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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第四章:心スポ探訪編

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第70話『封じの家』

 ざぁ……ざぁ……


 木々が風に軋み、梢を揺らすたびに、まるで何かが忍び寄るような音がする。


 月明かりは黒雲に覆われ、懐中電灯の細い光が頼りだった。

 周囲を囲む樹木は壁のように密生し、戻る道はすでに見失っていた。


 結は立ち止まり、目の前に佇む廃屋を見上げた。


 湿気を吸った空気の中、そこだけが異様なほど重苦しい。


 屋根の一部は崩れ、壁面は泥に塗れ、窓ガラスは内側からひっかかれたような跡がある。

 今にも朽ちて崩れそうな、異形の静寂が張りついていた。


 


「……ここだけ、空気が違う。重い……」


 


 彼女は小さな声でつぶやく。

 ノクスが低く唸るように喉を鳴らし、結の腕の中で小さく身を震わせた。


 愛菜が結の背後に隠れるように立ち、怯えた眼差しで家を見つめる。


「見られてる気がする……誰もいないのに……ずっと、視線を感じるの……」


 先生は無言で懐中電灯を向けながら、口元を硬く結んでいる。

 その目は警戒を超え、不安を通り越して恐れを滲ませていた。


 


 修は先頭に立ち、家の正面に歩み寄る。

 ふと、腐食した表札のようなものが目に留まった。


 


「……これ、何だ?」


 


 近づいてみると、木の板に文字が彫られていた。

 だが、年月と風雨に晒されており、判読出来るのは一部だけだった。


 


「“封”の字……かろうじて読める。封印の“封”……?」


 


 ざっ……


 


 一陣の風が吹き、枯葉が巻き上がる。

 その瞬間、全員が背筋をぞわりとさせた。

 寒気とは別の、もっと生理的な“拒絶”に近い感覚。


 修は目を細め、家を見据える。


 ノクスが「ウゥ……」と低く唸った。


 次の瞬間、家の床下から、木が軋むような音が微かに響いてきた。

 誰かが、そこにいる。

 そう確信させるには十分な音だった。


 


 修は後ろを振り返らず、静かに言う。


 


「ここは、ただの空き家じゃない。何かを……“封じてる”。そんな気配がするんだ」


 先生がハッとしたように目を見開いた。


「雨城……お前……その感覚は、間違ってないかもしれない」


 その一言に、場の空気が一気に変わった。


 誰もが、あの家がただの廃墟ではない事を理解し始めていた。

 扉の向こうに、何かがいる。

 目を開けて、待っている――そんな気配があった。


 沈黙が続く。

 風が木々を揺らす音だけが、場を支配していた。


 修は、懐中電灯を握り直し、扉の前に立った。


「行こう。答えは、あの中だ」


 誰も返事はしなかった。


 だが、それぞれに覚悟を決め、彼の背中を追った。


 そして、重く閉ざされた扉が、ゆっくりと開き始める――。


 次回予告


 第71話『封じられた怨霊』


 封印を破る音が、夜の闇に響く。

何が目覚めたのか、それは誰にも分からない。

家は語る。血の記憶を。怨念の歴史を。


 次回、開けてはならなかった扉の向こうへ――


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