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ぽっから  作者: 野良丸
12/12

おっぱいミサイルを考案した人ほどの鬼才を僕達はまだ知らない



「それでは開催します! 第一回!」


 俺達以外誰もいない放課後の教室。その中央に机をくっつけて座っているのは、俺、杉本、一瀬、高丸の四人。それぞれの机には俺が配ったノートが置かれているが、これは断じて勉強会などではなく、


「オリジナルロボット選手権~!! パフパフ」


 である!!


「っというわけでねっ! 始まりましたよ、オリジナルロボット選手権! それでは選手の方々に意気込みを聞いていきましょうかねっ。エントリーナンバー一番、杉本正太郎様! こんにちは!」

「さようなら」

「帰らないで!」


 鞄を持って立ち上がろうとした杉本の腰に手を回して逃走を阻止する。こっちだって必死なのだ。


「今日の夜までにオリジナルロボットを姉貴に提出しないと俺はゴキブリ以下になっちまうんだ!」

「私と妹の中ではもうその位置だよ」

「一瀬様!?」

「てゆーか何なの? オリジナルロボットって」


 エントリーナンバー三番高丸様が頬杖をつきながら言う。


「亜希、ロボットっていうのはね」

「そこは知ってるよ!!」

「高丸、オリジナルっていうのは日本語に訳すと」

「そこも知ってるよ!!」

「訳すと……なんなんだ?」

「あんたが知らないのかよ!!」

「いや、でもオリジナルってそのままで意味が伝わるし、なんか半ば和製英語化してるような気がしないか? ちなみにオリジナルって日本語でなんて意味なんだ?」

「えっ? えっと……、紗綾、答えてやって」

「ノー」

「くっ! 当て付けのように英語を!」

「スマホで調べてみたが、『最初』とか『根元』とか『起源』っていう意味らしい。だが普段耳にしたり目にしたりする『オリジナル』の使い方は果たしてこれに乗っ取っているか?」


 杉本の問い掛けに顔を合わせる一瀬と高丸。


「確かに一考の余地はありそう」と一瀬。

「そうだね」と勝ち気な笑みを浮かべて同意する高丸。

「よし」と杉本もどこかテンションが高く見える。

「今日の議題は『オリジナル』の和製英語化についてだ」

「ちょちょちょーい!!」


 なにか? とでも言いたげな目を向けてくる三人。


「ちょっ、ちょちょちょーい!!」

「なんだよ」と杉本。逆ギレもいいところである。

「キミタチ! ココニ! ナニシニキタノ!?」

「え? なに? ロボット選手権って自分達がなりきる感じのアレなの?」

「チガウヨ!!」


 ふっーと大きく息を吐いて心を落ち着ける。まだ何も始まってないのにすごく疲れた。


「姉貴のサークルーーーー漫研なんだけど、そこで募集してんだと。メンバーにはノルマがあるんだけど、姉貴メカメカしいの苦手で、ついでにやる気もでないから代わりに俺に書けって言ってきたんだけど、俺、絵描けねぇし……」

「それで俺達に描かせようと?」

「もちろん無料ただでとは言わねぇ!」


 ポケットから取り出した財布を机に叩き付ける。


「俺の全財産だ! これで手を打ってくれ!!」


 すっと伸びてきた杉本の手が財布を取る。


「あっ」

「残金四百六円。三人でジュース飲んだらなくなるな」

「あの雑誌買わなかったら千円以上残ってたのにね」

「一瀬様!? 何の話ですか!? 一瀬様!? 一瀬様!!」

「ううん、なんでもない」

「そうでございますわよね! 流石は一瀬様!」

「ところで私、ロボット描いた」

「本当ですか!? ありがとうございます!」


 さっきから何かカリカリしてると思ったら! もー、一瀬様ったら本当にクーデレなんだから。

 一瀬様は開いたノートをフリップのように持つ。

 絵はどこか少女マンガチック。ロボットも一目見ただけでは人間と変わらない、普通の女の子だった。ページ下部には詳細設定まで書かれている。


『名前 ロリボットちゃん

 年齢 十一歳

 好きなもの お兄ちゃん、お風呂

 嫌いなもの おばけ

 口癖 『お兄ちゃん、一緒にお風呂入っていい?』

 お兄ちゃん 真野君』


「一瀬様ぁ!!」


 叫びながらノートを取り上げる。どうやら杉本と高丸はまだ最後まで読んでいなかったらしく俺に抗議してきたが、ここは断固として受け入れず、そのページは破って没収した。


「なんなの、真野」と高丸は口を尖らせながらも「私も描けた」とノートを見せてきた。

 そこには四角形のみで形成された、いかにも旧型なロボット。ありがちだが、しかし漫画のストーリー次第ではありかもしれない。


『うぃき男 なんか聞くとウィキベディアで検索して答えてくれる』


「あれ!? スマホでよくね!?」

「たしかに」


 高丸があっさり納得すると同時に杉本がノートを立てる。


「俺も描いたぞ」


 丸っこくてツルツルしたフォルム。なるほど。最新型の人型ロボットという感じだ。スーツを着ているのもシュールで面白い。


『スマ男 最新型スマホと同等の機能を搭載している』


「だからスマホでよくね!?」


『ただしアルコールを与えすぎてはならない』


「なんだこれ。こんな如何にもなロボットに酒をやるアホはいないだろ……。いや、でもこういう設定はいいかもな。暴走設定ってやつ」

「まぁ暴走といえば暴走だな」

「どうなるんだ?」

「公園で全裸になる」

「『スマ』違い!!」

「ちなみに個性を出すために他の特徴も何個かあってな、代表的なところを挙げると、歌が下手、俺様、なんか絵が怖いなどがある」

「なんで悪いとこ取りするの!?」


 バンッ、と机に両手をついて三人を見回す。


「お前ら! 本気で考えてくれ! 俺の人としての尊厳がかかってるんだよ!!」

「って言われてもな。じゃあなんかせめてヒントくれよ。インスピレーション沸くような」

「くっ、スマ男一つ描いただけでクリエイターぶりやがって……!」


 だがヒントか。確かに俺も求めるだけでなく何か考えるべきだろう。今の三人の絵を見るに、人型ロボットの方が描きやすそうだし、それならーーーー。


「人型ロボットを描くなら、それに適した能力を持たせたらいいと思わないか? 例えば犬型なら匂いセンサーが凄いとか、足が早いとかって感じで、人型ならではの能力が欲しいな」

「なるほど……」


 三人は頷いた後、ひとところに固まって相談を始めた。なんか疎外感。別に俺を混ぜてくれてもよくね?

 そんな孤独に慣れ始めた頃、三人が一斉にこちらを向いた。


「できたのか!?」

「あぁ」


 杉本は頷き、ノートを手渡してくる。

 元は杉本の絵だ。丸っこいフォルムのロボットがスマホを持っている。


『スマ男2 スマホが使える』


「俺も使える!!」




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