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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第二章:七不思議編

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第32話『七不思議⑦:花子さんの集会場(前編)』

 夜の旧校舎は、昼間とはまるで別物だった。


 錆びついた鉄の扉がギシリと軋み、薄暗い廊下の先に、使われなくなった女子トイレがひっそりと佇んでいる。

 俺達は息を潜めて、その入り口に近づいた。


 結先輩はいつものメモ帳をしっかりと握りしめ、愛菜はリュックを背負い、ノクスは彼女の肩の上で耳をぴくりと動かしている。


 空気が異様に冷たく、吐いた息が白く染まる。


「ここが、七つ目……」


 結先輩が目の前の扉を見つめ、そう呟いた。


「花子さんの“集会場”って……名前だけでもう、ボク帰りたい……」


「俺も。でも、あの地図の✕がある場所、そしてその中心の空白、全部揃った時に“何か”が起きるかもよ?やっぱ見たいじゃん?何が起きるかさ!」


「しゅーくんどんだけー!」


 その時、ノクスがごく小さく唸った。


「にゃう(始まってる)」


 愛菜が息を呑み、姿勢を正す。


「ノクスが、“もう始まってる”って……」


 俺達は顔を見合わせた。

 そして、誰も何も言わず、扉を開いた。


 ――ギィィィ。


 蝶番が悲鳴のような音を立て、内側の闇がゆっくりと広がっていく。


 懐中電灯の明かりが、洗面台と割れた鏡を照らした。

 タイル張りの床には、濡れた足跡が点々と続いている。


「……この足跡、洗面台から向かってる」


 愛菜の声が、かすかに揺れていた。


 十以上の個室が並ぶ異様な空間。

 どれも古びていて、いくつかの扉は中途半端に開いている。

 照らしても、中は真っ暗だ。


 コン……コン……


 何かを叩くような音が、遠くから響いた。


 そのリズムは一定で、乾いていて、どこか機械的だった。


 コン……コン……


 「……あの音、こっちに来てない?」


 結先輩の声が低くなる。


 その瞬間、奥の個室の一つが――ガタンッ!と揺れた。


 俺達全員が動きを止める。


 扉が、ゆっくりと開く。


 そこから、白い脚がにゅっと伸び、床を這うように何かが出てきた。


 スカート。

 長い黒髪。制服の上着。


 女の子――だ。


 でも、顔は見えない。

 髪が張りついたまま、動かない。


 「花子さん……?」


 愛菜が絞り出すように呟いた。


 その瞬間だった。


 他の個室の扉が、次々に同時に開いた。


 バンッ、バンッ、バンッ――


 それぞれから、同じ姿の“彼女”が出てくる。

 スカート、髪、制服――全部、同じ。


 「……なんで、何人も……」


 結先輩の手が震えていた。


 花子さん達は何も言わない。

 ただ、ゆっくりとこちらに顔を向ける。


 そして――いっせいに、笑った。


 その笑みは、人間の笑顔とは違った。

 口角だけが、引きつったように吊り上がっている。


 「私達の代わり、来た」


 声が、同時に響いた。

 重なっていない。

 まるで一人の声を、何体もの口が発しているような、狂った合唱。


 「代わり……?」


 愛菜が一歩、下がる。


 「“なって”。ここに、なって」

 「だれでも、いいの。出たいから」

 「あなたたちが来たから、もう、いいの」

 「さあ、“かわって”。」


 視界の端で、ノクスが小さく身を縮めた。


 俺は無意識に、後ろを振り返る。


 ――扉が、閉まっていた。


 しかも、外側から鍵がかかっている。


「……閉じ込められた……?」


 その言葉が出た瞬間、花子さん達が、ずるずると床を這いながら距離を詰めてくる。


 「逃げられないよ」

 「ここで、ずっと、一緒にいて」

 「みんなで、いれば、こわくない」

 「私たちも、最初は、呼ばれただけだったの」


 声の意味を、ようやく理解する。


 ここにいる“花子さん達”は――

 かつて、誰かが“呼んだ”者達だった。


 そしてその後、誰かが代わりになってしまった。


 だから、増えた。


 繰り返される“なりかわり”。


 この場所は、“怪談”の発信源なんかじゃない。


 引き継ぎの場だ。


 「やだ……いやだ……」


 愛菜が首を振る。


 「ボク、なりたくない……」


 その時、花子さんの一人が、こちらの名前を呼んだ。


 「……あ・ま・ぎ、く・ん」


 耳元で囁くように。


 俺の喉が、音を立てて鳴った。


 次回予告


 第33話『七不思議⑦:花子さんの集会場(中編)』


 “代わり”とは何か。“名前を呼ばれた”意味とは。

花子さん達が見ている“出口”の先にあるものとは――

選ばれるのは、誰だ。


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