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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第三章:空白の書編

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第60話『約束とお願い』

第三章ラストです!!

 浜野京介はゆっくりと目を開けた。


 深く長い闘いの余韻が、まだ体の奥底を巡っている。

 手足の先に残る微かな痺れが、今までの出来事が現実だった事を何よりも物語っていた。


 胸元――ネクタイの下、肌に触れる位置に仕込まれた“鍵”が、ほんのりと柔らかな熱を放っている。

 それは機械的な発熱ではなく、確かに“誰か”の意思がそこに宿っていると感じさせる温もりだった。


「……あの声は間違いない、本物のリーヴァの声だ」


 浜野は呟いた。


 優しく、凛として、どこか悲しげで。

 だが確かに、あの声は彼の心に届いていた。


 彼はゆっくりと起き上がり、背筋を伸ばして深く息を吸う。

 肺に満ちる空気がやけに清らかで、新しい風の気配がした。


 その時――。


『またいつか、必ず会いましょう──』


 脳内にふわりと響いた声。幻聴ではない。

 浜野の奥底に刻まれた、彼女の“声”だった。


「……リーヴァ……」


 目を閉じた彼の表情は、どこか優しく、そして強く決意に満ちていた。

 幼少期に出会ったあの少女を思い出していた。


 


「先生、大丈夫ですか?」


 心配そうな声が耳元に届く。そっと目を開けると、雨城がすぐ傍に立っていた。

 彼の目はいつものように柔らかく、けれど今はそれ以上に、深い安堵が宿っている。


 「ああ。みんながいてくれて……本当に良かったよ」


 浜野が微笑むと、結も嬉しそうに頷いた。

 その後ろから、修と愛菜が歩み寄ってくる。


「先生、やっと起きた。良かった……心配したんだよ……」


 君鳥が笑顔で言う。

 だがその声に張りがなかったのは、心底安心している証拠だ。


「でも……無事で良かったです」


 黒咲は両手を胸の前で握りしめ、ほっと息をついていた。


 部屋の中には静けさが戻っていた。

 だが、どこか空気が違っている。

 何かが変わったような、何かが“始まった”ような……。


 


 そんな時、ふと気配が揺れた。


 修とノクスだけが反応した。


 空気の流れが、わずかに変わる。

 そして――。


 そこに立っていたのは、淡く儚い光を纏った、一人の少女。


 白いワンピースに、透明に近い空色の瞳と、髪がふわりと揺れる。

 その姿はまるで、朝靄に溶けかける夢のようだった。


「……ひより」


 修がぽつりと呟く。

 彼女の存在を確かめるように、ゆっくりと一歩、足を踏み出した。


 ひよりは修の隣に寄り添うように立ち、目を細めて微笑んだ。


 彼女の姿は、修とノクスにしか見えない。

 だが――。


 彼女の手にあるものだけは、全員に見えていた。


 淡い光を放つ、古びた一冊の書物。


 それはまさしく、《空白の書ーーリーベル・イナーニス》。


 


「これって例の?……という事はひよりちゃんもいるのかな?」


 愛菜がひよりの方へ歩み寄る。

 ひよりは書物を愛菜にゆっくりとその書物を渡す。

 冷たいはずの表紙から、かすかな温もりが伝わってくる。


 「これが、リーベル・イナーニス……」


 彼女は驚きを隠せないまま、震える声でそう呟いた。


 


 ひよりの声が、修とノクスの心にだけ届く。


「わたしには記憶が無い、記憶自体はリーベル・イナーニスに記録してるんだけど、長い年月の間に書自体の力のせいで、リーベル・イナーニスからその記憶が意思を持ってしまって、抜け出しちゃったんだ、そこでお願いがあるの、あの時みたいに、わたしの記憶を取り戻して欲しいの……その代わり、リーベル・イナーニスを使っても良いし、わたしも皆のお仕事、協力するから……ダメ、ですか?」


 その事を皆に説明する修。


「いいよ!協力する!ひよりちゃんとお友達なりたいし!」


 愛菜はまるで友達が出来たかのようにはしゃいでいる。


「よろしくね、ひよりちゃん」


 先輩は気配を感じ取れないから明後日の方向向いてそう言う。


「先輩、こっちです、ひよりは」


 そういうと先輩は顔を赤くしてワタワタしてる。かわいい。


 ノクスが満足げに喉を鳴らした。


「にゃう……(仲間が増えるにゃ。にゃはは、こりゃ賑やかになるにゃ)」


 修が手を差し出し、ひよりの手をそっと取った。


「……よろしくな、ひより」


 その言葉に、ひよりは静かに頷いた。


「うん。わたし……お兄さんのそばにいたら、無くした記憶もすぐに見つかる気がするの」


 言葉に込められた想いの深さが、修の胸に響く。

 彼はただ、そっと微笑んだ。


 


 浜野はその様子を見つめながら、自身の胸にそっと手を当てた。

 その手の下――そこにある“鍵”は、まだわずかに熱を持っている。


 リーヴァの声は確かに届いた。

 彼女は生きている。

 あの遥かな空の彼方で、再会を待っている。


「必ず、もう一度……会う。今度は、俺の意志で、約束だーー」


 その呟きに、誰もが気付いてはいなかった。

 だが確かに、空気の中に微かな応答があったような気がした。



 


 やがて窓の外には、やわらかな朝の光が射し始める。


 新しい一日。

 新しい始まり。


 長い闘いを終え、彼らは日常へと戻っていく。


 けれど、それはただの“平穏”ではない。

 確かな絆と、希望と、少しの不安と――。


 そして、これからの新たな物語の、静かな幕開けでもあった。


 


 日が昇る。

 部室の窓から、金色の光が差し込む。


 そこに集う仲間達の姿は、以前と何ひとつ変わらないようで、どこかが決定的に違っていた。


 そう。もう彼らは、ただのオカルト研究同好会じゃない。


 未知の世界に足を踏み入れた、選ばれし者達。


 


「先生、お昼ご飯一緒に食べようぜ!」


 修は焼きそばパンを持ってる。

 その後ろには結と愛菜、ノクス、ひよりもいる。


 「……ああ、食べよう」


 浜野は立ち上がり、柔らかく笑った。

 どこか、以前よりも人間らしく、穏やかな表情で。


「そういえば、サイボーグって焼きそばパン食べれるのかな?」


「その辺は人間と変わらんよ……多分。自分の身体が未知すぎて分からん」


 愛菜がノクスの頭を撫でながらつぶやく。


「リーベル・イナーニスって、明日の天気とか予測出来ないかな?」


「調べられるよ!明日は晴れ!39度!猛暑です!」


「にゃう(いや、そんなしょーもない事に使うなよ)」


 修が頷きながら、ひよりに目を向ける。


「お前も、もう立派な部員だな」


「うん。わたし、ちゃんと皆の役に立ちたい……」


 その笑顔は、淡く光っていた。

 記憶はまだ戻らない。けれど、今はそれでいい。


 ここに居場所があるから。


次回予告


 第61話『幽霊、いないなら会いに行こう』

 

 最近、近所に幽霊がまったく出ない。

 ……じゃあ逆に、幽霊の方に会いに行くってのはどうだ?


 行き先は──全国のガチ心霊スポット!?

 ノリと勢いだけで始まる真夏のオカ研ツアー、始動──。


 次回!第四章:心スポ探訪編、始まります。


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