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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第四章:心スポ探訪編

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第64話『小塚原刑場跡を探索!』

 夏の夕暮れ、陽が落ちる直前の空は茜に染まり、南千住の街並みに長く黒い影を落としていた。


 目的地、延命寺はその静寂の中にあった。


 石畳の参道を歩く四人の足音だけが響く。


 ――かつて、ここは死者が埋もれた地だった。


「いかにもって感じの雰囲気だな。陰、重すぎ」


 修は懐中電灯を掲げながら、境内の奥を睨むように見つめた。


「ここ、小塚原刑場跡……だよね?」


 結の声はやや震えていた。


「そう。処刑場の跡地。江戸時代から明治初期まで、二十万人以上がここで命を絶たれたって」


 修が答えると、結の足取りが一瞬止まる。


「そんなに……」


「しかも死に方様々です。火あぶり、磔、さらし首、腑分けまで。んで、埋葬は土かぶせただけ。獣に食われた死体も多かったらしい」


 淡々とした口調だが、その言葉には異様な重みがあった。


「ちょ……怖すぎません……?」


 愛菜がノクスを抱きながら後ろを気にする。

 ノクスはぴくりとも動かず、じっと延命寺の本堂を睨んでいた。


「ニャゥ……(ここは、ただの墓地ではないぞ。悪しき念が、土の奥で蠢いている)」


「ノクスが警戒してる。霊が……たぶん、出る」


「へぇ、楽しみだな」


 修の口角が上がる。

 幽霊耐性MAXのオカルトオタクには、むしろ好都合な展開だ。


 境内の左手には、黒ずんだ石塔があった。


 ――首切地蔵。


 高さは三メートル近く。

 かつては刑の後、この地蔵が首を受け止めたと伝えられている。


 結が近づいたその時だった。


 突然、耳鳴りのような音が辺りに広がった。


「今の、何……?」


 境内の空気が一変する。

 気温は急激に下がり、吐く息が白くなった。


 そして――


 見えた。


 地蔵の傍らに、白装束の男が立っていた。

 首のないその姿は、明らかに“向こう側”の存在だった。


「……見える。珍しいな、これだけ強いのがハッキリ出てくるなんて」


 修はゆっくりと男に向かって歩み出る。


「おい、アンタ。未練があるなら話聞いてやるよ。そういうの得意なんでな」


 首なしの男が、修のほうに歩み寄る。


 そして――


 断ち切るべき“言葉”が、聞こえた。


《誰が、俺を裏切った》


 修の眼が細められた。


「……なるほど。“処刑された理由”を納得してねぇって訳か」


 右手を軽く持ち上げる。


 修の瞳が淡く輝き、魂の奥にある“真語”を見抜いた。


「――《真語断ち》」


「アンタが信じた奴は、最初からお前を売るつもりだった。ただ、それだけだ」


 その瞬間、首なしの男の体が音もなく崩れ、風に溶けるように消えていった。


「成仏、っと」


 修がふっと息を吐いた。


「……あれが、幽霊……?」


 結が呆然とその場に立ち尽くす。


「霊の強さは場所の記憶に比例する。ここは、そういう意味で“格が違う”って事だな」


 修が肩をすくめる。


「まだ、いるぞ」


 ノクスが低く唸った。


「……続きは、夜だな」


 修が闇に目を向けた。


 この地に残る怨念は、まだ序章にすぎない。

 次回予告


 第65話『無念の群像、語られざる叫び』


 首切地蔵の下に潜む亡霊たち。  不意に浮かび上がる、“声なき者たち”の記憶とは――?


 次回も、刮目せよ!


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