表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第四章:心スポ探訪編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/185

第97話『三十五の墓標――常山城跡にて(中編)ー激闘ー』

先に言う……やり過ぎた……

 山頂付近の空気は重く、澱んでいた。


 朽ちた石碑の前で、結は目を閉じ、静かに膝をついた。

まるで何かを“聴こう”としているように見える。


「……結先輩?」


 愛菜の問いかけに、修が小さく首を振った。


「見えてるんだ……いや、視せられてる」


 その言葉の通り、結のまぶたの裏に広がっていたのは、かつての戦場の記憶だった。


 ――天正三年。

常山城が炎に包まれていた。


 迫りくる敵兵達。

 その中を、白と赤の陣羽織をまとった三十四人の侍女達が、鋭い槍と太刀を手に走っていく。


 先頭に立つのは、若く凛とした女性――鶴姫。


 その眼差しは、決して逃げない者のそれだった。


「女の人達が……戦ってる……」


 結が呆然と呟いた。


 だがその姿は結の中に留まらず、他の者達の周囲にも、徐々に霧のような幻影として現れ始めていた。


「こ、これは……」


 浜野が驚きの声を漏らした時、修の背後を、何かが駆け抜けた。


「っぐ……!」


 痛みが走った。背中に鋭い衝撃――斬られたような感覚。


「雨城君!」


 結が駆け寄り、修の背中を見て息を呑む。

 服が裂け、その下には赤い線がうっすらと浮かんでいた。


「……物理的にやられてる。これ、ヤバいタイプだ」


 修が苦笑気味に言う。


「しゅーくん……!」


 愛菜が青ざめた表情で駆け寄るが、その目が突如として虚ろになる。


「……あの男達だけは……絶対に、許せない……」


 声が変わっていた。

 愛菜の身体がまるで誰かに乗っ取られたかのように、震えながらも動きを止めない。


「愛菜ちゃん!?」


「……討たなければ……あの夜の、無念を晴らさなければ……!」


 修が駆け寄り、肩を掴もうとしたが、愛菜の目が真っ白に濁っているのを見て、すぐに手を止めた。


「ノクス!」


「ニャッ!(今だ!)」


 黒猫が一声鳴いたその瞬間、闇が揺れる。


 ノクスの身体が淡い光に包まれ――その姿が変わっていく。


 黒衣の青年。

 漆黒の髪に血のような真紅の瞳。

 背には黒翼、どこかしなやかな鋭さを湛えた存在。


「……お久しぶり。おれの“真の姿”、見せる時が来たようだね」


 青年のノクスが手をかざし、愛菜の額にそっと触れた。


「……目を覚ませ、愛菜。キミの心は“ここ”にあるだろう?キミに囚われのお姫様は似合わないよ」


 すると、白濁していた愛菜の目が、じわりと涙をにじませながら、元の瞳の色に戻っていった。


「ノ、ノクス……?」


 愛菜は意識を取り戻し、彼を見上げると、驚きと安堵が入り混じった声を漏らした。


 しかし、安堵も束の間だった。


「ぐ……がっ……!」


 浜野が呻き声をあげ、頭を抱えてうずくまった。


「……先生!?」


「体が……勝手に……っ!」


 その体が震え、筋肉が軋む音が響く。

 彼の“強化改造された腕”が異常なまでに発光し始めた。


 浜野の腕が脈打ち、機械仕掛けの筋肉がきしんだ。


 《システム警告:制御不能。暴走モード移行》

 《自律戦闘プロトコル・アクティブ》


「まさか……“あの時”のあれか……!?」


 修が呟いた瞬間――


 浜野の右腕が爆発的に変形した。


 外装が裂け、内部から紅黒のエネルギーコアが露出する。

 手首部分がせり上がり、拳が燃えるような光を宿す。


「――プロトコル07、発動。

 《METEOR KNUCKLE:起動》」


 直後、浜野の拳が地面を抉った。

 爆発的な衝撃が尾根を貫き、周囲の木々が吹き飛ぶ。


「くっ……!」


 修と愛菜が飛び退いた。


 その上空――ノクスが浮遊していた。


 黒衣が風にたなびき、紅の瞳が見下ろす。


「暴走ってレベルじゃないな……! でも、先生……やる気なら、こっちも“真剣”でいかせてもらうよ」


 ノクスが両手を広げ、魔力を集中させる。


「第七階梯!大魔法《夢葬エンドブレイン》、展開――!」


 背から現れた四枚の闇翼が、爆ぜるように展開される。


 しかし――それを待たずに、浜野が跳んだ。


 跳躍、50メートル。


「リミッター解除。制限レベル:Cから――Sまで、解放」


 浜野の声が冷たい機械音に変わる。


 空中に跳び上がった浜野が、右拳を構える。


「《メテオナックル・フォールブレイカー》」


 拳に集まった重力波が空気を圧縮し、ノクスを狙って急降下する。


「ぐっ……速い!!」


 ノクスが飛翔してかわすが、拳が地面に直撃した瞬間――クレーターが生まれた。


 半径15メートル、深さ3メートル。

 まるで隕石が落ちたような破壊。


「今の、回避出来なかったら……マジで終わってた……!」


 ノクスが冷や汗を流す。


 だが、浜野は止まらない。


「戦闘演算、継続。目標:ノクス……ノスフェラトゥ・アルフレッド=排除対象」


 目が完全に機械の光を宿し、左腕の収納部から高周波ブレードが展開された。


 キィィィィィ――と、耳を劈く音。


「さすがにやりすぎニャ――ッ!ってか何で真名まで分かってるのニャ!!?」


 ノクスの左肩に切っ先がかすめ、血が飛び散る。


 ノクスは霊力で距離をとりながらも、あえて視線を逸らさなかった。


「……先生、それが“自動戦闘”って奴なら――」


 黒いオーラがノクスの全身に集まり始める。


「ボクは、心で戦う者として、受け止めてみせるよ!!」


 ノクスが全魔力を放出する。


「第八階梯!!大魔法《夢葬・双星陣そうせいじん》――発動!!」


 闇と光、双極の魔法陣が浜野を囲むように展開された。


 だが、浜野は自動演算でその重力場を“跳ね返す”。


「霊圧対抗パラメータ――最大出力で反転」


 瞬間、浜野の右腕が、メテオナックルの第2形態へと再構築される。


 蒼白く燃える拳。


「《メテオ・リライジング・ブレイカー》」


「来る……!!」


 ノクスは真正面から飛び込む。


 拳と拳がぶつかり――爆音が尾根全体に響き渡った。


 その衝撃は、雷鳴のように山々に反響した。


 そして――


「先生……目を覚まして……!」


 ノクスが叫ぶ。


 彼の拳が、浜野の胸に静かに触れた。


「帰ってこい……!!」


 その声が、浜野の中の何かを貫いた。


 暴走エネルギーが沈静化していく。


 白濁していた瞳に、徐々に“人間の光”が戻ってくる。


「……ノクス……?」


 浜野の声が震えていた。


 ノクスはにっこりと微笑み、膝をついた浜野を受け止めた。


「……おかえり、先生、皆心配してるニャ」


 その声に、浜野の身体がぴたりと止まる。

 目に宿った光が、すうっと消えていく。


「っ……ぅ……」


 浜野はがくりと膝をつき、ゆっくりと意識を失った。


「ノクス……」


 修が駆け寄り、気を失った浜野を支える。


 ノクスは息を荒くしながら、それでも誇らしげに微笑んだ。


「……無茶は……これくらいにしてほしいよ、ほんと……」


 疲れ切った声で、そう言った。


 



 その夜、常山城近くの宿に一泊する事になった。


 全員、どこか疲れ果てたように黙り込んでいたが、食事を終えた後の客間で、少しだけ会話が戻ってくる。


「……しゅーくん」


 愛菜が、ぽつりと呟いた。


「うん?」


「今日のボク、……変じゃなかった?」


「変だったっていうか……ちょっと怖かったけど。でも、すぐ戻ってくれて良かったよ」


 修が笑うと、愛菜はそっとノクスに寄り添った。


 その様子を、結が静かに見つめていた。


「……今日、私……誰かと話してた気がするんです」


「誰と?」


「分からない。でも、とても悲しい人。私に、助けて欲しいって言ってた気がして……」


 修は、少しだけ躊躇ってから口を開いた。


「……それ、もしかすると“鶴姫”かもしれません」


 言葉に重みがあった。


 場に静けさが戻る。誰も、軽はずみに笑わない。


 そして、その夜。


 月が雲に隠れ、山の麓にある宿の部屋に、一つの影がすっと入り込んでくる。


 眠る結の枕元に――若く美しい女の霊が立っていた。


 その姿は凛として、けれど、頬には静かな涙の跡。


「……残された者は、どうすれば良かったのでしょうか」


 その声に、結がゆっくりと目を開いた――。

 次回予告


 第98話『三十五の墓標――常山城跡にて(後編)ー静寂ー』


 涙を流す鶴姫。

残された想いを受け止めるために、修たちは最後の儀式に挑む。

あの日の痛みと誇りを、未来へと繋ぐために――。


 最後まで読んでいただきありがとうございます!

評価(★★★★★)やブックマークで応援していただけると嬉しいです。

続きの執筆の原動力になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ