表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第三章:空白の書編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/185

第45話『動き出す影』

 夜の大学構内は、日中の喧騒とは打って変わって静まり返っていた。


 研究会の部室にも、やがて日が落ち、薄暗い照明のもとで修達は荷物の整理をしていた。


「ふぅ……今日は思ったより消耗したな。あの子の“笑顔”、なかなか効いたぜ」


 修が首をぐるりと回し、肩を鳴らす。


 愛菜はリュックにノクスをぽすっと収めながら、こくんと頷いた。


「しゅーくん、今日の“真語断ち”……ちゃんと響いてた。あの子、最後には……」


「微笑んでたね」


 結が言葉を継ぎ、ふんわりと微笑んだ。


「……やっぱり、雨城君の言葉って、誰かを救う力があるんだと思う」


「いや、俺はただ……見えたもんに、見えたまんま言ってるだけさ」


 修が照れくさそうに頭を掻いた、その時。


 バサリッ


 掲示板の前で、一枚の紙が落ちた音が響いた。


「……今、誰か……?」


 結が顔を上げると、掲示板に、奇妙な“手書きのメモ”が貼りつけられていた。


 まるで、さっきまでなかったかのように。


 紙は黄ばんだコピー用紙。そこには、たった一行――


 『次は、お前達だ』


 黒インクで雑に殴り書きされた文字。

 誰かの“怒り”のように、かすれ、揺れている。


「っ……何これ、やだ……!」


 愛菜が思わず修の背中に身を寄せる。


「誰かの、いたずらか……?」


 修が紙を手に取った瞬間――


 ヒュン……カサ……ッ


 窓の外を何かが通りすぎた。

 人影のような、獣のような、形のない“何か”。


 修が反射的に窓辺へ駆け寄り、外を見下ろす。


 だが、そこには誰もいない。


「今の……見えなかった。でも、気配は残ってる」


 愛菜が、真剣な声で呟いた。


「にゃう(……これは、“誰か”が動いてるな)」


 ノクスの瞳が細く鋭く光る。


 修は掲示板の紙をじっと見つめたあと、低く呟いた。


「“次は、お前達だ”……か。どうやら、こっちが仕掛けなくても、相手から来るらしいな」


「また、何かが始まりそうですね……」


 結の声には、わずかに緊張が混じっていた。


 部室の窓の外。

 誰もいないはずの中庭に、ぽつんと立つ影がある――


 それは、月を背にして、ただ静かにこちらを“見上げていた”。


 闇に溶け、やがて消えるその影の輪郭は、どこか“懐かしさ”すら感じさせるものだった。


 次回予告


 第46話『ささやきの始まり』


 誰もいないはずの夜の廊下で、微かな声が名を呼ぶ。

“コン……コン……”と、教室の扉を叩く音。

それは、確かに修に向けた“呼び声”だった。

――雨城修。聞こえる? ここに、いるの。


 最後まで読んでいただきありがとうございます!

評価(★★★★★)やブックマークで応援していただけると嬉しいです。

続きの執筆の原動力になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ