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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第四章:心スポ探訪編

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第73話『メテオナックル!』

 夜明けは、まだ遠かった。


 封印は解かれ、怨念は浄化された。

 しかし、“家”はまだ、生きていた。


 地下から地上へ戻った修達を待っていたのは、軋むような重低音と、震えるような地鳴りだった。


 家の柱が軋み、壁が呼吸するようにうねっている。


「……終わってない……?」


 愛菜の声が、かすれて震える。


 先生が周囲を見回す。


 「いや……封印された“存在”は消えた。でも、この家そのものが、“器”だった”んだ」


 修がすぐに続けた。


「“怨念を閉じ込めてきた年月”……それ自体が、この家を変えてしまった。もう、このままじゃ――」


 ――俺達ごと、潰される。


 天井がひび割れ、梁が崩れる。


 土間の壁が、内側から膨らみ始める。


 


「出口を探せ!!」


 


 先生の声に、全員が玄関へと駆け出す――だが。


「開かない!? なんで……!」


 扉は、まるで家の一部と化していた。

 まるで生きている肉のように、ぬめりを帯びて軋む。


 


 ――閉じ込めようとしている。


 


 この“封じの家”が、最後に自分達ごと全てを飲み込もうとしていた。


 


 その時だった。


 


「…………っ」


 


 先生が、額を押さえて膝をつく。


 


 その目に、一瞬、蒼い光が走る。


 


 脳裏に、走馬灯のように流れ込む映像。

 機械。炎。断片的なコード。

 そして――


 


 「アクティベート・プロトコル:Phase-6」


 


 次の瞬間、先生の背中が“蒸気”を吹いた。

 服の背面が裂け、そこから金属のフレームが浮かび上がる。


 


 結と愛菜が同時に叫ぶ。


 


「せ、先生……!? それって……!」


 


 修も、ただ一点を見つめていた。


 


 先生の右腕が、機械の腕に変化していく。


 白熱するコアが展開され、エネルギーが腕に流れ込む。


 


「……思い……出した……」


 


 先生の声が、低く、静かに響いた。


 


「お前達を、守る為に――」


 “俺は戦う為に作られた存在だった”


「違う!!俺は……!!」


 廃屋全体が唸り声をあげる。まるで最後の咆哮。


 それに応えるように、先生は一歩、前に出た。


 


「……ここで死ぬ気はない。俺達は、生きて帰る!」


 浜野の脳裏に銀髪の少女が浮かぶ。




 メテオ・ドライブモード:展開。

 右腕のコアが極限まで回転し、熱を放つ。


 


 先生の声が轟いた。


 


「――フルドライブッ!!」


 


 崩れかけた屋根の向こうへ、狙いを定め――


 


 「メテオナックル!!!」


 


 右腕から迸る光。


 


 巨大な拳が、空間ごと家の屋根を穿ち――


 


 轟音と共に、封じの家が崩れ落ちた。




◆  




 光の中、外の空気が戻ってくる。


 木々のざわめき、風の音、夜明け前の冷たい空。


 ――外に、出たのだ。


 愛菜が、思わず空を見上げて涙ぐんだ。


「……生きてる……」


 結も、小さく頷いた。


 ノクスが、先生の足元にすり寄る。


 先生は片膝をつきながら、機械の右腕を見つめていた。


 修が静かに問いかける。


「……先生。あれ……記憶が戻った?」


 先生は、しばらくの沈黙の後、うっすらと笑った。


「いや……ほんの少しだけ、だ……でも……大事な事は、思い出した」


 


 彼は、空を見上げた。


 


「――俺には、守るべきものがあるって事をな」


 


 その空には、薄い朝焼けが滲み始めていた。

 遠くで鳥の声が、夜明けを告げていた。


 


 

 その後、犬鳴村を出た一行は、しばらく無言だった。


 


 あの家は、もう影も形もなかった。


 だが、それで良かったのだ。


 誰もが知っていた。


 あれはもう、存在してはいけない“記憶”だったのだと。


 修がふと、空を見上げる。


「……ねえ、先生。あの技……」


 先生は一瞬、苦笑した。


「ん?」


「……メテオナックル。ちょっと名前、カッコよすぎません?」


 全員が、ふっと吹き出した。


 笑い声が、朝の森に響いた。


 それは、確かに“生きて”帰ってきた者達の、証だった。


 次回予告


 第74話『静けさの向こうに ― 鈴ヶ森刑場跡』


 打ち捨てられた処刑場の井戸。


 静かな場所ほど、声なき声がよく響く。


 “ここにいたことを、忘れないでくれ”


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