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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第二章:七不思議編

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第36話『ノクスの咆哮』

2025/09/05 文章追加

 黒い炎が、教室の天井を舐めるように広がっていく。


 Nom-Creva――“喰らうもの”。


 その存在が放つ瘴気は、空気を腐らせ、床に歪みを生じさせていた。


 結先輩が隣でよろめく。


「……ッ、立ってるだけで……意識が削られる……!」


 


「愛菜、下がれ!」


 俺は彼女の手を引いて後ろへ下がると、自分の身体を前へと押し出す。


「ノクス! 時間を稼げ!」


 


 ノクスは無言で、黒い影の前へと跳び出した。


 足元の空間を蹴り、宙に浮かぶ。


「にゃう!(ここは……おれが喰らう!!)」


 


 その身体から、真っ黒な火のようなオーラが立ち上がる。


 まるで、影そのものが燃えているようだった。


 


 Nom-Crevaの巨大な腕が振り上がり、ノクスを狙って振り下ろされる――


 ドガァッ!!


 


 ノクスは空中で身をひるがえし、鋭い爪で腕を裂く。


 その瞬間、異様な悲鳴が空間を満たした。


 


「グ、アアアア……ッ」


 


 “音”ではない。“呻き”でもない。


 ただ、人の神経を直接締めつけるような“ノイズ”。


 


 耳を塞いでも意味はなかった。思考そのものが軋んでいく。


「くっ……!」


 俺はアプリを立ち上げる。次の手段を――封印術式の起動。


 でも、震える手が操作を阻む。頭が、回らない。


 その時だった。


 


 ノクスがNom-Crevaの“核”に飛びかかり、その身に飲み込むように捕らえた。


 


 喰らった直後、ノクスの姿が一瞬だけ人の影を帯びた。


 四肢がわずかに伸び、背中にかすかな翅のような影が揺れた。


 


 だがすぐにふわりと縮み、いつもの小さな猫の姿に戻った。


 


「ノ、ノクス……?」


 愛菜が、思わずその名前を呟いた。


 その声には、いつもと違うものが宿っていた。


 


 恐怖――ではなく、畏れ。


 


 ノクスが地を蹴った。


 黒炎を纏って、Nom-Crevaに突進する。


 


 火花が散り、闇と闇がぶつかり合うような衝撃が広がった。


 


 修は見た。


 ノクスの爪が、Nom-Crevaの“顔”らしき部位に食い込んでいくのを。


 


「にゃうぅぅぅぅうっ!!」


 


 その瞬間、黒炎が爆発する。


 光が逆流し、闇が火花のように飛び散る。


 


 Nom-Crevaの影が、ぐにゃりと揺らぎ――一瞬、その動きを止めた。


 


「っ……今だ!!」


 


 俺は最後の一撃を込めて、アプリを起動させる。


 ばあちゃんの技術に、自分の意志を乗せて。


 


 ーー封印術式、解放。


 


 ノクスの咆哮と、俺の術が、Nom-Crevaを押し返した。


 


 だが――


 


 Nom-Crevaは消えてなどいない。


 その断末魔は、消える気配もなく、むしろ内側へと吸い込まれていくようだった。


 ノクスが走る。

 全力でNom-Crevaの核に食らいついた。


 


「ノ、ノクス……!?」


 


 愛菜が駆け寄る。


 ノクスは、修の足元にふらりと落ちる。


 その身体は、小さく震えていた。


 


「にゃ……う……(食った……けど……全部は……無理……)」


 


 その言葉の最後は、かすれていた。


 


 Nom-Crevaの“核”――その悪意の根源だけを、ノクスは喰らう事で自分の中に封じた。


 代償として――何かが、変わってしまった。

 瞳が緑色から深紅の、血のような赤色になる。



 俺の封印術では残った残滓くらいしか、封印出来なかった……

 奴の一部は逃げたようだ……


 俺は自分の力不足を実感した……


 こんな時ばあちゃんなら、どう言うかな……

【次回予告】


 第37話『封印と余波』


 八つ目の不思議は、終わってなどいなかった。

Nom-Crevaの“核”をその身に封じたノクス。

代償を抱えたまま、修達は、ばあちゃんのもとを訪れる。


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