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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第四章:心スポ探訪編

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第66話『“彼女”が見つけたのは、封じられた手紙』

 小塚原の空が白み始める。

 夜を越え、風は少しだけ涼しくなっていた。


 境内の裏手――

 結は一人、祠のそばにしゃがみ込んでいた。

 “何か”が、ここに呼んでいる。


「……あれ?」


 半ば崩れた地面の端。

 割れた石の下に、風にめくられたように、一枚の紙片が顔を覗かせていた。


 結が手を伸ばし、そっと引き抜く。


 それは、古びた封書だった。

 薄紙に墨で書かれた、名もなき手紙。


 ――誰かの、届かなかった言葉。


  封を切ると、筆跡の荒い文字が、今にも崩れそうに並んでいた。


『わたしを殺したお侍様へ』


『あなたを呪いたくて書いているわけではありません。ただ、ただ、聞いてほしかったのです』


『わたしは、誰かに名前を呼ばれたかった。誰かに、私の話を聞いてほしかった』


『もしも、あなたがもう一度この世に生まれて来ることがあったなら』


『どうか――わたしの分まで、生きてください』


 結の手が、小さく震える。


「こんな……優しい言葉、残してたんだ……」


  風が、ふわりと吹いた。


 その一瞬だけ。


 誰かの笑顔が、結の隣に“見えた”気がした。


「……うん、届いたよ。あなたの声、届いた」


 結は手紙を胸に抱いた。


 やがて朝陽が差し込み、刑場跡の上空を優しく照らす。


 地蔵の陰から、一匹の黒猫が出てきた。


「ニャウ……(声なき者に、祈りあれ)」


 ノクスは、黙って結の隣に座った。


 その背後。


 修が寝起きのような顔でやってくる。


「先輩〜。朝飯まだ?」


「もうちょっと静かにして」


「へいへい……何かありました?」


 結は、小さく微笑んだ。


「うん、でも……もう、大丈夫」


「そっか」


 彼らの足元、確かにあった“無念の声”は、静かに夜明けの空へと消えていった。


 次回予告


 第67話『おらびの浜』


 夜の海で誰かが呼んでいる――「おい」と。

 それは、答えてはいけない“声”。


 次回、海が記憶をさらっていく。


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