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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第四章:心スポ探訪編

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第87話『深淵に潜む影』

 地下通路は先へ進むにつれ、息苦しくなるほど湿り気を帯びていた。


 ノクスが足音を忍ばせながら、慎重に先導する。


「にゃあ……(空気が重いにゃ。何かが近い)」


 愛菜はノクスの背中を見つめ、無意識に呼吸を浅くした。


 


 壁に取り付けられた非常灯はとうに切れ、明かりは浜野先生が持つランタンと修の懐中電灯のみ。


 その狭い円の中だけが現実のようで、周囲はまるで異界に侵食されたかのように感じられた。


「この先に……何があると思う?」


 結がぽつりと呟く。


「さっきの日記、まだ全部読み切ってないけど……最後のページ、破り取られてたよね」


 愛菜が思い出したように言った。


「意図的に隠されたんだろう。何か、見られたくない“真実”がある」


 修の声は低く、警戒心に満ちていた。


 


 突如、奥から鉄が擦れるような音が響いた。


 ギィ……ギギ……


「……誰かいる」


 愛菜が震える声で言った。


「いや、誰かじゃない。“何か”だ」


 浜野先生が鋭い目で前方を睨みつける。


 


 ノクスの尻尾が膨らみ、体を低く構えた。


「にゃあ……(見えるにゃ、影が)」


「ノクスが“何かがいる”って……」


 愛菜の手が冷たく震えている。


 


 ランタンの明かりが、ほんの一瞬だけ、何か人のような“影”を捉えた。


「今、見えたな……」


 修が一歩、前に出た。


 


 影は通路の先へ、ゆっくりと消えていった。


 その背中は歪み、肩が不自然に曲がり、足元が床を引きずっていた。


 


「追うぞ」


 修の合図で、一同は影のあとを追い始める。


 


 ほどなくして、通路の突き当たりに鉄の扉が現れた。


 扉にはかつての従業員名が書かれていたが、錆びついて判別できない。


 


「この先……何かある」


 結が言い、扉のノブに手をかけた。


 


 ぎ……っ


 重たい音を立てて扉が開かれると、そこは広い地下空間だった。


 


 倉庫のようだが、中央にぽつりと置かれた木製の長机と、周囲を取り囲むように並ぶ椅子の数が異様だった。


 


「……これ、会議室?」


 愛菜が声を漏らす。


「いや、違う。これは……まるで“儀式部屋”だ……」


 浜野先生が呆然とした声を漏らした。


 


 壁一面に、意味不明の記号が赤い塗料で描かれている。


 机の上には蝋燭の残骸と、焼け焦げた紙切れ。


 


「この場所……明らかに、何かやってた」


 修が机の上を調べながら言った。


 


 その時――。


 背後の扉が、バタン、と音を立てて閉まった。


「っ、閉まった!」


 愛菜が叫ぶ。


 同時に、ランタンの明かりが一瞬揺らぎ、薄暗闇が部屋を支配した。


 


 ノクスが突然飛び上がるようにして身を翻した。


「にゃあああっ!(来るにゃ、気をつけろ!!)」


「ノクスが警告してる!」


 


 次の瞬間、部屋の隅の闇が、ゆっくりと形を成していく。


 まるで、影が“這い出てくる”かのように。


 


 その“影”には顔がなかった。


 のっぺらぼうの頭部、歪んだ手足、異様に長い指先。


 それは呻くような音を立てながら、ずる、ずる、と床を這うように近づいてくる。


 


「……帰レ……カエレ……」


 囁きが頭の中に直接響いた。


「こいつが……このホテルに取り憑いてる存在か」


 修が声を絞り出す。


 


「にゃあ……(これ以上、近づかせるな)」


 ノクスが影の前に立ちはだかるようにして、低く唸った。


 


 影はノクスの前で動きを止める。


 そして、まるで何かを見極めるように、ゆっくりと顔のない頭を傾けた。


 


「下がれ、ノクス!」


 修が叫んだ瞬間、影が突然伸びあがり――


 真っ黒な腕を振りかざした。


 


「避けろ!!」


 


 風を切る音とともに、視界が真っ暗に染まる。


 


 


 


 ……次に目を開けた時、彼らは――別の場所にいた。


 


 そこは同じホテルのはずなのに、どこか違っていた。


 壁の色、空気の匂い、そして――時計の針が巻き戻っていた。


 


「……ここ、現実じゃない」


 結が呆然と呟いた。


「まさか……また“過去”に引き込まれたのか?」


 先生が周囲を見渡す。


 


「この空間……八王子城の時と同じだよ、ここは、このホテルの“記憶”なんだと思う」


 修が唇を引き結んだ。


「記録された惨劇。その断片を、俺達は今、見せられている……!」


 


 どこかで、子どもの笑い声が響いた。


 続けて、何かが砕ける音、そして――悲鳴。


 


 このホテルで何が起きたのか。


 影の正体とは何か。


 彼らの足元で、ホテルの“記憶”が静かに脈動を始めていた。


「……面白くなってきた!!」

 次回予告


 第88話『封印された真実』


 目を覚ました先は、過去に封じられたホテルの記憶。


 その中で繰り返される惨劇の断片。


 浮かび上がる“影”の正体と、かつて行われた儀式の真実とは――?


 ノクスの警告が響く中、修たちは運命の核心へと迫る。


 次回、ついに過去が牙を剥く。


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