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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第三章:空白の書編

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第50話『ささやく夢と、目覚めの声』

空白の書編のメインストーリーになります!

 ーー夜の静寂の中、修はまた同じ夢を見ていた。


 深く濁った水の底のような暗闇。


 そこから、言葉にならない低く細い囁きが聞こえる。


 意味のない音が、彼の脳裏をゆっくりと揺らした。


 けれどそれは、はっきりと掴みどころのないものだった。


 やがてその囁きは薄れていき、修は眠りから覚めた。



 朝の部室。


 結と愛菜がすでに来ていて、ノクスは愛菜の肩にちょこんと乗っている。


「また変な夢見たよ……」


 修は少しうつむきながら呟いた。


「どんな?」


 結が優しく聞く。


「水の底みたいな暗い場所で、言葉じゃない声が聞こえた。うまく説明できないけど、何かの名前を呼んでるような……」


「まるで屍村での事みたいね」


 結先輩のいうそれは夏休みに行った、凄まじく危険な場所で、村長が村を発展させる為に、心霊スポット化、その過程で悪意の根源と呼ばれる悪魔(ノクスに愛菜経由で聞いた)を降臨させる為に村人達を永遠に苦しめ続けてきた、そんな曰く大有りな場所。

 鹿羽村ってのが本来の名だ。


 愛菜がノクスを見て、ふと顔を上げる。


「ノクスは……しゅーくんの背中に変な気配を感じてるみたい」


 愛菜の声で、ノクスの声が伝わる。


「にゃう(気をつけてにゃ)」


 修は背筋に冷たいものを感じ、振り返る。


「気のせいじゃないのか?」


「にゃう(違うにゃ。確かに何かがいる)」


 結も不思議そうに修の背後を見つめた。



 午後。


 三人と一匹は大学の図書館へ向かっていた。


 修とノクスは時折立ち止まり、何かを探るように周囲を見回す。


 結と愛菜はそんな二人の様子に不安そうだった。


「何が見えるの?」


 愛菜が訊くと、修は少し口ごもった。


「うまく説明出来ないけど……誰かの残り香みたいなものかな。はっきりした姿じゃないけど、確かな気配がある」


 図書館の奥の棚の隙間。


 そこに、かすかな白い影が揺らめいていた。


 修とノクスにだけ見える、それは――


 白いワンピースを着た空色の髪の透明感のある少女の姿だった。


 表情は乏しく、感情は読み取れない。


 ただ、時折微かに微笑むような気配があった。



「君は誰だ?」


 修が声をかけると、影はゆっくりと形を変え、薄く震える声で答えた。


「ひより……」


 ノクスは身を硬くし、警戒の目を輝かせる。


 愛菜を通じて、その声が届いた。


「にゃう(こいつ普通の幽霊じゃないにゃ)」


 結と愛菜にはその影は見えなかった。


 ただ、修が呟いた言葉だけがその場に残った。


「これから、何かが始まる気がする」



 ひよりの瞳の奥には、まだ誰にも知られていない秘密が宿っている。


 囁きの声は、世界のどこかでじわじわと広がっていた。


 物語は、深淵の入り口で静かに動き始めたのだった。


 次回予告


 第51話『白い少女の秘密』


 図書館で修とノクスだけが見た、ひよりの残滓。

謎めいた少女の気配は静かに動き出す。


 結と愛菜には見えないその存在。

しかし、彼女の秘密が少しずつ紐解かれていく。


 次回、物語はさらに深く――


 最後まで読んでいただきありがとうございます!

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