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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第四章:心スポ探訪編

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第90話『仮面の残響』

 封印の光が影を飲み込み、仮面は砕け、空気は澄み渡った――はずだった。


「やった……終わったんだね」


 愛菜がほっとした笑みを浮かべる。


 ノクスも小さく「にゃあ……」と、安堵の声を漏らす。


 


 しかし、その瞬間――


 地面に残っていた“仮面の欠片”が、ひび割れた床にズズッ……と吸い込まれるように沈み込んだ。


「今……何か動かなかった?欠片……?」


 結が不安げにあたりを見渡す。


 


 グォン……グォン……グォォオオン……


 地下の奥から、不気味な“脈動”が響いてきた。


「封印、破られてる……!?」


 浜野先生が目を見開いた。


 


「封印が不完全だった……奴の欠片が、封印の“鍵”になったのか!?」


 修の言葉に、地面が突然盛り上がり、裂けた!


 


 黒い瘴気が溢れ出し、砕けた仮面が空中で再構築される。


 影はより濃く、より明確な形を持ち、明らかに先ほどよりも力を増していた。


 


「第二段階……って事かよ」


 修が歯を食いしばる。


 


 影の姿は今や人型を超越した、異形の神像のようだった。


「またオマエたちか……愚かなる者どもめ」


 闇が地響きのように喋った。


 


 次の瞬間、影が手を伸ばし、愛菜を狙う!


「逃げろ、愛菜!」


「きゃっ――!」


 


 ノクスが目の色を変えた。


 宙に浮かび、全身から光が溢れる。


 その瞳が、深紅に染まった。


「にゃああああああああっ!!!(愛菜に手ェ出すんじゃねえにゃぁああああっ!!)」


 


 ノクスの身体から黒い炎と光が逆巻き、周囲の空間そのものが震え始める。


 ――それは、眠れる本能の覚醒。


 


「……ノクスが、変わっていく……!」


 愛菜の腕の中で、小さかったノクスが光の中で再構成されていく。


 四肢が長くなり、しなやかな人のシルエットに。


 漆黒の毛並みが燃えるように揺らめき滑らかな長髪に、額には赤い紋章が浮かび上がった。


 瞳はより深い赤に、頭には猫耳。


 黒衣に包まれ、背中には常夜の闇に染まった暗黒の翼が生える。


 表情は怒りに満ち満ちている。


 


 「修行の時の……ノクスの……真の姿……!」


 修が呆然と呟いた。


 


 真祖ノクスは、静かに足音を立て、影に向き直る。


 目が合った瞬間、影が身を震わせた。


「こ、これは……“原初”の気配……!? まさか貴様……!」


 


「黙れ、にゃあ」


 


 ノクスは跳躍した。空気が割れ、世界が揺れる。


 漆黒の爪が、影の仮面を一閃する。


 


 ドガァンッ――!


 


 影の仮面が真っ二つに砕け、断末魔のような咆哮を上げながら、瘴気が霧散していく。


「うわぁああああああああっっ……!」


 


 その場に響いたのは、静寂。


 そして、ふわりと――ノクスが元の姿に戻り、愛菜の足元に降り立った。


「にゃ……(疲れたにゃ)」


 とぼけた声でそう言うと、コテンと倒れ込んだ。


 


「ノクス……ありがとう」


 愛菜が震える声で抱きしめた。


 


「終わった……今度こそ、本当に」


 修が呟いた。


 


 壁に掛けられた、朽ちた時計の針が――ぴたりと止まった。


 “ホテル活魚”に流れていた、長い時の呪いが、ようやく終わりを告げたのだった。





 一行は朝日と共に、ホテルを後にした。


 空は晴れ渡り、海から吹く風が、まるで祝福のように頬を撫でていた。


 


「ホテルは取り壊しになるそうだ。あれだけの事があれば、もう誰も近づかないだろう」


 浜野先生が言う。


 


「ノクス、あの時凄かったよね!」


 愛菜がノクスを見つめると、ノクスはぷいとそっぽを向いた。


「にゃ……(オレ様が強すぎたにゃ)」


「ふふ、はいはい。凄かったよ、ノクス」


 愛菜はノクスを優しく撫で、満更でもない表情で目を瞑るノクス。


 


 一行は車に乗り込み、静かにホテルを後にした。


 だが、誰もがどこかで感じていた。


 これで終わりではない。


 ノクスの中に眠る“力”が、いつか再び目覚める時――


 更なる戦いが待っているのだと。


「にゃぁ……(知らんけど)」

 次回予告


 第91話『八木山橋の向こう側』


 高い柵、谷底、息を潜める“何か”。

それは一体何なのか……

声なき叫びが、風に混じって届いてくる──。


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