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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第四章:心スポ探訪編

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第91話『八木山橋の向こう側』

 仙台市街地から車で十五分ほど。

 青葉山の深い森の間を抜ける坂道を登ると、八木山橋が姿を現した。


 深い谷をまたぐ巨大なコンクリートのアーチ橋。

 その長い橋梁は、夜の闇に浮かび上がるシルエットで、どこか威圧的な雰囲気を漂わせていた。


 時刻は午後十時を回った所。


 車は既に橋の近くの駐車場に停められ、雨城修、黒咲結、君鳥愛菜、そして顧問の浜野京介の四人が車から降り立っていた。


「……ここが、八木山橋か」


 修が低く呟く。

 背後では、妖怪の黒猫・ノクスが愛菜の肩にちょこんと座っている。


「確かに、橋の割には歩道の柵が異様に高いですね」


 愛菜が歩道脇の金属製の高い柵を見上げて言った。


「……まるで要塞みたい」


「まあ、この橋は飛び降り自殺が多発してる事で有名な心霊スポットだ」


 浜野先生が周囲を見回しながら説明する。


「遺体が見つからない事も多くて、欄干にスマホだけ残ってたとか、夜中に足音が聞こえたりとか……」


 修がぽつりと続ける。


「……うわあ、怖い話ばっかり」


 結が少し震えた声で呟く。


 ノクスがいきなり低く鳴いた。


「にゃあ……(警戒態勢に入るにゃ)」


 愛菜だけがその鳴き声の意味を理解し、真剣な顔でノクスを見る。


「ノクス、何か感じてる?」


「にゃあ……(何か近くにいるにゃ)」


 ノクスは尾を振りながら、橋の中ほどをじっと見つめている。


「さて、何が出るかな」


 修は苦笑しつつも身構えた。


「私も何か気配を感じる……気がする!」


 結が小声で言う。


「じゃあ、みんな気を付けて行こう」


 浜野先生が皆に声をかける。


 四人は柵の鍵のかかった扉を開け、慎重に橋の上へと足を踏み出した。


 深夜の橋は、風が冷たく肌を刺し、雨の匂いが混じった夜の空気が静かに流れていた。


「みんな、足元気をつけて」


 愛菜が声を潜める。


 橋の欄干からは、色あせた造花の花束が風に揺れていた。

 リボンもほどけかけている。誰かの祈り、警告のように見えた。


「……何か、ここに来る人達の無念が集まってるんだろうな」


 修がそう言って欄干を撫でる。


「……私の名前、聞こえた気がした」


 結が突然小声でつぶやいた。


「え? 誰が?」


 修が顔を向ける。


「さっき、……『ユイ』って」


 結は肩を震わせながら視線を泳がせた。


「……俺も聞こえたかもしれない」


 浜野先生が眉をひそめる。


 その時、ノクスが急に背中の毛を逆立てて鳴いた。


「にゃああっ!(来るにゃ!)」


 愛菜が緊張で震える。


「みんな、後ろ!」


 修が声を上げた。


 振り返ると、橋の中ほどに白い影が浮かんでいた。

 長い髪を風に揺らし、顔を隠している。


「……人影? いや、足がない……?」


 修の声に皆が凍りつく。


 白い影はゆっくりとこちらに近づいてくる。


「ユイ……ユイ……」


 その声は囁くように聞こえ、結の名前を繰り返した。


「結先輩、離れて!」


 愛菜が結を引き寄せる。


 ノクスは愛菜の肩から飛び降り、草むらへ逃げ込んだ。


「ノクス!どこ行くの!?」


 愛菜が慌てて叫ぶ。


「にゃあ!(トイレ!)」


「それ今!!?」


 白い影は目が黒くくぼみ、そこから血のようなものが滴っていた。


「消えろ!」


 修が除霊の札をかざすと、空気が震え、影は霧散した。


 静寂が戻った橋の上で、皆は深く息をついた。


「……招き手か。未練が強くて、人を呼び込もうとするタイプの霊だな」


 修が説明する。


「……私の名前を使われてしまったのが辛い……」


 結は声を震わせながら言った。


「でも、みんながいるから大丈夫。結先輩は一人じゃない」


 愛菜がしっかりと頷く。


 ノクスは草むらから顔を出し、「にゃあ……(やれやれにゃ)」と愛菜にだけ伝えた。


「お前、最初に逃げたよな?」


 修がツッコミを入れ、場の緊張が少し和らいだ。


「にゃーご(真祖でも、トイレには行くんだぜ?)」


 夜の八木山橋は、再び静けさに包まれた。

 次回予告


 第92話「鶯谷トンネルの霊界門」


 誰も通らない夜の鶯谷トンネル。

通る者は好奇心か、あるいは運命に導かれて。

その先に待つのは、現世と霊界を繋ぐ狭間の世界。

出口はあるのか、帰れるのか——。


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