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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第二章:七不思議編

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第37話『封印と余波』

 ノクスの小さな身体が、猫の姿のまま、ゆっくりと愛菜のリュックへ戻っていった。


 けれど、その動きには、いつものような軽やかさがなかった。


 愛菜がそっと手を添える。


「ノクス……大丈夫?」


 ノクスの赤い瞳がちらりと光り、彼女を見上げる。


「にゃう……(おれは平気だ。だが……しゅー、これは……)」


 ノクスが俺を見た。

 その目の奥には、どこか深い焦燥と、まだ燃え残る何かが宿っていた。


 俺はスマホを握りしめたまま、封印アプリをそっと閉じる。


「……ただの怪異じゃなかった。あれは、七不思議を繋ぐ“仕掛け”だったんだ」


 声が自然と硬くなる。


「全部、“あいつ”が封印を解かせる為にばら撒いたんだ。七不思議の全部が、“あの化け物”に繋がってた……」


 結先輩が、俺の言葉に目を見開いた。


「つまり……七不思議を集める事で、“あの存在”が目覚めたのね……」


 頷く事としか出来なかった。

 無意識に、俺達は手を貸してしまったのだ――“封印を解く側”に。


「……どうするの、これから」


 愛菜の声が震えていた。

 ノクスを抱きしめたまま、不安を隠せずにいる。


 俺はゆっくりと立ち上がり、空を見上げる。夜が、ようやく明けかけていた。


「ばあちゃんに会いに行こう。……あの人なら、何か知ってるかもしれない」


 結先輩も頷いた。


「雨城君のお祖母様なら、きっと」


 こうして俺達は、朝焼けの中を急ぎ足で向かった。

 元祓い師であるばあちゃんの元へ。



 到着した古民家は、いつものようにひっそりとしていた。

 けれど玄関を開けた瞬間、空気が違っていた。


 ばあちゃんはもう立っていた。

 まるで、俺達が来るのを知っていたかのように。


「……根源が目覚めたか」


 雨城あまぎ 悠月ゆづきそれがばあちゃんの名前だ。


 静かな声だった。

 けれど、その背中には、圧倒的な霊力の気配が漂っていた。


「七つ、封じてあった“鍵”を……解いてしまったのじゃな」


 俺はうつむきながら、答えた。


「……俺の力じゃ、止められなかった。……だから、教えてほしい。もっと強くなる為に。俺が封じ直す為に」


 ばあちゃんの口元に、わずかな笑みが浮かんだ。


「ようやく言ったな。その言葉を、ずっと待っていた」


 そして背を向け、奥の座敷へ歩き出す。


「ついてこい。今から“鍛え直し”だ。霊力の扱いも、術式も。お前に出来る事は、まだ山ほどある」


 ノクスが、俺の足元に並ぶように座った。

 赤い瞳は、静かに燃えていた。


「にゃう……(次は、絶対に逃がさねぇ)」


 俺は大きく息を吸って、ばあちゃんの背中を追った。


 こうして、戦いの幕は――改めて、静かに上がった。


 【次回予告】


 第38話『霊力の鍛錬』


 ばあちゃんの元で始まる、修の本格修行。

迫り来る“根源の余波”に備え、ノクスもまた静かに力を蓄える。

ただのオカルトオタクでは終われない――それが、“選ばれた者”の宿命。


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