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廃村に佇む澱み

勇気を引き出せる人は言葉巧みに操るのではなく、行動で魅せて勇気を与える人を勇気のある人だと僕は定義づけたい。

どうだい、春樹。


それは違うね。だって人間の根源は───

しばらくこの光景を目に焼き付けておこうと、照らされた建物の代わり映えを眺めていた。


「なんだよこれ」

「廃村?(ツタ)が多過ぎて蔦が建物なんじゃねーのってくらい」

「進むぞ」


進んだ先にあった竹林をずっと突き抜けるとここがあった。やはり井戸なんかないのでは?そう思っていた。この考えは夏樹もそう思っていただろう。 


「なぁ、春樹…それやばくない?」

「確かにな…空気が異様に重い。来るなって言われてる感じだ」


その通りに廃村の雰囲気は人を寄せ付けない、なんなら(タヌキ)(イノシシ)とかの動物すらも寄り付かない場所だと入った途端から感じるものだった。


「昔、この廃村にも()()()()が信仰されていたのならおそらくタタリにでもあって壊滅したんだろうな。」

「でもさ、なんでここは壊滅したのに俺らの村で龍神伝説なんて語り草にされてんのさ」

「わからない、きっと誰かが持ち行ったんだろう。」


もしこのまま無事に帰れたのなら村の人達一人一人に直接話を聞いたほうがよさそうだな。

骨は折れるが、必ず吐くものは現れるだろう。


「進むぞ、謎を突き止めるんだ」

「ええ…ちょ、待てよ置いてくな!」


墓地を見つけた。花は枯れ、蜘蛛の糸が張っている、墓石は曇ってほとんど字が読めたものではないが読めるものだけ。

柏木サチコ、享年75歳。嶽山寛次郎、享年86歳。

福島匡太、享年54歳。森嘉チエ、享年96歳。


森嘉?!森嘉って…楽ちゃんと加奈ちゃんとこのじゃないか!

夏樹にそう伝えると驚きを一周した表情をしていた、言えば愕然を越していた顔。


「まさかさ、龍神伝説を伝えたのって森嘉さんってこと?」

「そうなるな…この村出身だったとは驚きを隠せないな。」


享年96歳はもしかしてそのおばあさん、ひいおばあさんの代以降までの語り草だったってことか。

江戸って言ってたっけ、あの伝説。


「浸るのはいいけどさ、ここ墓地なんよ不吉じゃん?空気重いじゃん?幽霊出そうじゃん?」

「あぁ、ごめんな」


そう返事はしたがおもむろに墓石を軽く撫で上げる。

軽く触れたつもりが思ったより力がこもっていたのか位置がズレた。


「ぬわぁ!おい春樹!不敬だぞ!」

「そういうなら無礼じゃないか」

「ニュアンスは合ってる」

「向こうが偉いか偉くないかの違いだ」

「にしてもだろう?早く元の位置に戻そうよ」


そう言って2人で持とうとしたが軽く触ったのを思い出してか、夏樹にやらせた。


「なんで俺がやるんだよ」

「それ軽いから、納骨室の蓋の石の重さは50kgからだまず軽く触ってずれるようじゃ粗悪な墓か風化したものだろう。管理人がいないからな、そのどっちかだ。」

「確かに軽いな、なんでだろうな」


墓石の素材を即座に採取、加工、設置までに至るまでのスパンが短いのかもしれない。

いや、別に墓に詳しくないからそんなに言及はできない。


「強いて言うならその当時の死者がとてつもなく多くて埋葬が大変だったんだろう、その証拠に戒名板(かいみょうばん)を見てみろ。没年が一斉に集中してるだろ。つまり質のいい、若しくは弔うほどの墓石を作るには十分の素材と人手が足りなかった結果だと思う。」


大体の結末はこう浮かぶだろうと思っていた。

しかし夏樹は何を考えていたのかすごく妙に気持ちを込めて感心していた。


「だけどさ、なんであの墓石は上質そうな素材を使っているのかな。」


指をさす方に首を傾けると確かに明らか質の違う墓が鎮座している。


「こりゃたまげたね、もしかしたら村長の墓なのかもね。だとしたら相当立派な村長だ。」

「しかも見てこれ、蝋燭、これまだ使えない?」


そこには溶け残った蝋燭が燭台に3本突き刺されていた。しかもその溶け残りの垂れてるところが少ない。


「明らかに誰か来てるね()()()

「まじかよ…早く出ようぜ、母ちゃん達心配してら」

「そうだが、秘密を知らにゃ家には帰れないでしょ」

「だから!秘密を知る前に河童になって帰ってくるってさっきも言ってたじゃん!」


夏樹もだいぶ動揺してきている、一刻も早くここから脱出したいのは僕もそう思っている。

夏樹もその気覚悟で同行してるんだから。


「かまわん、俺だけ河童になればいいだけだろう」

「よかねぇよ!一緒に生きて帰るんだろ?」


自分も気が動転しているのかこの行く先を進むという選択肢以外残されていないように感じる、なんなら自分から他の選択肢を消してるまである。


「すまん、少し休ませてくれ。」


そう言って崩れかけた家の縁側に座った。


「にしても大概春樹もよくそんなとこに座れるな」

「流石に塗装中のベンチには座らんがね」


そっか、と言って隣に座ってきた。

思い出すなぁ、おばあちゃんが西瓜と麦茶を持ってきて縁側で一緒に食べたな…


思い耽ったままどうやら寝ていたらしい。

起きろ、起きろという声が聞こえてくる。


「はぁー。まったく気がつけば寝るんだから。」

「どのくらい寝てた。」

「10,20分くらい?」

「仮眠ってとこか」


普段この時間には仮眠をとっているので大して普段してることとは変わりないが…

なんだろう意識が遠のいていく。


「なぁ立ち眩みみたいなのしないか」

「立ってないじゃん」

「そうじゃなくて…」


鈍い音をさせながら床に頭を思い切りぶつけていた。

軋む音と騒ぐ音しか聞こえない。

何が軋んでるんだ?床?


「なぁ、何騒いでるんだ落ち着けよ何で立ってるんだよ」

「え?俺ずっとここにいるけど」

「──は?…」


一体何が立っているんだ…恐る恐る朦朧とした意識のまま首を上に傾けた。同時に夏樹も左上にぎこちなく動かした。


───ギィ

俺達はすぐそばの立っている正体に目を向け、細めた。

暗いからなのかよく見えなかった。瞬き。

そいつは瞬く間に半歩分軋ませた。着実にこちらに近づいてきている。


小声で耳打ちしてきた。


「春樹!逃げるぞ!」

「待ってくれ、今起き上がる。」


まただ、また視界がボンヤリとした。すぐに両手で目を覆った。歯を食いしばり、死を覚悟したまでだ。

早く!早く!早く!治れ!治れ!治れ!

念じたが吉だったのか手をほどいた時には目眩はすっかりと治っていた。

密かに脱ぎかけの靴に手を伸ばし、履き直して準備万端。縁側から腰を浮かせた。

何があってもすぐに逃げ出せる。


──次の瞬間、俺と夏樹の肩に手が触れた。

二人のものでもない第三者の手だ。

思わず顔を引き攣り、絶叫した。

しかし、その手の声は女の声だった。優しく、声をかけた。


「は?女の子?」


見えない中、感覚で夏樹と顔を合わせ、その声の主を照らした。


「眩しいよ春樹くん。」

「そんな顔しないで夏樹。」


そこにいたのは楽ちゃんと加奈ちゃんだった。


「どうしてここに…」

「どうしてって、河童、見に行ったでしょ。」

「あの時に加奈達、いたんだよ」


言葉を失った。2人がこの場にいることや姿を確認できた驚きに以上に肩に手があったこと、これの右に出る出来事は今のところない。

もう唖然としている、なんというか心拍数が上がりすぎてる気がする。


「ちょっと待って…息を整えさせて…」


夏樹と一緒に胸に手を当てながら息を整えている。

やばいよこれ…そう言いながら夏樹は微笑している。

微笑は作り笑顔なのだろう、全然顔が引き攣っている。


「追いかけてきたの?」

「そうだよ、心配になっちゃったから…」

「危険を冒してまで?」

「加奈達もお手伝いできたらなって」

「皆死んじゃうよ!馬鹿言うなよ!」

「そうだよ、女の子だけでも!ほら、帰った帰った!」


手のひらをヒラヒラして帰路につくのを促した夏樹。

そう言うと2人ともシュンとした顔をした。

そこまでして僕たちと共に行動したいのか。

全くもって理解できないよ。

少し泣いた顔で涙を拭いながら話した。


「─きな──もん」


声が小さくてはっきりと聞こえなかったからもう一度催促するがそっぽを向いてしまった。

まるでもういいよと言わんばかりに、ヒラヒラされてしまった。

夏樹は何かを聞き取ったような顔をしてこちらを見ている。


「なんだ気持ちが悪い。こっちを見るな」


薄気味悪い笑みを浮かべながら少しずつこちらに顔を近づけてくるのにはたまったものじゃないと顔を手で抑えた。

軽めに押さえていたのですぐに拘束を解かれ、腕を振りを落とされた。またニマニマと気持ち悪く笑った。


「へへへ、春樹!君ってやつは本当に本当に鈍感なやつだ。気持ちに対してはノロマだな。」

「貴様っ!気色が悪い!やめろ」


それをよそに森嘉姉妹が笑顔でこちらを見ている。

まるで仏様の笑う顔みたいだ。

刊行してから一ヶ月経っちゃった。

そしてイベント終わるのあと1週間弱なのがヤバイよね。

仕事ばっかしてて不健康生活してたら書くこと考えてなかったよね。

以後気をつけます。

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