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伝承は本当だった


──もうやめて!その話はおよし!


村の禁忌を犯した者は漏れなく残酷な姿に変貌。

狡猾な犯行かと思われるが生憎、伝承は本当だった。

龍神伝説…長のみぞ知る真実。

「父ちゃん!母ちゃん!大変だよ」

「おぉ!無事に帰ってきてくれてよかったよ守。」

「守、心配したんだからね」


一生懸命に家に一直線で帰ってきたもんであまりにも酷く疲れた。

膝をついて息をゼーゼーと上げた。落ち着くまであまり時間は要らなかった。

父ちゃんと母ちゃんは駆け寄って背中を擦ってくれた。


「あぁ、分校にいた子どもの失踪事件だろ。」

「うん、心配だから帰ってきたんだ。」

「あれな…なぁ、言わなきゃいけないか?」

「大人の内輪でイソイソしてたら駄目だし…」


龍神伝説かな?それとも不審者?神隠しだったりして。

とにかく僕は父ちゃんとの約束、甲虫を捕まえることが叶いそうにないことも悔しさの一部となった。


「龍神様?」

「かもな、誰かが禁忌を犯したのかもな」

「きんき?」

「あぁほら、森の井戸。聞いたことあるだろ?」

「うん、水を汲み上げて飲んだり、そこに近づくだけでだめなやつでしょ」

「合ってるわ、それをした人がいるかもってことね」

「村の禁忌に神隠しも入っているんだ。村の誰も彼も、不特定多数、無作為に、男女関係なくに神隠しに遭うらしい」

「わかんないや」


Aさんが水を飲んだとすると村の人たちが無差別的に神隠し、つまりいなくなっちゃうということらしい。

1人がいなくなることもあれば2人、3人がいなくなるリスクがあるということ。


「とにかく、関係のない外出は控えることにしよう。」

「そうね…」

「それじゃお外行けないの?ようちゃん達に会えないの?」

「そうね」


◆◆◆


「なぁ、おい!春樹!」

「あぁ?なんだよ夏樹、こんな時間に起こして」

「なんか、外、騒ぎになってるぞ」

「この暑さでついにおかしくなったか」

「やかましいわ、いや、本当だってそんな言うならお前が見てみろよ」


2階の寝室から直接見える河を眺めてみた。

灯りが見える、人だ。


「おい、いくぞ夏樹」

「おう」


自宅から河は目と鼻の先なのですぐに着いた。


「おいおい、これは河童か?」

「おめぇ、そんなン信じてんのか?」

「干からびてるやろ、しかも子供並みの丈だ。」

「なんで、打ち上げられてんだよ…」


河童?そんなのうちの村の伝説にはないぞ?


「なぁ、これよ…」

「かもしれんな」


これは、河童じゃなくて龍神伝説なのかもしれない。

皮膚が絞られたようにシワシワ、服はなんにも着てない、おまけに手に持っているものは変な石。

これは河童と間違えてもしょうがないのかもしれない。


「落ち着いてください、これは河童ではありません。これは…龍神伝説(たたり)なのかもしれません。」


全員が息を呑んだ。当たりは感覚冷えつき、皆が凍り、背筋がシャンと伸びた気がした。


「おそらく、森の奥へ…」

「そんな…」


隣の母親は我が子のように哀れみ項垂れた。


「そういや、夕方頃林の方でカサと音が鳴ったと思って振り返ったらこいつくらいの背丈の子供っぽいのが去っていくのを見たぞ」


鍬を持ったおじさんが言った。こいつというのは河童の事だろう。


「それならわしも。わしは昼頃だが稲の苗の数を数えていると林で子供が向こうへと駆けていくのを見たぞ」


指を差しながら向こうを指した。向こうというのはおそらくだが森の方だ。


「なぁ、春樹…これってさ」

「おじさんたちが見たのは多分こいつだ。」

「だよな!そうだと思った」


多分、元は河童じゃない、これは確実。村の子供だというのを確実だろう。

だが、なぜ子供は森の方へ行ったのだろう。


「とりあえず!禁域前まで調べてみよう」

「おめぇ、それは危ねぇよ。」

「おめぇさも帰れなくなるぞ」

「でも…」


顎に手を当てて考えてる風を出してみる。

心配しているのか夏樹が顔をのぞかせてきた。


「俺らも行ってみよう。禁域へ」

「春樹…駄目だって、おじさんたちも言ってたろう?

帰れなくなるよ。井戸に近づかなくても神隠しにあうんだよ?帰ってこれても河童みたいになるよ。」

「分かってるさ。そんなの分かってる、でも突き止めないとそれこそ駄目だ。」


夏樹は黙って声にならない声を出して俯いた。


「そんなに不安か?」

「不安さ、超不安!帰ってこれる保証がないところにいざ行こうって言ったって…不安でしかないよ!」

「そうか、ならいい置いていく俺一人でも行く」

「あぁ!そうやっていつもぉ!」


ポケットに突っ込んだ両手のうちの右手を出して()()()()()()()()と言わんばかりにひらひらと振った。こうしなくても俺が行動すると必ず夏樹はついてくるので案外チョロい。


早速懐中電灯を取りに家に戻る。夏樹は外に置いたままで引き出しから電池と懐中電灯を取り出した。


「お待たせ、行こう」

「本当に本当に行くの?」

「しつこいな、行くしかないだろう準備した手前行かないわけがない。」

「母ちゃんにバレたらやばいよ」

「どうせ消えちまうならバレても構わんだろ」

「春樹と一緒に家に帰りたいんだよ」


こういう言葉には呆れるほど弱い。目が潤んで服の袖を引っ張ってくる。こういうのはあざとい?とでも言うのかイマイチ男子高校生がこんなことをしていたらきまりが悪くてしょうがない。


「怖がりなのは仕方ないが近すぎないでくれ動きづらい」

「ああ!すまん今離れる」


なんやかんやあって森の前まで着いた。

なにかないかと入り口あたりの草などに光を照らして物色した。


「夏樹、何をしている。何か探せよ、手がかりになるかもだろ」

「あ、うん」


灯籠の欠け端?神社なんてこの村にあったっけ?

枯れ葉?今は夏だぞ、枯れることはないはず。

鍬の耕す部分と棒が分解されている、看板…

探す度にかなり動いている。ズンズン突き進むと色々見つかる。


「春樹!行き過ぎなんじゃないの?」


夏樹の言葉には目もくれずに黙々と探し続ける。


「なんか、変な石あったよほら勾玉みたいな」


勾玉…あの河童が待っていた石と変わらない形。

思っても見なかった報告なので飛びつくように駆けた。


「見せろ」


なんの変哲もない普通の石で作られた勾玉。

光を当てて調べてみても変化はない。夏樹には返さずにポケットに突っ込んだ。


「進むぞ」


もはや何も言わずに俺の言うことだけを聞くだけの人間になってしまった。


奥へと突き進むと衝撃的な光景を目の当たりにした。

連載していますが、いずれかは見やすいように短編バージョンのも作ろうかと思います。

総集編みたいな感じですね。

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