刺繍29日目【ポムケン/『ポケットモンスター ウインド・ウェーブ』】【土と一針のトポロジー】ポムケンという名の淡い灯火、忘却の底から芽吹いたイモ、そして緑の獣と風になる午後。
■針に宿る、まだ見ぬ物語
「ポケモンはあまり詳しくないけれど、好き」。そんな私が、去年『ポケモンスカーレット』のエンディングで大号泣したのは、今ではいい思い出だ。今回は、まだ見ぬ新作『ポケットモンスター ウインド・ウェーブ』の火タイプ御三家「ポムケン」の刺繍。犬のような愛らしいフォルムを見つめながら、「進化したら凶暴な野犬になるのかな」なんて想像を膨らませる時間が愛おしい。歴代の火タイプには「干支の法則」があるらしいが、私が知っているのはヒトカゲとヒノアラシくらい。それでも、一針ごとに命が吹き込まれていくポムケンを見ていると、自然と笑みがこぼれてしまう。
■大地の落とし物、奇跡の恵み
針を置き、畑へ目を向けると、今年はちょっとした大事件が起きていた。草むしりを怠ったせいで、今年のジャガイモの木が途中で枯れてしまったのだ。「一年間の食材が……」と頭を抱えたのも束の間、奇跡が起きた。なんと去年植えた場所の「残り芋」から力強く木が生えていたのだ。試しに引き抜くと、そこには立派な大玉のジャガイモが。葉が黄色くなる本格的な収穫期まであと少し。今日はダメになった今年の分の生存確認をしつつ、土と向き合う予定だ。
■風を切る、我が家のトラちゃん
そんな畑の相棒、メンテから戻ったトラクター(通称トラちゃん)の調子は最高だ。ロータリーの刃の回転数が上がり、サクサクと土を耕すその姿はまさに「畑無双」。小回りが利かなくなり、カーブが大回りになるという短所はあるが、そんなものはパイロットの腕でカバーすればいい。レバーを握り、風を切って畑を駆ける瞬間は、何物にも代えがたい快感だ。
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