刺繍30日目【中野五月/五等分の花嫁】500の作品を越えて至る一針の極地。中野五月に捧げた「時間課金」の記憶
【大いなる一針の記録(運針解析)】
通算500作以上の刺繍を世に送り出してきた中で、私が一貫して掲げている哲学がある。「刺繍とは、効率化を拒絶した『時間課金』の儀式である」ということだ。
イラストの世界なら、デジタルブラシや攻略法で描画時間を劇的に短縮できるかもしれない。しかし、我々が手にするのは1本の針だ。極細のミリペンで広大なキャンバスにドットを打ち込んでいくような、愚直なプロセスの連続なのだ。時間を注ぎ込まなければ、刺繍は決して完成しない。
今日紹介する過去作は、『五等分の花嫁』の中野五月。アニメではなく、原作漫画のあの学食のシーンがすべての始まりだった。風太郎の「焼肉定食、肉抜き」という貧乏メニューに対し、大食いで生真面目な彼女が繰り広げたコミカルな問答。あの数ページで脳裏に電流が走り、気付けば書店で全巻を掴んでレジへ走っていた。
そんな熱量をそのまま針に込め、ミリ単位のステッチを幾重にも重ねて仕上げたお気に入りの過去作。今見返しても、かけた時間の分だけ、当時の凄まじい執念が鮮烈に蘇る。
【本日の燃料補給とサバイバル】
刺繍の手を休め、今日挑んだのは大地とのガチンコ勝負、すなわち「今年のじゃがいも収穫」だ。前々から地上部の木が完全に枯れていたので嫌な予感はしていたが……結果は、見事なまでの大惨敗。ほとんど実が取れず、本当に残念な結果に終わった。
だが、戦いはここで終わりではない。今年の栽培は失敗したが、過去の遺産(居残り組)のおかげで、今年食べる分のじゃがいもは十二分に確保できる計算だ。失敗を過去の蓄積がカバーする、これだから土弄りは面白い。
【はりぃの脳内マインドフルネス】
なぜ、これほど非効率な作業に時間を投資し続けるのか。それは、時間をかければかけるほど、繊維の奥深くに「愛おしさ」という名の魂が宿るからだ。
ミリペン感覚でちょこちょこ進むあの時間が、バタバタしがちな私の心にとって、一番落ち着ける「凪」の時間。時間を課金した者にしか到達できない、深い愛着がそこには確かにある。
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