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おかんと親友シリーズ

親友のお母さんの攻略に移ろうと思います

作者: 遠山秋

僕の初恋は五才の時だった。


それは、楽しみにしていた入園式の朝に母が倒れ、代わりに父のお姉さんである妙子たえこ伯母さんに連れていってもらった幼稚園でのこと。


伯母がいても母や父がいない寂しさに少し泣きそうだった僕に、


「お名前はなんて言うの? うちの子は幸一郎こういちろうというのよ。」


と目線の高さを合わせて声を掛けてくれた、綺麗や可愛いという言葉が当てはまらない、ややふっくらした温かい笑顔の人だった。


そのときに思ったのは、この人は自分のオヨメサンになる人だという直感のようなもの。


雷を打たれたような激しいものではなく、穏やかなこの思い。


実母が教えてくれた、自分の運命の人であるという証だった。


それに気づいた当時の僕は、

「こーくんのママ、大きくなったらぼくのおよめさんにしていい?」

と思わず幸一郎に言ってしまった。


そして、前後して


「ぼくは、ゆきまるゆーいちだよ。こーくんのママさん!」


親戚一同から可愛い可愛いと言われていた、とびっきりの笑顔を幸一郎のママに向けた。


それから、同じ組になった幸一郎についてまわり、本が好きらしい幸一郎に本を貸してあげ、小学校に上がってからは『本を貸す』という名文のもと、ほぼ毎日のように家にお邪魔し、入り浸っていた。



このような日常が唐突に終わりを告げたのは小学校の四年生の頃だった。


産みの親である母が亡くなった為に。


母の葬儀には勿論花菜穂さんたちは来てくれたし、四十九日の法要も来てくれた。


それはとてもありがたい事だったけれど、親戚の一部に目をつけられるきっかけになってしまった。


これは僕のミス。


母さんから


「くれぐれも好きな人には迷惑をかけないように気をつけて。特に紫鳳と高宮は本家を狙っているから。」


と、死ぬ3日前に話したときに言われたのに。



目星はつけていたけれど、こんなに早く動きだ出すとは予想外にもいいとこ。


寄りによって末席に近い紫鳳家が、一人娘を僕に押しつけようとするなんて。


まあ、あの女の子は二人っきりにされたときに、


「わたくし、キラキラした顔立ちの人キライですから」


と言うくらいハッキリとしてるし、たまたま持っていたクラス写真に写ってた幸一郎にメロメロ(15才の中学生の女子が10才の小学生にメロメロでドン引きした)だから、婚約破棄する気満々の様だから問題ない。


対紫鳳で一番の問題は、幸丸家の血縁のあの娘の母親を紫鳳の当主から離れさせるかだ。


あの当主は頭がイカれてると言うくらい娘の母親以外を人ではなく道具としか見ておらず自殺に追い込まれた人はかなりの数がいて、あの娘の母親の運命の人じゃなければ、結婚の話が出る前に潰す予定だったらしい。



そして、高宮家は分家のなかでも一二を争う程にちからを持つ家だが、当主の弟(幸丸家と血が繋がってない方の)が当時40になるのにも変わらず未だに独身の為にその弟と姉さんと婚約関係を結ばせようとしていた。


まあ、姉は高宮家とトップ争いをしている幸村家の次男(当時28)と婚約してたのを公表したらなんとかなったんだけど。



その時に僕自身にとって面白くないことに、高宮家当主の弟が幸一郎の父親と言うことを知ってしまった。


花菜穂さんと偶然会ったアイツが


「俺の息子が生きてんだってな。仕方がないから引き取ってやってもいいぞ」


とか頭の可笑しいこと言って、普段穏やかな花菜穂さんがアイツの顔をビンタしてたのを見てしまったのだから。


それから、いけ好かないおっさんとしか思っていなかった、高宮当主の弟は俺にとって排除すべき敵と認識してすぐに身内の成せる業か妙子伯母さんにその事実がばれ、伯母さんの旦那さん(弁護士)やら伯母さんの子供たち(従兄妹(刑事と探偵))にばれてしまった。ついでに恋心も。


この出来事をきっかけで運命の相手って便利な言葉だと認識してしまった。


運命の相手のためなら手段を選ばないうちの家系。反対するどころか応援してくれるらしい。

しかも敵の後ろ暗い情報も集めてくれるらしい。


改めて考えるとうちの家おっかない。敵に回さないようにしないと、と思わずにはいられない一件だった。


それから、敵の後ろ暗い情報を集めるために時間が割かれ、以前より幸一郎の家に行く頻度が減ってしまった。


その分「大好き」という想いは伝えようと動いていたんだけど、花菜穂さんには伝わっていないようで・・・・・・


「すきって言ってくれてありがとうね。こんなおばさんに言わず、彼女さんに言ってあげなさい。」


とか


「おばさんをからかうんじゃありません。」


とか言って華麗にスルーというか恋愛対象に見てもらえてないという状態であった。


そんな状態を完全に脱却すべく、ちょっとした雑談をした際、花菜穂さんがいっていた「何ヶ国語も話せる人ってかっこいい」「料理できる男の人にあこがれる」の言葉を頼りに高校は語学が盛んで留学支援のある高校に入り、卒業してからは調理師になるための学校に入った。もちろん家族に大反対されたけど、「運命の人」という魔法の言葉を出したら最後には認めてくれた。そしてその学校を最短で卒業した僕は、花菜穂さんと以前行った料理屋さんに弟子入りした。


弟子入り後一年たったころ、従兄妹たちから


「敵を刑務所にぶち込めそうなネタを手に入れた。匿名で警察に連絡しとくから、お前は運命の人早く捕まえろよ」


という連絡が来た。


そこで幸一郎に本格的に動くことを伝え、婚約者(仮)である紫鳳八恵さんに破棄したいこと、幸一郎と会わせてやるから協力しろ的なことをいったら、「縁を切って幸一郎様の元へ行くわ」と答えになっていない返事をされたため、了承したと判断した。


それが良かったのか悪かったのか幸一郎と八恵さんをはじめてあわせた後一週間で八恵さんは花菜穂さんの家に転がり込んだそうだ。


それを知ったのは転がり込んで一ヵ月後のことで、実家の会社の新部署設立のために会社と職場と自宅を往復する日々で花菜穂さんちに久々に行った際に知った事実である。そのときには八恵さんは幸一郎の婚約者までになっていた。


この一連の流れは幸一郎には僕が計画したことだと認識しているようだが、実際には彼女が勝手にやったことだ。しかしその方が都合がいいので(断じて八恵さんが恐い分けではない。)誤解したままにしておいた。


それから何も憂いがなくなった僕は、少しづつ大胆にアピールして行った。


幸一郎と旅行にさっそったり、酔った振りして〇〇したり、

その積み重ねで一年以上かけて恋人という地位を手に入れたわけで、花菜穂さんを溺愛して何が悪いと幸一郎には言いたい。


で、結婚式は不本意ながらWウエディングとなった。八恵さんが幸一郎に逆プロポーズし了承を取ったのが丁度結婚式場探しを始めた頃だったことと、八恵さんのことを娘のように可愛がっている花菜穂さんが、一緒に式を挙げたいと提案をしたからだ。


その後は実に充実した日々だといえる。


まあ、幸一郎たちと同時期に子供が授かるとは思わなかったが。


これにて幸一郎のお母さんの攻略は終了した。




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