悪役に転生したけど、僕以上にヒロインが悪役をやってるんだけど?
えーと、うん、僕は悪役に転生した。
そう、僕は悪役になったんだよ、そのはずなんだけど。
…悪役の僕以上にヒロインが悪役やってるんだけどどうしたらいい??
ことの始まりは3年前に遡る。
ある日、僕はテンプレのように頭をぶつけて前世の記憶を取り戻した。
頭をぶつけたのは親が暴力を振るっていたからと言えばわかるだろうか。
悪役の中でも自業自得な悪役ではなく不憫な悪役に転生したのだ。
まあ、普通なら善人になってヒロインと結ばれる王道ストーリーのはずだったのだ。
そうはならなかったが、僕はヒーローと仲良くなった。
そして、親は断罪された、それが1年前。
そして、なぜか今、僕は攫われている。
……なぜ????????????
いや、予想しておくべきだったとは思う。
一応こんなシーンも原作にあった、あったが、攫われるのは原作ヒロインであって僕じゃない。
ヒロインの代わりに僕がというわけでもないはずなのだ。
だって、この時、ヒロインを攫うのは悪役、つまり、僕の役割だったから。
だから少なくともこの事件だけは起きないと高を括っていた。
だってそれはつまり……。
、、、、、、、、、、
そういうことだもんねぇ!
目の前にいるのはヒロイン、原作ヒロインだ。
おかしいな???なんでここに原作ヒロインいるんだ??
原作悪役、つまり僕はスペック高い系の悪役だった。
国の裏組織を牛耳るくらいには、
で、原作ストーリーと同じなら原作ヒロインが原作の悪役と同じ道を辿っているわけだ。
いや、まあ、考えたことがなかったわけじゃないけど。
ヒロインと悪役、僕たちは真逆の存在だったが、あまりにも共通点が多すぎた。
まず、親に虐待されている。私生児でありながら唯一の跡取りだったりすること。異様にスペックが高いということ、などなど。
まぁ、結局はヒロインの方が勝つわけだから、ヒロインとヒーローのスペックの方が高いんだけど、理不尽!
世界はやっぱ、ヒロインに甘いのだ。
羨ましい。
「かわいい」
と言ったのは僕じゃない、ヒロインだ。
あぁーなんでちゃんと原作通りの悪役セリフいってるんだ。
かっんぜんにあれじゃないか!
まず、原作について解説すると、悪役、僕がヒロインを攫う理由はヒーローと一緒にいるヒロインが気に食わないとかじゃないのだ。
…逆、つまり、悪役がヒロインに惚れているのだ。
つまり、逆に今回はヒロインが僕に惚れているということか?
もう、どうにでも慣れと思い、原作通りのセリフを言う。
「んっ、ここどこだ?あんた誰だ?」
「かわいい」
…うん、話通じないね!無理だね!諦めよう!
まあ、そう思ってもどうしようもないけどさ。
「お前は誰だ?」
「かわいい」
そろそろ、かわいい以外の言葉喋ってくれないかなぁ!
…てか、ここ、ヒーローたちが助けに来るはずなんだけど、無理だよねぇ。
「何するつもり?」
「ずーと一緒にいようね」
はい、話が通じない、なんでぇ?
「えっと」
「かわいいね」
あっ、目がいっちゃってる、やばいやつだ。
よし、とりあえず原作道理に調整しよう。
「なんのつもりか知らないが、みんなが助けに来てくれるから無駄だ」
「みんな?」
「王太子殿下たちのことだ」
まあ、別に期待してないけど。
「ルーカス王太子殿下、側近のアーク公爵子息、カイル宰相子息?」
「そうだ」
「無理だと思うけど?」
「へ?」
「ルーカス王太子殿下は今外国への留学の件で忙しいし、あなたの手紙を偽装してしばらく会えないって書いたし、アーク子息も王太子殿下と一緒に行くから忙しいし、カイル宰相子息は父親の宰相の地位が危ぶまれていてそれどころじゃないもの」
「え?」
いやいやいや、まあ、別に助けを期待してたわけじゃないけど、原作の悪役、ここまでしてなかったよ??
助けが無理なのはわかっている、だって僕はあくまでヒーローたちの友達ポジにこそなれてもヒロインになることは物理的に不可能だから。
「ね?無理でしょ?」
「えおぉうぇ?」
「かわいい」
…やばいっしょ。
……あれ?いや、普通に詰んでね?
『悪役に転生した私以上にヒロインが悪役をやってるんですけど????』主人公が転生したのが悪役令嬢だったバージョン。女主人公。百合です。