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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第四章:心スポ探訪編

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第63話『東京塔の女』

  真っ赤な鉄骨が夕焼けに染まる東京タワーは、今日も観光客で賑わっていた。

 だが、その華やかな姿の裏側に、誰も近づきたがらない非常階段が存在する。


「非常階段に幽霊が出るって話、聞いた事ある?」


 結が小声で呟く。

 霊感がまったくない彼女は、何も感じ取れていなかった。


「幽霊が出るって話は、噂の域だけど、実際に見た人は少ないみたいだな」


 修がにやりと笑いながら応じる。


「今日は許可を取ってあるけど、20時30分には閉まるから、それまでに調査を終えないと」


 愛菜が少し緊張した声で言った。

 彼女の肩には黒い影がひそみ、周囲の空気の変化を察知していた。


「にゃう……(ここは危険だ)」


 その影の小さな声は、愛菜の耳だけに届いた。

 彼女は身震いし、周囲を見回す。


「何か感じてるの?」


 結が訊ねるが、愛菜は無言で頷くだけだった。


 三人は非常階段の入り口に立つ。

 普段は閉鎖されている場所は、錆びつき、薄暗く不気味な雰囲気を漂わせていた。


「調査を始めよう」


 修が先頭に立ち、ゆっくりと階段を登り始めた。


 手すりに触れた瞬間、愛菜の背筋がぞくりとした。

 階段から冷気が立ちのぼり、不穏な気配を放っている。


 三階分ほど降った所で、突然、上階からヒールの高い靴音が「カツ、カツ」と響いた。


「誰かいるのか?」


 修が声をひそめて訊ねるが、階段の上には誰もいなかった。


 その瞬間、愛菜の肩の影が低く「にゃう」と鳴き、警戒を促す。

 愛菜はじっとその影を見つめた。


 修は耳を澄ませ、風に乗ってかすかに聞こえた声に集中する。


 確かに誰かが囁いている。

 紛れもなく幽霊の声だった。


 だが結は首をかしげるだけで、何も感じ取る事ができなかった。


「……何か聞こえた気がするが、よく分からないな」


 修が呟くと、結は黙って頷くだけだった。


 外は次第に暗くなり、20時も近づいている。


「そろそろ閉まる時間だ。余裕を持って戻ろう」


 結が時計を確認した。


 その時、階段の先にぼんやりとした女性の姿が浮かび上がった。

 赤いヒールが揺れ、ワンピースの裾が風にそよいでいる。


「……見える?」


 修が結に尋ねる。


 結は何も見えず、ただ首を横に振った。


「いるの?」


 だが女性の顔は闇に隠れ、声は出さない。強い孤独だけが漂っていた。


 階段の向こうから、かすかな声が風に乗って聞こえた。


 《待っていたの。誰かが来てくれるのを……》


 《ずっと一人で、ここで……》


 修はその声に耳を澄ませ、胸に込み上げる感情を押し殺した。


 結は無言で、その場の空気を見つめるだけだった。


 突然、冷たい空気が周囲を包み、女性の姿はゆっくりと消えた。


 「ここはただの場所じゃないな」


 修は息を吐いた。


 三人は急いで階段を駆け下り、20時28分に外へ戻った。


 愛菜の肩の影が小さく「にゃう」と警告の声を上げる。


 「ここには、大都市ゆえの、様々な念が集まってる……あの女性もその一人なんだろうな……」


 修は顔を引き締めた。


 東京タワーの非常階段は、また誰かの訪れを静かに待っているのだった。


 次回予告


 第64話『小塚原刑場跡を探索!』


 江戸の処刑場、小塚原刑場跡を修たちが探索。

怨念の地で、幽霊は見えるのか――?


 乞うご期待!

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