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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第三章:空白の書編

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第46話『ささやきの始まり』

 夜の大学構内は、相変わらずの静寂に包まれていた。


 部室の窓の外、中庭にはもう誰の姿もない。

 だが、あの貼り紙――『次は、お前達だ』という不穏な警告は、掲示板に張りついている。


 修は紙をじっと見つめたまま、しばらく動かなかった。

 その隣で、愛菜が小さく肩を震わせている。


「……しゅーくん。さっきの影、あれって……誰かが“見てた”んだよね?」


「ああ。見てた……っていうか、睨まれてた感じだな」


 修はメモをゆっくり剥がし、指先で軽くなぞった。

 紙の表面には、かすかに爪痕のようなものが走っている。


「この“気配”、消えてない……向こうは、まだ近くにいる」


 その瞬間――


 カタ……ン


 隣の教室から、何かが床に落ちる音がした。


 三人は息を止める。


「……誰か、いる?」


 結が小声で尋ねると、修は無言でドアに近づいた。

 ノクスが愛菜のリュックの中から顔を出し、ぴくりと耳を立てる。


「にゃう(気をつけろ。こいつは……動いてる)」


 修はゆっくりとドアを開けた。


 廊下の向こう、旧棟に続く通路に、かすかに“声”が響いた。


 ……あまぎ……しゅう……


 掠れた、けれど確かに“名前”を呼ぶ声。


「……今、名前……呼ばれたか?」


「誰だ……? 誰か、呼んだか?」


 修が低く呟く。


 風もないはずなのに、掲示板の紙がまたふわりとめくれ上がった。


 その奥に――もう一枚、“別のメモ”が貼られていた。


 今度は、整った筆跡で書かれている。


 『声の出処を探せ。彼女はまだ、待っている』


「……彼女?」


 愛菜が声を落とす。


 その瞬間、ノクスの目が鋭く光る。


「にゃう(……呼んでるのは、“生きていない誰か”だ)」


 修はメモを手に取った。


「分かったよ。“彼女”に話があるなら、会いに行くしかないな」


「でも……どこで?」


 結の問いに答えるように、また風が吹いた。

 廊下の突き当たり――旧校舎への鉄扉が、ぎい……っとゆっくり開いた。


 その奥から、もう一度、声が響く。


 ――雨城修。君に、聞いて欲しい事があるの。


 修は一歩、踏み出した。


「……よし。“呼び声”に答えてやるか」


 次回予告


 第47話『旧校舎の扉が開く刻』


 立入禁止の教室に、ふと灯る蛍光灯。

聞こえるのは、誰もいないはずの場所からの“ノック”。

――あの声は、まだ名を呼び続けている。


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