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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第三章:空白の書編

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第47話『旧校舎の扉が開く刻』

 旧校舎の廊下は、時間が止まったように静まり返っていた。


 薄暗い蛍光灯の下、壁に掲げられた「立入禁止」のプレートが無造作に傾いている。


 その下で、誰かの手によって開けられたと思しき鉄扉が、わずかに軋んで揺れていた。


「……やっぱ、開いてるよな。鍵、壊された形跡もねぇし」


 修が扉の前に立ち、そっと中を覗き込む。


 空気はよどんでいる。

 人が長く出入りしていなかった独特の埃と湿気の匂い。


 だが、それだけではない。


「……なんか、いる」


 愛菜が小さく呟き、リュックの中でノクスがピクリと動いた。


「にゃう(“気配”が残ってる。ここ、もう“始まってる”)」


 静寂の中、廊下の奥から――コン……コン……と、乾いた音が響いた。


「……ノック?」


 結が思わず立ち止まり、周りを見る。


 音は、確かに教室の一つからだ。

 誰もいないはずの旧校舎の、その奥で。


「やっぱ来たか」


 修は静かに歩を進めながら、ポケットから懐中電灯を取り出す。


 ノクスがそっと愛菜の肩に乗り、その瞳を細めた。


「にゃう(この音……“呼んでる”な、しゅー)」


「ノクスが言うには、呼んでるって」


「誰が、何の為に……俺達を?」


 呟く修の胸に、微かにひっかかるものがあった。


 この場所。どこかで見た事がある――そんな既視感。


 その時。


 廊下の突き当たり、ガラス窓の向こうに、誰かの影が立っていた。


 ぼんやりと浮かび上がる、白い服。だが、顔までは見えない。


「おい……お前は誰だ」


 修が問いかけた瞬間、影は一歩、こちらへ歩み出ようとして――


 ふっと、消えた。


 まるで最初から、そこには誰もいなかったかのように。


「……っ、今の……」


「見えなかったけど、いた。確かに、“誰か”が」


 愛菜が不安そうに囁いた。


 結も肩を強張らせながら、ふと気づく。


「ねぇ……さっきから、少しずつ、扉が開いてない?」


 旧校舎の教室。誰も触れていないはずの扉が、ほんのわずかに、次々と開いていく。


 音もなく、ゆっくりと。


 まるで、“中に入れ”と誘うように――。


 修はふっと息を呑み、目を細めた。


「これは……ただの怪奇現象じゃねぇな。俺達“狙われてる”」


「にゃう(“選ばれた”とも言えるな)」


「選ばれたってノクス言ってるよ」


 誰かが、俺達を待っている。


 まだ語られていない声が、名を呼び続けている――そんな気がした。

 次回予告


 第48話『名を呼ぶ影』 


  “あの時”置き去りにされた思いが、静かに満ちてゆく。 閉ざされた教室に踏み込んだ修達を迎えるのは、 名を呼ぶ声、そして――“君は誰?”という問いだった。


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