になっているぜ……一周回って可愛いし。



 「簡単に言うと三日月の会は、表向きは適当な功績を出しつつ、裏では多額の予算を使ってお茶会を極める会ですわ!!」


 「三日月の会には規則があります。1つ、温室内では身分や家柄、派閥等の事情は一切持ち込まない。2つ、三日月の会の裏活動は他言無用。3つ、助け合いの精神を忘れない。以上です」



 女帝に続き、ガブリエラ先輩が補足する。



 「「みんな仲良く秘密のお茶会しましょ~ってことだよ!」」


 「それは判りやすいです!」



 双子に私は同意した。でも気になることがある――――



 「あの、私は何故誘われているのでしょう?」


 「ズバリ、貴女のお菓子に対する愛ですわ!」


 「入学してからカナデお嬢様は48回ほど転移魔法を使い、お菓子買いに行っているのは調べがついています。そしてそれらを残さず食べ、気にいった店には丁重なファンレターを書いているとか。カナデ様がファンレターを書いた店は繁盛するというジンクスがこの国のみならず、他国にも広がっているそうですよ」


 「初耳です!と言うか、若干気持ち悪いですバルミロ先輩」


 「情報戦こそ、わたしの得意とすることです。狙った獲物は逃がしません」



 アンタの指示かい、ガブリエラ先輩!!

 見た目は知的な深窓の令嬢なのに、完全な詐欺だよ。



 「でも、私は平民ですし……」


 「「ボク(アタシ)らも平民だよ?」」


 「えっ……」



 私以外の平民出身者に学園で初めて出会ったよ。



 「ボクらは旅芸人の子どもだし、国籍はないよ」


 「まっ、貴族の御手付きで生まれたわけだけど!」


 「「あははっは」」



 ノリ軽いな!



 「そう言う訳で、身分の心配はありませんわ。三日月の会の規則にもあるでしょう?」


 「「カナちゃんも入りなよ! 予算でお菓子食べ放題だよ」」


 「過去の優秀な先輩方が残した資料があるので、学園でのテスト対策も万全です」



 何そのおいしい特典!!

 どうしよう、良い所しか見つからないよぉ。



 「カナデ、一緒にお茶会を極めましょう。そう、お菓子と紅茶で世界を幸せにするのですわ!!」



 ――――女帝の言葉は私の心を大いに揺さ振った。



 「入ります……いえ、是非入らせて下さい。お菓子で世界征服するために!!」



 メラメラと私の中で何か熱く燃え上がる。

 多額の予算が出るのなら、色々出来る事があるよね。

 私の密かな野望……誰もが簡単にお菓子を買える世界を作るために!


 この世界はどうにもお菓子は高級品という部類に入る。お菓子屋さんの作ったものは確かに美味しい……だけどたまに前世で食べたチ○ルチョコや駄菓子なんかのチープな味が恋しくなるのだ。高級品もいいけど、庶民菓子も食べたい。それには色々とやらねばならない事があるだろう。甘味の元となる砂糖や蜂蜜の量産とかね!


 今までは御爺ちゃんの残したお金を無暗に使えないと一人悶々と考えていたけど、三日月の会に入ればそれが出来る。予算の力は偉大なり!それにテスト対策が魅力的すぎる。座学はいつも赤点ギリギリ、補習の常連だからね!



 「ふふふ、三日月の会は大型新人を迎えることが出来たわ」


 「お菓子について色々語りましょうね、カナデさん」


 「よろしくお願いします、カナデお嬢様」


 「「カナちゃん、よろしく~」」


 「はい、こちらこそよろしくお願いします。エリザベート会長、ガブリエラ先輩、バルミロ先輩、サーニャ先輩、サーリヤ先輩」 


 「今日は無礼講ですわ、オーッホホホホホホ!!」



 こうして私は三日月の会に入会した。

 この後、エリザベート会長が水の国の次期女王(リアル女帝だった)でガブリエラ先輩が風の国の侯爵令嬢、バルミロ先輩がすでに雪の国で伯爵位を継いでいて、サーニャ先輩とサーリヤ先輩が空の国の公爵家のご落胤だと知ることになる。


 け、権力者しかいないよ!!






―――――――――――――――――――――――――




 ロアナ「……同じ穴の貉ね」


 カナデ「お前が言うな!」




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